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真夜中にケイゾク



あくびは出るけれど、なかなか眠れなかったので、カラダに従って寝るという行為をあきらめた。
静まりかえった夜の底は、もう午前一時をすぎているし、先ほど小説を読み終わったので、映画かドラマを観ようと思って。
レコーダーの中を彷徨っていたら、なかなか決められなかくて、それで、目をつむってみる。
リモコンの↓ボタンを押しながら、ひとりで安定のドラムロールを口にする。
「ドゥルルルルルルル。(結構リアル)」
そして「ジャンッ」と言いながら、リモコンの決定ボタンを押すと、『ケイゾク』だった。




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「ケイゾクいいやん!真山さんかっこいい!」と思いながら、再生されているそれを眺める。
はじめは眺めているのに、だんだんと物語に吸収されて、あっという間にその独特な世界観に引き込まれる。


「ケイゾク」は中谷美紀さん主演のTBSドラマで、迷宮入りした事件を担当する警視庁捜査一課弐係(架空の部署)に配属された、東大卒のキャリア警察官僚・柴田純(中谷美紀さん)と、元公安の叩き上げ刑事・真山徹(渡部篤郎さん)が難事件を解決していくミステリードラマでけっこう見応えがあって。
コミカルな要素もあるけど、物語の最後はすごく暗くて、人間臭いんです。



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そしてなりより、ケイゾクは、柴田と真山さんのやりとりが面白い。

たとえば、

三億円事件の資料を見ながら、「あのぉ、犯人わかっちゃったんですけど。」という柴田に、「柴田ぁ〜!」と怒る真山さんとか、

何日もお風呂に入っていない柴田のつむじを嗅いで、「クッセェ!」っていう真山さんとか、

正面きって、「真山さんは私のタイプじゃないです。」という柴田とか。

「頭の悪い…女だねぇ。お前には生きてて欲しいんだよ。」と、かっこいい背中を見せながら話す真山さんとか。

言い出したら、キリがないんですけど、その世界観は、程よいブラックに浸されていて、見応えがある。



そして、ふと、このドラマに出会った、十代を思い出す。



世界は、正義がすべてだと思っていた十代のころ、私はこの作品に出会って酔狂した。
ベロンベロンに酔い、千鳥足状態でドラマを観た。



その頃までは、自分がみている世界は、唯一無二で、正しいと思っていた。
しかし、いつしか、私の脳みそ、ひとつだけでみた世界なんて知れていると底を知った。
人生というタイムライン上には、正義が悪にひらりと反転することもある。
そんな軽薄な世の中で、無知という名の、純粋だけをすくって生きることはできないと、十五歳の私は知っていた。
そして、カラダもココロも劣化していくことに、震え上がっていた。



そんなときに、真山さんと柴田のコミカルな発言とか、行動とか、「あ、大人でも楽しんだな。」と思えたのに、最後はすんごくビターで、終わって。
やっぱり、子どもと大人の境目なんてないんだなと、思った。


突然、「クッセェ!」っていう真山さんの声に、脳みその底をさまよっていた現在の私は、やっと息をした。



そして、夜のうごかくなった空気をおもいきり吸い込むと、お腹の底に、暗闇が溜まって、膨れあがった。






中谷美紀/クロニック・ラヴ



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