後悔しない研究室選びのために

はじめに

現在、修士一年生として生命科学の研究生活を行っています。そこで痛感するのは、研究室選びを真面目にやって良かったということです。
特に、研究者としてやっていこうと少しでも考えている人には、将来を加味した特有の選び方が存在します。自分は幸運にも良い情報に巡り会えたため、幸せな研究生活を過ごしています。一方で、PI(研究室主催者)との反りが合わず、病んでしまう人も一定数います。
そこで、この記事では、自分が特に重要だと思う研究室の選び方を共有します。

前提

この記事で紹介する方法は、研究対象が定っていない、もしくは変更できるタイプの人を対象としています。つまり、癌治療を発展させるぞ!とか決まっている人は、自ずと行く研究室も決まりますので、助力できないでしょう。応援しています。
今回の主眼は、「ストレスない研究生活を送る」です。すなわち、その人にあった研究室の選び方を共有します。研究室を調べる際には、まず自分で情報を集めて絞り込み、次に実際に研究室を訪問して話を聞く、のが良いでしょう。以下では詳しい方法を説明します。

情報集め編

候補のリストアップ

何よりも最初にすべきことは、候補をたくさん考えることです。学部生の場合はその学部の研究室ですが、大学院受験を考えている人は、外部の研究室も視野に入れましょう。この際、研究内容は一度考慮せず、可能性がある研究室はリストアップしましょう。

情報を集める

次に、これらの研究室について情報を集めます。ここにたくさんのノウハウがありますが、自分が何を重要視するかを明確にした上で、選抜基準を設けましょう。以下、特に重要だと思う情報を挙げます。

  • 研究費

研究費は特に重要な情報の一つです。研究室は、PIがお金を獲得し、それを元に皆で研究成果を挙げ、それを元にPIがさらにお金を獲得する。というふうに回っています。つまり、研究費をたくさん獲得している研究室は、研究成果をたくさん挙げている、もしくは挙げることが期待されていることになります。さらに、研究費があれば、やりたい実験もやらせてくれる可能性が高いです。特に、RNA-seq等の最新のビッグデータ解析等を行いたい場合は、お金がかかりますので、研究費を重要視しましょう。
研究費の調べ方ですが、基本はこの日本の研究.comの情報を参照しましょう。

https://research-er.jp

このサイト内でPIの名前を検索し、現在どの程度のお金を獲得しているのか、調査します。基準は様々ありますが、基盤研究(B)をとっているPIは研究費獲得が長けていると考えられます。

  • 研究室のメンバー

サイトがある研究室に限られますが、メンバー構成を見ることができます。どのようなメンバーがいるかは、重要な情報を含んでいます
例えば、
・研究員や技術員がたくさんいる => 研究費をたくさん持っており、研究環境が良さそう。
・博士課程がたくさんいる => 志が高い人が多く、ラボの教育環境が良さそう。
・人数が多い => 人気そうだが、PIから直接指導を受けられる機会は少なそう。
・人数が少ない => 出来立てか、人気がないか。博打だが、当たりの場合は指導が充実しそう。
等です。必ずチェックし、自分が求める環境かどうか考えてみましょう。

  • 直近で公開した論文

研究室からどの程度論文が出ているかは、研究生活の充実度を示す指標です。1年い1報以上出ていると、ちゃんと研究しているな、という印象を受けます。
また、どの雑誌に投稿しているか、も重要な指標です。例えば、NatureやScienceに出しているが、他の雑誌には出しておらず、頻度も低い場合、一発をデカくする研究室であるとわかります。この研究室に入ると、運が良ければ論文を出せるが、運が悪いと共著者として埋もれてしまう危険性もあるわけです。
自分がどのような成果を出したいのか、念頭に置いておきましょう。なお、論文の良し悪しの見分け方については、別の記事を出す予定です。しばしお待ちを。

  • その他の情報

ブログのようなページがサイトに含まれていることがあります。これを見ることで、自分が理想とする研究生活を送れるかどうか、参考にできます。例えば、ラボ旅行があるのか、飲み会の頻度はどうか、PIとの距離感はどうか、海外の教授を招聘したセミナーがあるのか、等です。研究に集中したい場合は、ラボアクティビティは少ない方が良いかもしれませんね。

訪問するラボを選別する

以上の情報から、真に行きたい研究室を絞り込みます。集めた情報は、良い悪いではなく、研究室の特徴です。自分がどのような研究生活を過ごしたいのか、明確にした上で、自分に合った研究室を選びます。成果を出したいなら、研究費が多く、論文もたくさん出しているところが良いでしょう。この時点でMAXでも5個くらいに絞ります。
そして、次にラボに訪問します。しかし、その前にその研究室で重要そうな論文には目を通しておきましょう。時間があれば、たくさん読んだ方がいいです。が、時間がなく、どれが重要かもわからない場合は、責任著者がPIの論文を適当に一つ読んでみます。読むことが大切で、理解はできなくても良いです。なぜなら、訪問したら著者に質問できるからです。PIに好印象を持たれるためにも、訪問を希望するメールの中に、論文を読んで興味を持った内容や、自分がそれを基に行いたい研究を盛り込みましょう。

ラボ訪問編

ラボに訪問した時に見るべきは、その雰囲気と生活環境です。また、訪問中は自分も評価されているのだと考えましょう。自分で調査できることはした上で、実際に行かないとわからないことを確かめに行く、という意識を持ちます。

PIと話す

メールで訪問の日時を決めたら、ラボに行きます。そこでPIと話すことになりますが、基本的にはPIから研究内容を説明してもらい、最後に自分から質問をすることになります。この時、自分から質問する時は、サイトに載っていない情報を聞きましょう。例えば、ラボのコアタイムはあるのか、博士課程に進む際にどのような援助をしてくれるのか、PIと話せる時間は取れるのか、等です。求められる学生像を聞くのも良いでしょう。

特に、研究者を目指す場合、自分を引っ張っていってくれそうかどうか、注目します。例えば、年齢が高すぎると、将来的に研究者として雇用してくれることはないかも知れません。しかし、さまざまな研究者を紹介してくれる可能性はあります。なので、自分は研究者志望だと表明して、援助してくれそうか、みてみましょう。

学生と話す

PIと話したら、研究室の学生と話します。ここが一番重要です。実際の研究生活を送っている学生の意見が最も信頼に足るからです。自身が送りたい研究生活と似ているかどうか、たくさん聞きましょう。複数人に聞くのが良いです。そして、
ラボの雰囲気が自分に合っているのか、考えましょう。どんなに良いラボでも、その人に合っていなければ、ストレスになります。

最後に

以上の段階を経て、研究室を選びます。しかし、それでも決められないことはあるでしょう。その時に自分が勧めたいのは、「雰囲気を何よりも重要視する」ことです。研究対象への興味は、得てして研究そのものから生まれるものです。つまり、やっていれば楽しくなっていくことが多いので、むしろ変化しない雰囲気に重きを置くべきだと考えます。無論、ある程度の分野知識がある場合は、今後はやりそうな分野の研究室に行くのも良いです。しかし、ストレスなく生活するには、やはり雰囲気が重要だと思います。

今回紹介した方法は、あくまで自分が有効だと思ったことなので、各自自分なりにチューンアップしてください。研究室選びが成功することを祈っています。



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