見出し画像

職員室デジタライゼーション〜だったら差し込んじゃえよ④〜

「これは、一体?」
 明子は、驚きを隠せずに数男に尋ねた。
「差し込み印刷ですよ。」
数男は、さらりと答えた。
「差し込み印刷?」
「そう。差し込み印刷です。Wordで作成した枠にExcelの名簿を差し込んだんですよ。すると、児童名などが変更された状態で一人分ずつ印刷できるようになるんです。」

 明子は、全く意味がわからなかったが、プリンターからはあっという間に8学級分の確認票が印刷されてしまった。
「はい、どうぞ〜。」
 と言いながら数男は、確認票を各担任に配って回った。担任達からも驚嘆の声が上がっていた。

「これ、どうやるんですか?」
 この春、大学を卒業したばかり、採用されたばかりで5年生担任の佐藤美咲が数男に尋ねた。表計算小学校に新採用の職員は彼女一人。もちろん新採用指導教員という立場の職員はいるが、全職員でサポートしていこうという雰囲気がある。同じ高学年部を担当していることから、PC関係について数男に何かと質問することが多い。

「これは、Wordの文章から、差し込み印刷を設定するんだ。やってみるね。」
 と言いながら、数男は実際の操作をしてみせた。明子は、美咲と一緒にPC画面を覗き込んだ。教職について10年以上経つ。当然、Wordを使って教材や学級通信を作成してきた。しかし、数男が使った機能は、明子がこれまで触ったこともない箇所を操作しているようだ。

「こんなことができるなんて…。めちゃくちゃ便利ですね。」
 と美咲は驚きの声をあげた。
「これ、他のことにも使えそう…。」
 明子は、差し込み印刷という機能の汎用性の高さに気づいた。

「でしょ。具体的な操作手順については、KitaChannelって人の動画があるから見てみるといいですよ。」
 と数男は、二人に声をかけた。

 この出来事がこれから起こる一大改革の狼煙であったことを、この時はまだ誰も知らなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?