見出し画像

ウマメシ放浪記 知られざる三崎マグロの名店「かね廣」(神奈川県三浦市)

三崎といえばマグロ。では、マグロをどこで食うか? と問われれば答えに窮する。なぜなら三崎にはマグロを扱う店がたくさんあるから。

筆者は齢30にしてようやく初めて三崎を訪れたのだが、運良くその答えを見つけたかもしれない。それが「かね廣」である。

Google評価、驚異の「4.7」

マグロでも食いに行くかと三崎へ行った筆者。目当ての「くろば亭」で満足な食事を終えて散歩していたところ、遠くに神社を見つけて近付いていった。

すると、参道に趣のある店を発見。風情のある提灯とのれん。軒先に貼ってあるメニューを見ると、マグロの漬け丼並盛が1100円。これはかなり安い。

海南神社へと向かう参道
良いイキフンである

もっと貼り紙をちゃんと読むと、どうやら数量限定らしい。加えて、マグロ仲買人がやっている店らしい。たたずまいと値段から筆者の「良店センサー」がビンビンに反応している。Googleで口コミを見ると、平均スコアが驚異の4.7。こんな数値、見たことがない。だいたい、いくら良くても4.3とかだ。ギニュー特戦隊もびっくりだろう。

しかし今しがた、くろば亭でそこそこ食べたばかり。とはいえ良店センサーは反応している。世間の評価も高い。もうこれは「ほぼ勝ち確」だ。それに腹もまだ5~6分といったところ。さらに財布の中を見ると、筆者と妻で漬け丼の大盛りと並盛を食べた場合の金額、2400円がちょうど、まさにちょうど入っている。天恵といわざるを得ない。さて、どうする?

……果たして筆者は、取りあえず海南神社に行くことにした。なぜか。分からない。いきなりがっつかず、ちょっと自分にかっこつけたのかもしれない。全く無意味な行動だ。

いったん神社に来たものの、頭の中は店のことでいっぱい。極めて不謹慎な参拝者である。異様な量の雛人形に圧倒されつつ、足早に退散してかね廣へととんぼ返りした。

店内へ

かね廣に戻り、まだ丼が残っていることを祈りながら引き戸を開いて聞いてみる。良かった、まだいけるようだ。5分ほど待って、食べ終えた人と入れ替わりで入店。下足を脱いで上がるスタイルで、全て座敷席。カウンターが5席ほどで、筆者は2人がけの座卓に案内された。筆者らが並び始めた後ろに、3人グループも来て並んだ。すでにくろば亭で存分にマグロを楽しんでいる身なので、もしわれわれが入って売り切れになったら申し訳ない。そう思ってソワソワしたが無事に後ろの3人も入れてよかった。

まだ新しいのか、非常に清潔かつ風情のある店内。愛想よくチャキチャキした感じの女将さんと、無骨な感じの大将。メニューは漬け丼の並が1100円、大盛りが1200円、特盛(マグロの量がかなり増える)が1650円とか。それと別にスキ身丼が1300円。妻がスキ身丼を食べるというので、財布の残金2400円から逆算して筆者は並盛に甘んじた。これまたわれわれの後に入ったグループの一人がスキ身丼を頼んだのだが、売り切れではなくこちらにもしっかり提供されてよかった。

おそらく2人で来店して「並盛&スキ身丼」の注文をしたときのみの特別オプションだろうが、女将さんが「あいもりにしますか?」と聞いてくださった。二つ返事でお願いする。

先に食事をしていたのは2人のみでもう食べ終わりらしかったが、提供までは結構時間を要した。しかし居心地がよい店内でテレビも置いてあるし、どんな漬け丼が出てくるか期待を馳せていると全く長く感じない。むしろいい調味料として機能している。

着丼

さて、待ちに待った着丼の瞬間を迎えた。まずは味噌汁とお新香。味噌汁の香りでもう、安心感に包まれる。これで丼がイマイチなわけがない。

わが注文せしメニュー、堂々着丼す。はい、もう旨い。赤身と中トロらしき部位の漬け、さらに見てくれでくちどけや味わいが十二分に想像できるスキ身。ええやんええやん!

奥がボケててすみません

スキ身を一口。通常のネギトロというのはつなぎに油脂が入っていたりするのでもたれる。このスキ身は全く違う。とろける食感を残しつつ、マグロの形を失っていない。飯泥棒にもほどがある。断言する。今まで食ったネギトロ系物質の中で一番旨い。

切り身の漬けも、言うまでもない。やや漬けの味付けは濃いが、だからこそ旨い。どうもこの店は土日のみの営業なようで、おそらく平日は仲買人として商売されているのだろう。そこで仕入れたマグロを漬けて丼にする。だからこそ安い金額になっている、のだと思う。ちなみにマグロの下には刻みのり、ご飯は酢飯ではなかったと思う。

本来ならもっと、感動を詳細に伝えたいが言葉少ななのは、あえなく一瞬で完食したから。並盛は不詳だが、大盛りの米量は300グラムほどらしい。このアタマがあれば、筆者なら米3合は堅い。

走れメロス事件、勃発す

あーおいしかった。やっぱり筆者のセンサーは間違えていなかった。感動もひとしおながら多分店の外に入店を待っている人がいるので出ようとしたところ、事件が起こった。

入店前に財布を確認して天恵と思った2400円の残金、実は2350円しかなかったのだ。1000円札が2枚、100円玉が4枚と入念に確認したはずが、100円玉と思っていた1枚が50円だったのだ。

女将さんに平身低頭謝罪して財布を預け、妻ヌンティウスを人質にして筆者は駐車場へ走った。とにかく走った。サンダル履きの男が鬼の形相で三崎を駆けていく。しかし車の中にある妻の財布に、もしびた一文なければ一巻の終わりだ。そんな心配もさておき走りに走った。無事、妻の財布に金はあった。気を抜くことなく復路も走った。野良猫の写真を撮ろうと近付いている観光客がいたので、そこだけは歩いた。

店に戻って無事、2400円をきっちり払った。女将だけでなく無骨に見えた大将もさすがに笑っていた。

みさきまぐろきっぷは(たぶん)対象外

さて長くなったが、とかくかね廣は素晴らしい店であった。三崎に来る観光客の多くは、京急が販売している鉄道やバスの乗車券、さらに三崎での食事券がセットになった「みさきまぐろきっぷ」を利用していると思うが、かね廣は(たぶん)対象外。店が並ぶ一角ではなく参道に位置することもあり、喧騒からは距離を置いている。全く素晴らしい。

数ある三崎のマグロ店のうち、トップクラスの店だと太鼓判を押す。支払方法はおそらく現金のみ、駐車場もないと思う。

余談:かね廣近辺で寄ったスポット

海南神社

この神社への参道に、かね廣がある。3月2日に行ったので雛人形がたくさんあった。

3204 bread&gelato

海辺にあるベーカリー兼ジェラート店。ジェラートを食べた。普通にうまい。

3月2日のラインアップ

城ヶ島

産直品を売っている「うらり」から連絡船が出ている。車の場合は450円(24年4月だかから500円に値上げ)で島内いくつかの駐車場を共通利用できる駐車券を買える。馬の背洞門や公園、ウミウの繫殖地、北原白秋の石碑などがある。

城ヶ島公園の風景
馬の背洞門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?