家具のお客さん その3

その2の続編です。

名古屋にいた時の話で、ある夕暮れ時にご来店したお客さんのお話し。
その2を読んだ方は、もうおおよそどうなるかお分かりだと思います。
ですがもうしばらくお付き合い下さい。


さて近くの電器屋さんにご婦人のお客さんを探しに行ったわたし。
もう午後8時も過ぎて日は暮れて、お店の大半も閉店している商店街。
その一角にある電器屋さんに、そのお客さんはいました。

閉まっているシャッターをバンバン叩くお客さん。
その後ろにはスーツ姿の男性と女性が並んでいます。
「開けてくださーい!」とお客さん。

「おたく、どちらさん?」
スーツ姿の男性がわたしに聞きます。
「そこの家具屋です」
とわたし。
「あ〜そう。僕はクルマ屋だけど、あの方いきなりうちに来て
〇〇〇〇(高級車)指差してこれ下さい、って。
で、手付けを払いたいからちょっと待ってくれって言われてさ。。」
察するに後ろの女性も同じ状況のよう。

こりゃダメか。。。(いや、冷静に考えたら途中で気づくよな)


今季の目標達成が一瞬のうちに泡と消えたか。。。
まさに夢一夜。。。
一夜もないかw


なんてうなだれていたら電器屋の店内が明るくなりました。
そしてシャッターが開いて、お客さんと共に私たちも店に入りました。

なんとその電器屋さんはすでに商品を用意していたのです。
たくさんの電化製品をワゴンに乗せて、販売員はにこやかに
「お待ちしていました。」

そしてお客さんは手にした財布でレジの方へ。


ん?まさか。。。


「あれ?お金がない。ごめんなさい、あとでお金払いにいくわ」


まあそうでしょうねぇ。。。


その時点で私たちはお客さんに閉店時間のことを告げ、それぞれの店に帰りました。

わたし「ダメでした。すいませんでした。」
上司「ん、じゃあ帰るか。」

上司はどうやら途中でわかっていたみたいでした。

1日の半分をあのご婦人に振り回されて、だけど不思議と腹は立ちませんでした。それよりもあのお客さん、ご家族いるのかな、、とか、電器屋さんはあの家電を仕入れたのかな、、なんてぼんやりして帰ったことが記憶に残っています。あ、それととてつもなくお腹が減ったのも今思い出しました。


そして次の日。
わたしあてに一本の電話がありました。

それは昨日のご婦人のご家族の方からでした。女性の声でした。
昨日のお詫びとともに、申し訳なかったので選んだ中からいくつかお求めになるとのこと。
ですがそれは流石にと思い、丁重にお断りしました。
ご家族のお話では、数か月に一度このようなことを繰り返してしまうと話してくれました。
この方は他のお店の人たちにもお詫びをされたかと思うと、やるせない気持ちになったことを覚えています。

息子さんの分の家具も購入したことを、そのご家族の方はおっしゃいませんでした。わたしもそのことは話しませんでした。


これでこの話しは終わりです。
もうかなり昔のことなので、細かいところはやや創作が入っています。
いまnoteにこの話しを書いてもいいのかな、とも感じますがわたしの長い家具販売人生の中でも強烈な事例だったので、記憶の整理として残しておきます。
ですが後日、自分が読み返して不快に感じるかもしれません。削除するかもしれませんが、その時はご容赦ください。




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