小数点以下の感情(0.999…)戊辰
ぼくはひび割れながらきみを見つけた。
微笑うように蔑むように見守る瞳。
指で地平線をぼかして作るグラデーション。
散る枯れる還るを繰り返すにんげん。
獣の本能は傷付くことを恐れない。
恋を終えた雄猫がニャーとやさしく鳴く。
溺れる金魚のように呼吸を忘れた。
哀しみも喜びも体ひとつで発生している。
割り箸をパチンと割るたび心も割れている。
森の奥底には生命の循環が眠っている。
あいは言葉だけのシグナル。
花は刈り取られた瞬間に死ぬんだよ。
もくもくときみの吐息が漂う。
視線の先にある靄が雨に溶けて土へ還った。
夏の空気を吸い込んで何かの結晶を生み出す。
春に置き去りにされた蝶がゆらゆらと舞う。
赤い提灯が灯り赤い視線が混ざり合う。
凍っていくように愛して。
ひかりが満ちて僕の肌の上で踊っているよ。
伸びる肢体に纏う汗。
孤独を他人で埋めようとするな。
風が吹いて記憶に積もる埃を払う。
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