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誤算は切るまでわからない

今日の晩御飯はキャベツと豚肉の炒め物である。

一人暮らしを始めてはや一年、クックドゥの力を借りながらも野菜の入った食事を作れるようになった。野菜とタンパク質をとり、米を炊いている。とりあえず生きていくための食事を自力で作って食べることができるようになったのがこの一年一番の収穫だ。

しかし、まだ野菜の分量などがよくわからない。たとえば今日は、4分の1にカットしてあるキャベツを買った。一食分のつもりで買ったのだが、切ってみて初めて分かる。

「多いな」

スーパーでは一番小さいサイズでも、いざ切ってみるとまな板にキャベツが敷き詰められてしまった。切っている途中から何となく嫌な予感はしていたのだが、多い。一人で食べる量ではない。

この辺りで、スマホで写真を撮って、友達と「キャベツ切りすぎたwwwめっちゃ多いwww」などとやりたかったのだが、切る前のキャベツの写真がない。手に収まるくらいの「まぁ、このくらいならいけるんじゃないの?」と思える写真がないと、私はただ、量の加減が分からずまな板の上にキャベツを敷き詰めて途方に暮れるアホである。あらかじめ小さいほうのキャベツを見せて相手から「まぁ、これくらいならいけるんじゃない?」というリアクションをもらわないと、量を誤ったまな板の惨状を見せて「見ろ! こんなに多いじゃないか!」「お前も見誤ったな!」と笑ってやることができない。私だけ一方的に間抜けである。私は写真を撮るのをやめた。

とはいえ、馬鹿にされようがされまいが、目の前のキャベツ地獄を何とかしなくてはいけない。とりあえずフライパンに油をしいて炒めた。火にかければ野菜は小さくなると聞いていたので、半分くらいの量になるのではないかと思ったが、そんなことはなかった。ジュウジュウと音を立ててしんなりしてきたものの、キャベツは若干小さくなったくらいだ。確かに、火にかけた時に比べれば、若干小さくはなっている。しかし2割減くらいだ。

2割。少なくはないが、多くもない。少しはマシになったのだが、このあとお肉を焼いて一緒に混ぜなくてはいけない。果たして、直径が30センチもないこのフライパンで受け止めきれるのだろうか。

レシピに書いてある通り、いったん皿に移す。そして、今度はお肉をフライパンに乗せた。

「……少ない?」

お肉は、入っているエネルギーのわりに少なく感じる。今日買ったお肉は128グラム。バラ肉がなかったのでロース肉を買って来た。お肉を焼くのも慣れたものだ。

しかし、ロース肉は焼くと半分くらいの量になった。……ように感じる。そんなはずはないのだが、薄いお肉は焼くとシュンと小さくなってしまう。しかし、秘めたるカロリーは全然小さくなっていない。

料理は順調に進んでいる。去年の私からすればカンストするくらいのレベルアップだ。キャベツをいったんお皿によけて、お肉を焼く、そんな発想は去年の私にはなかった。

レベルの限界を超えた私は一度お皿にあけていたキャベツをフライパンに戻す。お皿を慎重に傾けたが、結局こぼれた。レベルとテンションがちょっと下がった。

しかし、2割減ったキャベツと小さくなったお肉はちょうどいい量だったらしい。フライパンは満タンになり、もはや軽くかき混ぜるだけでこぼれる。ちょうどいい量というか、表面張力みたいなものでカバーできるギリギリだったようだ。

こういう時、料理上手な人はうまく分けるとかするのだろう。でも、私はよくわからないので、いったんはこぼれていないことだしとりあえず豚キャベツの素をドバっと入れて再びジュウジュウ焼いた。あと、卵も溶いて流し込んだ。

……こぼれない! セーフ!

かき混ぜることはできないので、じっと待つ。卵に火が通ったのを見計らってお皿に移す。ちょっと傾けるだけでこぼれる量なので、一回お皿で蓋をするようにしてから、ひっくり返すタイプのやつで盛ることにした。

完成。と、まぁ、去年の今頃はフライパンも持っていなかった私がここまで成長したわけである。相変わらず洗い物はめんどくさいが、とにかく作ることはできるようになった。

炊けたご飯と一緒に食べる。おいしい。そして気が付くと、さっきまで山盛りになっていたキャベツと豚肉の炒め物が消えている。まな板の上に敷き詰められたキャベツを見た時は後悔していたが、料理してしまうと案外食べきれた。

しかし、これはクックドゥの箱には二人分と書いてある。やはり一人分にキャベツ四分の一玉は多い。

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