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繕う暮らし <金継ぎ編>

金継ぎとは割れた器や花器などを漆を使って修復する伝統的な手法。
物を大切にする心はもちろんですが、割れや欠けの跡を傷としてネガティブに捉えるのではなく、今までになかった新しい景色として愛でる。
そんな日本人特有の美学、感性があります。
お気に入りの器が割れてしまってドン底に悲しい気持ちから、
金継ぎによって器が割れる前より素敵なものになる感動的な喜びがあります。
九回裏からの逆転満塁ホームランくらいのインパクト。

漆を用いた継ぎは縄文時代からある修復方法です。
本漆を使った金継ぎは、手間や時間はかかりますがコツさえわかれば誰でも簡単にできます。
その間じっくり器と向き合って、器を手に入れたときのこと、使っていた時のこと、あるいは割れた時のことに思いを馳せながら直している時間も
漆とともに器に溶け込んで、より一層愛しいものとなる気がします。
ひとつ直すと金継ぎの虜になっていました。

金継ぎを始めたのは約10年前

お気に入りの器に限って割れるという皮肉。
作家さんの器などは一点ものだったり、二度と手に入らなかったりします。
悔やんでも悔やみきれません。
ですが、金継ぎすればまた使えるようになるのです。
とりあえず、割れた器をいつか直そうと金継ぎキットを購入しましたが、
イメージ湧かなすぎ、ハードルが高すぎてずいぶん放置。
結局、金継ぎ教室に通うことにしました。
通い始めて10年、知り合いからお直しをお願いされたりもしますが、
なぜか繕う器が無くならないという不思議。
粗相が多い我が家のこと、直していくのはゆっくりで
割れor欠けていくのもまあまあで。直し待ちがどんどん貯まるはめに。
繕うことができても器は丁寧に扱った方がよいのは間違いないと思われます。

お酒も一層美味しくかんじられるかも。


金継ぎする楽しみ


金継ぎをやっていると、なにかアクシデントで器が割れてしまったときにも心の余裕がハンパないです。
今では器がわれてもそれほどヘコまず
「お、この割れ方、芸術的でいいね」と心の中でガッツポーズできます。

継いだ器。新たな景色として愛でる。

金継ぎは割れた器を全くの元どおり直すことはできませんが、
逆に融通がきくところが魅力です。
破片がみつからなくたって気にしなくていいんです。
漆でつくってしまえばいいいのです。
欠損した部分をつくったり、全く別の形に変えることも可能です。
割れてなくなった部分を片口のように作りかえたりアレンジする面白みがあります。
全く別の器の一部だった陶片をいくつか集めて、一つの器にすることもできます。これは呼継ぎといって、いつかは挑戦したい憧れのスタイル。


骨董やさんでヒビや欠けのある器を探す楽しみが増えます。
陶片などお安く譲ってもらえたりします。
ここ愛知県は古くから窯業が盛んだったので、そのへんに数百年前の陶片が落ちているというところも結構あります。

少しの欠けならわりと早くなおせます。

とってあるお皿や器、どんなふうに直そうかなあと割れた欠片を眺めながら妄想を膨らませるのも楽しいひととき。

金継ぎ教室をはじめました。

器をなおしていくにつれ、人から金継ぎを頼まれたり、
お友だちからやり方を教えてほしいというご要望が増えてきました。
金継ぎキットを買ったはいいけれど、全然一人でできる気がしない、という以前の私と全く同じ方もちらほら。
里山の自然を感じながらゆったりのんびり器と向き合う贅沢な時間。
金継ぎで気軽に器を繕い、暮らしを楽しむ方が増えればいいなあと思っています。

金継ぎ教室のホームページ

2023年4月14日 文:みもと

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