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【妄想企画】クラフトコーラ製作秘話

はじめに

半年前から趣味でクラフトコーラを作っている。はじめは果物やスパイスの種類を変えたり、炭酸水以外に牛乳や甘酒で割ったりしてその試行錯誤を楽しむだけだった。しかし最近では、余ったレモンでチキンを煮込んだり、出涸らしを入浴剤にしたりと、飲料以外のコーラの楽しみ方も発掘しつつある。はたまたコーラをビンに詰めてオリジナルラベルを製作したりもしている。

「ここまで来たら商品化も夢ではない!」と簡単に言うことはできない。私は飲食業に関わったことはないが、食品衛生、材料調達、経営など、趣味なら考慮せずに済んだ多くの高い困難があるだろう。そのため現在のところ商品化するつもりはない。

しかし、それでも、仮に商品化した場合に備えてそのコンセプトを先に考えておこうというのがこの妄想企画である。クラフトコーラを商品化した気になって、販売した気になって、メディアに取り上げられた気になって、インタビューを受けた気になって、私のクラフトコーラ製作秘話を語る。

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チキンのレモン煮

「ZUKA COLA」について

「ZUKA COLA」はオーソドックスなクラフトコーラで、老若男女問わずに楽しめる。3種類の果物と7種類のスパイスで甘味・酸味・苦味をバランスよく整え、スタバのフラペチーノのようにデザート感覚で飲むこともできるし、ビールのようにご飯と一緒に飲んでも甘ったるくなくて丁度よい。また、砂糖控えめで果物の甘みを生かした作りになっているので、健康志向の高い人にもおすすめできる。

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ZUKA COLA

「ZUKA COLA」に込めた想い

「ZUKA COLA」は「Cola connects us.」というコンセプトを掲げて商品化した。英文の通り、コーラを通して人と人とが繋がることを願っている。商品名は私の本名からとっているだけなので、このサブタイトルでもある「Cola connects us.」に想いのすべてが込められている。

私は本業でネットワークエンジニアの仕事をしている。スマートフォンや固定回線、インターネットなど、世界中の人々を「通信」の力で繋げることに日々尽力している。特に近年では5GやIoTの実用化により、より多くの人へより多くのサービスを届けられるようになった。この仕事、あるいは通信ネットワークに対してはとても大きな価値や意義を感じている一方で、通信ネットワークの弊害や限界も感じている。その一つは、ネットワークによって人と人とがあまりに直接的に繋がり過ぎてしまったこと、もう一つは、ネットワークの規模が大きすぎて繋がっている実感が湧きづらくなってしまったことである。

SNSなどによって、人々は簡単に、そして直接的に繋がることができるようになった。それは素晴らしいことでもあるが、同時に、繋がり過ぎてしまったことで、人々はソーシャルな自己実現ばかりに気を取られるようになった。昨今では「炎上」という言葉をよく見かけるが、誰かを貶めることで自分が正しい人間であることを確認したり、「この発言で自分のフォロワーがどれだけ増えるか」「誰の味方につくことが今は得策か」ばかりを考える人が増えた。

そうした中で、モノを通したコミュニケーションがもう一度見直されるべきだ。人と人とが繋がるとき、それが誰かに好かれたいからとか、フォロワーを増やせるからといった理由によってではなく、純粋に同じモノを好きな人たちがそれを通して繋がることができたらいいなと思っている。そしてここでいうモノが、私の大好きなクラフトコーラであってほしい。

また、通信ネットワークのようなマクロな「繋がり」ではなく、もっとミクロな具体的な個人との「繋がり」を実現・実感したいというのがもう一つの想いだ。オフィスワークで機械とにらめっこする毎日では、どうしても具体的な人を想像して仕事をするのが難しい。それは、だからこそ大規模に物事を成し遂げられるという側面もあるが、私はもう一つの働き方として、具体的な人と直接関わってみたい。クラフトコーラを通して、作り手とお客さん、作り手同士、作り手と生産者さんなどとの繋がりを実感したい。

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煮込んだクラフトコーラ

「ZUKA COLA」のラベルについて

ラベルには、冒頭に触れた「Cola connects us.」以外にも、私のクラフトコーラにかける想いやスタンスを込めている。

中央に配置したベンゼン環は、私のクラフトコーラ作りに対するスタンスを示している。私は、本業がそうであるように、エンジニア(ものづくりを行う人)としてクラフトコーラと向き合いたい。私はセールスマンでもエバンジェリストでもなく、あくまでも作る人でいたいと思っている。そこで、あらゆるエンジニアリングのベースである「科学」を想起させるベンゼン環を描いた。

