見出し画像

「匿名」で書かないのは「インターネット初期」から現在に至る悪循環から距離を置くため


【民間インターネットサービスのおさらい】

ブロードバンドが普及した2000年一桁時代あたりから(そもそもブロードバンド自体が死語化しているが・・・)、ネット人口は爆発的に構成比率を増加させたように感じている。
それ以前の1990年代あたりは、電話回線を使い「ダイヤルアップ接続のモデム」を使った通信形態が主流だったから、大した情報量をネットに流すことも困難だったし、いいところでその技術を使った「パソコン通信」や、Windows95時代に少々流行った「2ch」(2チャンネル)などが一般向けインターネットサービスの初期段階と云って差支えないと思う。さらに戻れば懐かしい「NIFTY-Serve」あたりの話だろう。

さて、今のインターネット環境を見ると、「速い・安い・旨い(いや、困らない程度の品質)」三拍子そろったサービスが一般向けに浸透している。通信スピードを考えるとその時代の何倍だろうか?(速くとも14400kbpsだった、現在は10Gbps?桁が違う)
※Wikiを引用してみた。https://ja.wikipedia.org/wiki/ニフティサーブ

そんなに遅かったか?と思うくらいだが、サービスに接続するには固定電話の仕組みを利用していたので、通信には最寄りの「アクセスポイント」までの電話料金が基本的には従量制でかかっていた。
コストがかかるので、時間帯によって電話回線料金が安くなる夕方以降の時間帯によく使った記憶もある。とにかく諸々高くつくうえ、GUIがほぼない。。。。テキストベースのやり取りで、やり取りしているコミュニティの中では、発言や表現にはある程度の規律が働いていたし、良い時代ではあった。しかし、この頃から前提であったのは「匿名」だ。「バンドルネーム」で誰か分からない人々が共通の趣味などの情報交換をテキストベースで行うのだ。非効率極まりないのは事実だったね。実際リアルなコミュニティがあったら経済的にもコンテンツの充実度でも良いものは得られた。なぜそれでも、パソコン通信みたいなものを利用したか?
できる事も限られていたし、その分知恵を絞らないと「なんだ?この電話代は?」と、家族内で「おっ、使い過ぎたか?」というような抑制も効いた。(笑)

【なぜ、非効率でもパソコン通信を使ったか?】

僕の場合「純粋に最先端の楽しい仕組みを使ってみたかった」というシンプルな欲求からに他ならない。その別世界への接続プロセスには「わくわく感」があった。

【通信環境の劇的変化】

さて、転換点となったのは2000年代ひと桁の「ADSL」で孫正義率いる「YahooBBサービス」が普及すると、通信サービスは通信速度が飛躍的に向上して、Webサーフィン(これも死語か?)に不自由がなくなった、一機にインターネットサービスは、一般大衆を虜にしたし、従来の電話回線をそのまま活用するADSLの仕組みはシームレスでブロードバンド普及の決定打となった。当時電話回線は、固定電話のメタル回線を使うために「数万円」の加入権を入手しないと利用できなかったのだ。今では信じられないくらい「電話回線」というのは高価で維持費もかかったのだ。しかしそれが日本では一般家庭の基礎的なインフラだったし、それ以外の通話・通信環境はなかったと云って差支えない。※僕が学生の頃(1992-96)の固定電話加入権は記憶を辿れば新しく番号を発行するのに「7万円~8万円」の権利加入が必要だったと記憶している。新たに一人暮らしを始める学生にはあまりに高価だった。

通信サービスは、この辺りから加速度的にネット人口を拡大し、さらにコンテンツもテキストベースからメディアコンテンツへのシフトが少しずつ始まっていた頃だろう。
しかし、通信サービスはこの頃のADSLに徹底的に投資をした孫正義氏のベンチャー精神を体現するような側面もあり、YahooBBが先陣を切り、圧倒的なスピードでブロードバンド環境が普及した時に同業と呼べるような企業はあまり見受けられなかったし、孫正義氏にマーケットを支配されるのを回避するような動きで後発組が慌てて参入を決めていくという構図だったのは、やはりその頃のビジネスのスピード感として孫正義氏が一級のイノベーターだったことを象徴付ける決定的な事案となったと、今思えば理解できる。そもそも通信関連といえば「NTT」と「第二電電」(現:KDDI)くらいしかなかった。そもそもが公共のインフラなので国の管轄から移譲された安定志向のビジネスで、率先して新しいサービスを展開するタイプの企業ではない。
つまり、孫正義氏がこのマーケットに切り込んだのは相当の破壊力だったのだ。

