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NO.11『変化』

大きな事件の後、少し心穏やかに私自身の変化を感じました。そんな自分が嬉しくて。
ちょっと聞いて~

へっぽこ娘

二つの大きな事件の後は、しばらく落ち着いた日々が続いた。もちろん小さなことは毎日のようにあったが、意外と母がすぐに落ち着いてくれたので、私が困って大きな悩みのタネになるようなことは起こらなかった。

その間、相変わらず仕事に追われていた私には、新たなショートステイ先を見つけて見学するような余裕はなかったので、仕事でどうしても母を預けなければならない時は、恐る恐る今までの施設でのショートステイに何度か行ってもらった。ところがそこでも今までのような大きな混乱がなく過ごしてくれていたので、内心ホッとしていた。そんな母の様子からその施設で過ごすことにだいぶ慣れてきたのかもしれないと思った。今から新たな施設を探して契約をしても、母がそこに慣れるまでにはしばらく時間がかかるだろうし、通ってみてそこが合わないということになれば、またひと苦労が待っていることが想像できる。その間にも母を預けなければ仕事が成り立たない状況が出てくることを考えると、少しでも慣れているところの方が母にとっても安心なのではないかと私は思い始めていた。

施設のスタッフの方も母が混乱しないような工夫を色々と考えて下さって、ショートステイから帰ってくると私には相変わらず文句を並べるのだが、以前のような強い帰宅願望や、食事を摂らない、入浴の拒否、ベッドで寝ないなどのことも少しずつなくなってきていた。何より「明日からお泊りだからね」と言っても、母が嫌がらないことに私は大いに救われていた。そのくらい認知症が進んできたのかもしれないという複雑な気持ちも湧いてくるが、とりあえず、現状のままでしばらくは新たな施設は探さない方向でいくことにし、姉弟にもその旨を報告した。

ただやはり、ショートステイから帰ってきた日は少し精神的に不安定な様子が見られるので、母なりに頑張って行ってくれたんだなと思い、帰ってきた時に「おばあちゃんがショートステイで頑張ってお泊りしてくれたから、安心して仕事ができたよ。ありがとうね」と言うようにしている。というより、そんな言葉が自然と出てくるようになった。それを聞いた母はどことなく嬉しそうだ。もちろん、何とか心を落ち着かせて穏やかになってほしいという願いから出ている言葉には違いないが、今まではまったく素直に言えなかった言葉が自然に出せるようになった自分に少しは成長したのかなと感じている。

聞いてくれてありがとう。

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