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修了式

修了式では専任講師として一言喋らなければいけないのですが、言うべきことが思い浮かばず毎年悩みます。講師としての一年で一番苦しむところです。しかし、最後の締めくくりだからいい加減にすることはできません。

去年、自分が何を言ったのか全然覚えていないので、今年は準備もかねてここに書いておこうと思います。(現時点ではもう修了式は終わっているので、喋った後です)

まずはみなさん一年間お疲れさまでした。

さて、僕にはずっと心に残っていて忘れられない先生の一言があります。

僕はカリフォルニアのパサディナにあるArtCneter College of Desingというアートスクールを卒業しました。そこでは、卒業近くの学期になるとインディペンデント・スタディという、好きな先生に付いて個人的に学ぶ授業がありました。

授業の日、先生からコメントをもらうために自分が描いた絵を持って行ったのですが、そのときに参考にしたアーティストの画集も一緒に見てもらったのです。そのときに先生が言いました。

「この画家の絵はハードエッジの絵だから」

はぁ?と思われるかもしれません。これが今でもずっと心に残っている先生の一言です。

ロマンチックでも何でもありません。ニッチで技術的な話で恐縮です。

先生はハードエッジだからどうとか、それについての詳しい説明は何もしませんでしたが、僕はこのときに今まで意識していなかったこと、絵にはハードエッジの絵とソフトエッジの絵があるということを、その後いろいろな絵を見て理解しました。

アートセンターのその時代の空気はソフトエッジで、僕もそういう絵を描いていたので、先生は参考にするにはその画家はちょっと違うと言いたかったのだと思います。

こういうシンプルな一言から自分なりに発見をした様々なことが、僕の授業に反映されています。授業では僕がアートスクールで教わったことをそのまま伝えているのではなく、キャリアを積むなかで理解したり発見したことを伝えています。

どんなアーティストに影響を受けましたかとはよく訊かれる質問ですが、何よりも影響を受けたのは、そのときに一緒に学んでいたクラスメート、先輩、先生たちです。

ある特定の期間に、そのときの時代の空気のなかで、そういう人たちがどんな絵を描いていたか、また、どんな絵を良いと思っていたのか、そんな共通認識とも呼べるようなものが決定的に今の自分の価値観を作っています。

先日個展をしましたが、そのときに発表した絵や、仕事の絵も全部圧倒的に影響を受けています。いつか機会があれば自分の絵のルーツとなったアーティストの絵をいろいろと紹介してみたいところです。

もちろん、学校を出てから一人で研究したことも重要なのは言うまでないですし、人によっては学校なんて何の役にも立たなかったという人もいるかもしれません。

でも僕にとってはアートスクールの時間がとても大事でした。みなさんもそうであったらいいなと。

人それぞれ成長のスピードは違うと思います。そして、経験を積むに従ってわかりにくくなりますが、僕は今でも成長を感じることがあります。みなさんにも何かしら成長が感じられる一年であったなら嬉しいです。

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