【劇的な変化に対応できなかった「匿名」前提主義】

通信環境が変わるという事は、そのインフラに「どのようなコンテンツ」を載せるか、活用するか?という事になるのだが、こちらは未成熟でビジネス判断やそのアイデアについて、革新的なものはあまり見受けられなかったように記憶している。それだけ今までのビジネススピードと次元が違う動きをしたのが孫正義氏だったがコンテンツ産業は追随できないくらいの迫力だったのだ。したがって、インフラとコンテンツ開発の乖離は大きかったように感じられた。

もとい、パソコン通信時代から続いていた「バンドルネーム」が一般的である事も、そのまま引き継がれた。そこに誰も何も言えなかったのは仕方ないかもしれない。ただ、ここが今のネット社会の「ネガティブ要因」を拡大し続けた分水嶺だったのかもしれない。過ぎてしまったタイミングは取り戻せないのだから。こと「匿名のまま自由に発言できる(書込みができる)仕組み」を残したまま、コミュニケーションを展開するという文化が拡大した結果、ある種のモラルハザードが加速度的に発生し続けていると云ってもおかしくないと、僕は感じている。


【バーチャルとリアルの挟間で・・・ニュースサイト(メディア)の劣化】

さて、時代を一気に2024年に連れてこよう。ポータルサイトがほぼ確定的に集約されてくるのはビジネスである以上は日常的な構造だからある種の健全性を保っている。
細かい話ではあるけれど、「スマートニュース」は「Yahooニュース」と何が違うかと云えば、掲載されている記事は同じである。違うのはコメント欄があるか?ないか?程度だ。わざわざアプリをスマホにインストールする必要もないくらい同じだ。また、掲載されているニュースソースは明示されているが、なぜそのニュースをセレクトしているか?基準が見えない。さらにネット記事に「コメント欄」があるが、そこにかかれている事は読めば読むほど、気分が悪くなるような誹謗中傷や、したり顔で物言うコメントが大多数だ。専門家のコメントも紹介されているが、一流の論客というよりはちょっとした有名人レベルの内容だ。参考レベルにならないのだ。

「匿名」であれば、自由に云いたい事が書ける。これがインターネットが一般化した際に取りこぼした大規模な社会のモラルハザードを拡大し続けている。

しかし、残念な事ではあるが、人間は都合の良い仕組みに賭け続ける種族だ。こと、儒教文化圏では本音と建て前の乖離は激しい。リアルでは規律性が高い反面、抑え込まれた感情がそういう場面で垂れ流しになり続けている。その悪循環はより時代を構成するひとびとの素直さをその悪用する事において増殖させ続ける。これは今後も止まることはない。そして、進んだ時計の針は戻せない。

ある種の、現代の如何ともしがたい状況を通信インフラが下支えしている。それはハキダメとしての役目である。
もちろん、通信インフラが強烈なスピード感で発展した時点で、通信や人権、教育を管轄する各省庁と政治が何かしらの対応をすれば少々状況は変わったかもしれない。
しかし政治に優秀な人材はいない。台湾のオードリー・タンのような理想的な専門性が高い大臣などは日本では生まれない。理由は書くまでもない。


【オードリー・タン】台湾のデジタル相と云ってよい人物
https://ja.wikipedia.org/wiki/唐鳳

さて、僕も50歳を過ぎて数か月が経った。正直に言ってしまおう。

「匿名を前提としたあらゆるデジタル、バーチャルマーケットよさらば!」

あらゆる悪循環との距離感を再定義する必要がある。これは「公共の概念」が失われつつある中で「自律的・自立的」にふるまう事案を再確認するという意味だ。
世相に乗って「何も考えない事が巨悪を為す」ということに一切加担したくないという事でもある。※以前もこれに触れたのでリンクした。


さて、シリアスに一時間ほど書いてしまったが、世間はゴールデンウィークだ。皆様もよい休暇をお過ごしください。では。※冒頭の写真は特に関係がありません、笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?