問題行動で特別指導になった生徒とまっすぐな心と言葉で伝えようって思った先生の物語①
「喜多嶋先生と話したいです。」
問題行動で特別指導になったとある生徒がそう言ってくれたと聞いて、ボクは彼のいる別室へ向かいました。
彼の担任として孤軍奮闘していた同僚も一緒に連れて行ったのは、ボクがどんな風に彼と話をして、彼がどんな反応をするのかを見てもらいたいと思ったからです。
こういう場面で、生徒に対してどんな在り方で、どんなやり方で、どんな言葉を使って接するかを実際に見て学ぶ機会なんてほとんどありません。
ボクの接し方・関わり方が正解だなんてえらそうなことを言うつもりはありませんが、いち先輩教員として、こんな接し方や関わり方もあるんだってことを自分の目と耳で感じてほしかったからです。
別室に入ると、彼は何とも言えない表情を見せてくれました。
申し訳なさそうな、でもボクが来たことを喜んでくれているような・・・
そんな彼の表情を見て、ボクは直感的に「あっ、すぐに話を聞けるかも」って思いました。
その直感を信じて、すぐに『今、どんな気持ちなの?」と、彼の考えていることではなく「感情」にアプローチするしつもんから始めました。
色々な支援が必要な生徒だということは担任からも聞いていましたが、思っていた印象とは全く違い、余計な配慮なんてほとんど必要ないなと感じました。
それくらい、自分の「感情」をまっすぐまっすぐ伝えてくれようとしてくれたからです。
それでもうまく言えず「うーん、難しいな・・・」って何度も言葉に詰まっていました。
そのたびにボクは「そうなんだよ、それでいいんだよ。人の気持ちなんて、簡単に言い切れることばっかりじゃないんだから。」と伝えました。
それは彼に対する特別な「配慮」ではありません、ボクの「本心」でした。
彼は自分の感情をきちんと自分の言葉で伝えてくれました。
その中でまず話してくれたのは「人と違うことに対するコンプレックス」でした。
「僕は考え方が他の人と違ってるみたいで、僕が何か言うと周りから『何言ってるの?』みたいな反応をされることが多くて・・・だから僕は自分の考えてることとか気持ちを言うのが怖いんです。」
その怖さは、友だちだけじゃなく学校の先生や自分の親に対しても持っているということも話してくれました。
自他共に認める「他の先生とは違う」ボクは、そんな彼にこう伝えました。
「怖いよね、人と違うって。でもそれって、ボクたち大人が『みんなと一緒なのはいいこと』っていう考え方を押しつけてきたせいなのかもしれない。」
そして「人は誰一人として同じ人はいない。みんな違ってて当たり前なのに『同じ』を気にしすぎてしまって、言いたいことも言えずに、したいことも我慢しないといけないって、ホントはすごくおかしいって思うんだけどな。」と伝えました。
自分と人は違う。
違うからこそ、自分の考えや気持ちはきちんと伝えないと伝わらない。
もちろん、タイミングとか状況とか伝え方が大切だし、だからこそ難しいんだけど、それはこれから1つずつ勉強していけばいい。
少なくとも今ボクに話してくれた君の考えや気持ちは、おかしいことなんか何もないし、ちゃんとボクに伝わってるよ・・・と伝えました。
ボクを見る彼のまっすぐ瞳が、ボクの心のずっと奥の方まで見透かしているようにも感じました。
だからボクもまっすぐな心と言葉で伝えようって改めて思い、話を続けました。
次回に続く。
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