さっき買ったバナナがもう無い。

近くのスーパーで売られていたので「あぁ、野菜だけじゃなく果物も食べたほうが良いな」と買ったのだが、帰って来て早々に１つ食べ、２つ食べ、３つ４つと食べてもうない。カップ焼きそばを食べて、コンビニで買ったサラダを食べて、パックのご飯をレンジでチンした後、パウチのカレーを温める。

ふと、焼きそばパンを食べている時思った。

ずっと食べてるなぁ。

もともと、食事の時は一気にたくさん食べる傾向にある。体形のわりに食べるので、よく驚かれた。特にうどんはたくさん食べる。４玉くらいは平気で食べるので、スーパーで売っている４玉セットなどは大体１食分くらいだ。

自宅で恋人とゴロゴロしていたとき、おなかが減ったのでカレーうどんを食べた。昨日の夜ごはんだったカレーと、冷凍庫にストックされているうどんしか使わないので私でも食べられる状態にできる。

１回ゆでては食べ、２回食べ、３回、４回食べたときに

「……食べるねぇ」

と、恋人に言われたけれど、冷凍庫にはまだ１０玉ほどうどんが残っていた。

「……君の家、どうなってるの」

「私にはこれが普通なんすよ」

私の実家はこういう、ある程度応用の効く主食がストックされている。うどんに始まって、冷凍おにぎりや、冷凍肉、冷凍食品もあるし、ウイダーインゼリーも冷凍されている。冷蔵庫にもパンや水は４人分ある。それから、たまごが３０個。

１週間は買い物に出かけなくても良さそうな量の品々が収まっている。

「たまご、多くない？」

「そう？　でも、夜中にゆでたまごにして食べるとすぐ無くなるよ」

「……いくつくらい食べるの」

「４つとか？」

「１回で？」

「１回で」

「そりゃ３０個買うわけだわ」

こうした出来事があったので、食事は気をつけなくてはいけないなと一人暮らしをするようになってから気をつけていた。しっかり、バランスよく食べる。普段の食事に足りないものを足していった。カップ焼きそばを基準にして、足りない野菜や肉や牛乳や豆腐を食べる。そんなことを繰り返すうちに「あぁ、あれも食べなきゃ」と追加に追加を重ねていた。

結果、思い出したように食べて、飲んでを繰り返している。

カップ焼きそばを食べた後に、焼きそばパンを食べるという暴挙に出てから、今度はスープ春雨に入れるお湯を沸かした。

１日の食事だけ見ると、去年の今と比べて量の倍は食べているだろうか。以前は以前で、朝食を食べず昼食を食べて、夜また食べるという1日2食の生活を送っていた。１日動く分としては明らかに少ない量だとは思っていたが、今の私は逆に食べすぎているような気がしてならない。２日分くらいかなと見立てて買った食材を１日で消費している。

おなかはいっぱいなのに、どこか満足していない。満腹だけど足りない気がする。だから、足りないものを加えようとしている。足しても足しても、足りない感覚。

ジュー、と肉を焼いて食べた。何だかホッとする。

あぁ、おいしい。満足。これ、好きだ。

そんな気持ちが湧き上がった。やっぱり私は、お肉が好きなようだ。カップ焼きそばも好きだし、豆腐も好き。野菜はそのものよりもシーザードレッシングが好きだ。ドレッシングを食べるために野菜を買っている気さえする。

だんだん、気持ちが落ち着いてきた。

食べたなぁ。

とっくに満腹ではあったけれど、それに加えて満足が私を満たしていた。生きるのに必要な食事の量と、満足するのに必要な食事の量は違うらしい。去年の私は、少しの食事で満足していたけれど、今の私は何かを埋めるみたいにたくさん食べている。それを相殺するように、少し運動をしてみては「やめよう、しんどい」といって横になった。

どうあれ、満足状態になった今。台所のあたりで積み重なる気配を感じる家事の山を小さいうちに片づけておくことにした。

お皿を洗って、カップ焼きそばの容器やバナナの皮をゴミ袋に放り込むと、いつの間にかゴミ袋が埋まっている。ゴミの量を見たとき「確かに恋人もおののくわけだ」と思った。