見出し画像

2024/2 バンコク旅行記 ep11(Final):オカエリナサト

あらすじ

筆者に何が起ったか

バックナンバー(直近3回分)

本編

ついに食い倒れる

おやつに食後のコーヒーも終えて、漫画を読みながら良い気になっている筆者を異変が襲ったのは日本時間20時前ごろだったであろうか。2023年にアニメで見ておもしろかった『天国大魔境』を読んでいたところ、一滴垂らしたかのような腹部の違和感がなかなか消えない。うーん。

なおも読み進めていると、違和感が徐々に存在感を強めていく。明確な腹痛、というわけではない。奥底の奥底に痛みはあるが、全体として「違和感」程度の感触。乗り物酔いか? それにしてはどんどんと痛みへと変化して強まってきたので、意を決してトイレへ。すると、痛みが徐々に鋭くなっていく。が、用を足したらマシになったので、要するにただの“陣痛”だったのねと納得して席へ。

にしても痛かった。とりあえずあたためよう。毛布を頭からかぶったり、集中的に腹部の上にかぶせたりしていたら、またも痛みが襲ってくる。日本から持ってきた胃腸薬を飲む。即効性ではないので痛い。痛みとともに吐き気も出てきた。これはやばい。

トイレへ立って通路を歩き始めるとともに、立ち眩みのような貧血のような意識が遠のく感触が襲う。なんとかトイレまで行って座り込む。トイレが比較的清潔なのが救いだ。これは絶対に戻してしまった方が楽になる。そう思ってもなかなか吐くことができない。ツキえもん(※)からの排出物もない。
(※筆者注:肛門の意。「肛門」と書くとあまりにも直接過ぎるため、「肛」の字を「月」と「エ」に分解してドラえもんのようにポップにしてみた。しかし読者諸氏にこのボケが通じるのか不安なので解説したのでボカした意味がない。注釈として使った※の字も肛門に見えてきた)

デジタル走馬灯

とてもつらい。うめくことしかできない。波のように押し寄せたり引いたりする吐き気と腹痛。Wi-Fiに接続していないので、トイレ内でやることがない。筆者は気付くとスマホのカメラロールで、これまでのさまざまな思い出的な写真を見返していた。デジタル走馬灯である。よく飛行機が墜落するシーンとかでペンダントの中の家族写真を見返す人の気持ちがよく分かった。

というか、このままトイレから出られなかったらどうなるの? もしかして筆者のウンコ待ちで東京上空を旋回し続けるのか? その場合、どんなツラして出てけばいいの? 時刻は着陸予定の2時間弱前。それに無事に着陸したとて、空港から自宅まで1時間超に耐えられるのか? 終電間際なので電車の途中下車は許されない。

考えれば考えるほど、自分を追い込んで腹痛が増し、トイレから出られない。都合20~30分くらいは貴重な機内トイレを占領してしまった。最終的に、薬が効いたのか若干マシになったので席に戻った。

オカエリナサト

しばらくして、空港から自宅へ帰れる自信を取り戻すほどには回復した。だいたいにして結構きわどい着陸時刻なので、もしこのまま占領を続けていたら多くの人の帰りの足に影響していただろう。よかったよかった。

飛行機は時刻通りに羽田に到着。着陸を前に高度を下げた窓から見える街明かりは、何度味わっても良いものだ。宇宙の彼方から帰って「オカエリナサト」を目にしたノリコとお姉さまも、こんな気持ちだったのだろう。

大団円を迎えそうなものだが、そうは問屋がおろさなかった。預け荷物のスーツケースがいつまでたっても出て来やしない。預け荷物を排出するコンベアを、ともにバンコクから帰還してきた一同がかたずをのんで見守る。どれだけ空腹で回転寿司に行っても、ここまでコンベアをにらむことはないだろう。

バンコク到着時に預け荷物待ちで一緒だった、ゴルフ軍団もいた。みんなでスーツケースが出てくるたびに一喜一憂した。羽田に着いたのが悠久の昔に思えるほどに、あっという間に時間が過ぎた。

あのとき、予定時刻通りに到着したと喜んでいたのは何だったのだろう。この世一切のことは空である。悟りに片足突っ込んで、最寄り駅への終電時刻を完全に振り切ったころにノコノコとスーツケースが出てきた。もうそこに感情はなかった。

とはいえ第二最寄り駅への終電は、まだあります。心の中のジェネリック小保方晴子さんに勇気づけられて帰路についた。3連休最終日の深夜だけあって、幸いにして電車は空いていた。腹痛も我慢できる程度だった。

第二最寄り駅からはバス・タクシーでないと遠すぎて帰れない。到着してすぐにタクシーを見つけて乗り込む。日本語が通じる。何という素晴らしい国なのか、ここは。やけに低姿勢なドライバーによる、深夜割増はあったとはいえ適正価格の運転によって、無事に帰宅した。

おわりに

バンコクの地に降り立つまでに3回だか4回、都合1万文字超を要した本連載、やっと擱筆する。3月11日夕刻時点で、連載全体のPVは3500ほど。Webメディアで記者をやっていた経験があるので、個人がPVを稼ぐのは本当に大変なんだなあと思う。だらっだら書いている本連載を少しでも読んでくだすった皆さまにはあらためて感謝申し上げます。

これまで国を出たことが2回しかない自分だが、タイ・バンコクは居心地が結構よかった。もちろん日本と比較すれば清潔感は劣る。街中にいる鳩はなぜか白基調が多く、柄もイカれた感じだし。日本ではまず見ないような柄の鳩が多く、環境の過酷さを感じさせる。それでもなんというか、居心地が良かったのだ。例えるなら友人の家、みたいな感じだろうか。少々汚くても許せる。それを有り余る、謎の安心感がある。でもちょっとは気を遣う。そんな場所。

何よりエネルギーがある。マリオカートか、というくらい多い信号待ちのバイクたち。躊躇せずにクラクションを鳴らすドライバーたち。その辺のマルイに入っているテナントとは比較にならないくらい、目が合った瞬間に客引きしてくる店員たち。もうかなり都会なのに、高速道路で通り抜ける郊外の街には建造中の大きなビルが立ち並ぶ。

あと、書いてあらためて思う。食いすぎ。最後の最後、帰りの飛行機で時限爆弾が爆発したのは奇跡的だ。いろいろ数えると、羽田出発前の銀座ライオンから帰りの機内食まで、19回の食事をとっている。日本時間で2月8日の20時スタート、帰国は同12日22時とすると、98時間で丸4日ほど。1日3食ならば12食、その1.5倍となる。ん? なら意外と多くもないのか?

とはいえ常人の消化器官だったらビュッフェ→フードコート→ホテルラウンジ→ナイトマーケットとこなしたバンコク2日目、あるいは1日2ビュッフェの偉業を果たした3日目当たりで破裂していたかもしれない。

まだこれからも、旅行は死ぬまでに何回も行くだろうが、また旅行記を書くかどうか。それは別問題である。記憶補強のために書くにこしたことはないだろうが、やっぱりこれは大変だ。まあ気が向いたら、書くかもしれない。

それでは、失礼いたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?