また、ベンゼン環は炭素原子が正六角形に結合した物質である。この「結合」が人と人との「繋がり」をも示している。ベンゼン環は、構造式上では二重結合と単結合が交互に記載されているが、実際にはすべての炭素原子の結合は等価である。これはこのクラフトコーラが、老若男女問わずすべての人に届いて欲しいという意味とも重なっている。

さらに、ZUKA COLAによって人と人とを繋げることができたとしたら、その結果としてこのZUKA COLAをさらに生産することにも繋がっていける。そういった意味を込めて、ベンゼン環(=人と人との繋がり)からコーラの雫が落ちる(=コーラが作られる)様子を加えた。

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ZUKA COLAのラベル

クラフトコーラとの出会い

私とクラフトコーラとの出会いは「伊良コーラ」だった。伊良コーラとは東京都新宿区高田馬場に店舗を構える、世界初のクラフトコーラ専門店である。私が現住所に引っ越ししたての頃に近所の観光スポットを検索していると、このコーラ専門店が徒歩圏内にあることを知った。私はコカ・コーラがそれなりに好きだったが、毎日のように飲んでいるわけでもなく、ましてクラフトコーラの存在は知らなかった。しかしせっかく近くにあるのだからと、神田川沿いの散歩がてら買いに行った。

一口飲んでの感想は、「新しい感覚」だった。普段口にするコカ・コーラとは全く違うテイストのそのコーラは、スパイシーかつフレッシュな味わいで、人工甘味料の強い甘さがないおかげで口当たりも非常によく、これまで飲んだことのない美味しさを感じた。その後友人や恋人を連れて定期的に訪れている。

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伊良コーラ

しばらくして私は、趣味でスパイスカレー作りを始めた。きっかけは「市販のカレールーは脂の塊である」というネット記事を見たことだった。カレーは大量に作り置きできるため、一人暮らしの自炊の助っ人だ。そんなカレーが健康に悪いという記事を見て、当時の私は絶望した。と同時に健康的なカレーはないのだろうかと調べていると、スパイスカレーに行き着いた。

スパイスカレーといっても、たった3種類のスパイスで作る初心者向けのものだったが、基本的な調味料すら持っていない私にとってハードルは高かった。しかしこれもせっかくだからと、3種類のスパイスを(わざわざ意識高く成城石井にまで行って)買い揃えた。カレー作りが私の趣味の一つとなった。

さらにしばらくして、友人が最近「クラフトコーラを作ってみたい」と思っていることを知った。そこで初めて、クラフトコーラもスパイスから作られることを知った。スパイスを使ってカレーを作っている身としてはとても興味深かった。その頃、スパイスカレーの腕前が初中級くらいにまで成長して少し中だるみしていた私は、「新しいスパイス料理に挑戦したい!」と意気込み、友人が始めるより先に作ってみることにした。

はじめ購入したのは、カルダモン、クローブ、シナモンの3種類だった。自宅近くでこれらのスパイスを安く購入できるところを調べると、大久保のイスラム通りに良い店が見つかった。外国人だらけのその一角に足を伸ばすことが、クラフトコーラ作りに向けてのまず最初の挑戦となり、ビビりながらも店員さんに色々と教えてもらい、何とかスパイスを購入することができた。

製作自体は順調に進み、はじめて自作のコーラを作った感想は「美味しい!」だった。初めてにしては良くできたと思う。その後他のスパイスを加えたり、果物を使い分けたりしている。胡椒、生姜などの近所のスーパーで簡単に購入できる材料も意外といいアクセントになるので重宝している。そうしてかれこれ半年程度、様々な工夫と挑戦の末、ようやく商品化することができた。

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初めて作ったクラフトコーラ

おわりに

私が本業で扱っている通信ネットワークは、今では人々の生活に欠かせないインフラとなっている。同様に今回私の製作した「ZUKA COLA」が、ひいてはクラフトコーラというものが人々の生活にとって欠かせない飲料になってほしい。

「今日はスマホが繋がらない」というクレームには日々耳が痛いが、いつの日か「今日はクラフトコーラが売っていない」というクレームが来るほどクラフトコーラが売れに売れて、なおかつ人々の日常に当たり前となる日が来てほしい。そんな淡い期待に身を寄せながら、今日も私はZUKA COLAを片手に、この文章を書いている。

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