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君の名前の横顔¦河野裕

僕が一番好きな作家である河野裕さんの小説。
タイトルから「うわ〜〜〜良すぎるな〜〜〜」と思っていたのだが、河野裕さんの小説のタイトルはマジで毎回重要な鍵になっているので、語彙力が低迷する感情は抑え、きちんと落とし込むことに努めた。
名前というものに対し「側面」を意識させるこのタイトル、最高だなマジで。
名前に面があると捉えるなら名前が持つ意味を多角的に捉えた際の「横顔」なのか、特定の人名ではなく名前そのものが持つ価値観の視点を変えた際の「横顔」なのか、装丁を眺めながら考えを凝らし、「うーん、わっかんねえ〜」と結局早く読みたい気持ちに負けて本を開いてしまった。
そもそも僕は河野裕さんに対して「哲学」を扱うことに長けていて、かつ常人では見えもしないような独自の世界観をこっそり展開し、気が付いた時には河野裕さんの世界観の虜にさせている作家だと思っている。何らかの新しい価値観や視点をプレゼントされることが多いのだ。
この小説はいわば家族小説になる。
主となる家庭は複雑だが、大学生の楓、その義母である愛、小学生の弟の冬明の三人を中心に、物語は壮大さを深めて進んでいく。
想像上の怪物であるジャバウォックを恐れて不登校のまだ幼い冬明、身の回りのものをジャバウォックが盗んでいくのだと言う。
楓は優しい兄として、息子として、冬明や義母である愛にも寄り添うのだが、ジャバウォックの真実へ近付く度に、現実が少しずつ壮大に変化していく。
河野裕さんの独特な世界観、見聞きした覚えがないような状況、環境であるにも関わらず、昔経験しているような、確かにそこにあるような感覚にしてくれる文章。
引き込まれるとは正にこのこと。
あなたの周りの大事なものも、いつの間にかジャバウォックに盗まれていて、それに気がついていないのかもしれない。

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