物事は、バランスが大事だ。

エッセイにたくさんスキが付いてすごくハッピーになると、幸せの許容量を超えてくるので一旦すごくしょうもないエッセイを書いておきたくなる。自分の中での心のハードルを下げておかないと、その次に書くものの高さを狙いすぎるのでやっぱりここは一旦すごくしょうもないなー、と思ってしまうような文章が恋しくなる。

新生活が始まって、まず大切なのは睡眠と食事である。私の場合引っ越しが年末だったこともあり、仕事もスケジュールも全くの空なので睡眠の方はバッチリだ。しかし、問題は食事である。私は常日頃から大変不摂生な食事をしている自覚がある。

カップ焼きそばも、コンビニおにぎりも大好きだ。でも、ある日の昼食をテーブルに並べたとき「これ……学校の授業で『やってはいけない食事』ってタイトルで出されそうだな」と悟って以降は少し反省してカップ焼きそばにはおまけでサラダも付けて、豆腐も食べるようになった。

しかし、しばらく同じものが続いても飽きにくい性質の私は食事というものにほとんど関心がない。例えば毎日がお餅でも別にそんなに問題ないので、一度お餅をたくさん買うと本当にそれしか食べない日々が続いてしまう。

朝、餅。

昼、餅。

夜、餅。

ひたすら焼いて醤油をつけてのりで巻き、食べながら将棋をする生活も5日目くらいで、いい加減にこれはまずいのではないかと思い始めた。栄養が偏っているどころではない。

大事なのは、バランスである。そこで、コンビニでレンジでチンするタイプのご飯を買ってきた。なにせまだ我が家には冷蔵庫がない。年末年始の時期、私の手が届く範囲の家電を扱っているお店はどこもお休みである。保存ができないので、常温保存が可能なパックに入ったご飯をとりあえず入手して、すぐさまレンジでチンしてみると、うまい具合にほかほかご飯が出来た。ところが、このままでは食べているのは炭水化物だけである。結局バランスが悪いという問題は一向に解決されていない。

野菜も食べないといけない、あとは、肉もしくは魚、それからタンパク質。アミノ酸も摂らないと気分が落ちる。

私は再びコンビニに出向き、洗わないで食べられると書かれたミックスサラダを一袋と、ベーコンを買った。アミノ酸はお味噌汁で摂るとして、タンパク質は明日お豆腐でも食べよう、と思いながら家に帰る。

バサと袋を開けて、そのまま中にドレッシングを軽く注いで箸で混ぜ、ひとしきり食べきってからベーコンを食べた。そして、インスタント味噌汁にお湯を注いで飲み、お餅も焼いた。

ふぅ、完璧。一人暮らしにしては完璧すぎる食生活だ。

「ちゃんと食べてる？」

と聞いてくる恋人に、ここまでの一連の流れを話したところ「限界の生活だ……」とため息をつかれてしまった。その声は、もうどうしようもない人間に向ける半分くらい諦めた声だった。

もうこれを私は何度も聞いている。そして、こういうときは大体恋人の方が正しい。

ああ、私これ多分すごい間違ってるんだろうな。と、この時思った。ただ、どこが間違っているのかはよくわからなかった。

恋人の話をまとめると、餅は良いとしてもサラダを袋で食べるのは良くないらしく、またベーコンを焼かずにかじるのもダメらしい。せめてハムにした方がいいと言われたので、明日はハムにしようと思うけれど、恋人の複雑そうな唸り声を聞く限りどうにも、ハムならいいかというと、そういう問題ではないようだ。サラダチキンなら良いとでも言うのだろうか。

恋人からレシピがいくつか送られてきた。

お餅の調理法も書かれている。なるほど、冷蔵庫が来たら、こういう料理にも挑戦しよう。

何事もバランスが大事だ。でも、袋のままサラダを食べるのは皿を洗わなくて良いのが便利なので、もうしばらく続けようと思った。