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高岡なスナップ

あなたはあなたのままでいいと思うよ


 神社があるとなんとなく寄ってしまう。別に御朱印を集めるわけでもなく、宝くじの当選をお願いする訳でもない。ただ、何か事情がありそうな女性がそっと手を合わせていたり、今風の若者が鳥居の前で一礼をしたりするのを見るとなかなかいいなと思う(マニュアルカメラでは撮影は間に合わない)。でも建物や歴史に詳しいわけではないので、軽く一回りするとやることが無くなってしまう。そしてただぼんやり、結ばれたおみくじなんかを眺めていたりする。下げられた絵馬の方に目をやれば、病気の家族に対する切実な思いや、職場のあの人に向けた叶わぬ想いなんかも綴られている・・・。というようなのをモノクロームで撮ったりしたらあからさまになりすぎるので、結局こんなのを。

OLYMPUS OM-1 ZUIKO90mmF2 MACRO


ミラレ金屋町


 鋳物が盛んな高岡の伝統的な街並みで毎年9月の中頃に行われる「ミラレ金屋町」といいうイベントがある。住民と地元企業をバックに、富山大学の学生さんが主体となって頑張っている居心地のいいイベントだ。学生さんのスタッフは浴衣に扮して案内を行っていて、風情ある街並みにとても似合っているので、写真に収めないわけにはいかない(と言う割には街並みをあまり撮っていないな)。

 という訳で、早速清楚なお嬢さんに撮影をお願いしてみると、はにかみながらも快く了承してくれた。土門拳のようなスナップが撮れたらと常々思っているのであまり演出はしないのだが、たまには小物でも使ってみようかと文庫本を渡して読んでいるフリをお願いしてみた。すると「あ、懐かしいですね。」という意外な反応。高校生の時に読んだという。渡したのは太宰治の人間失格。思いがけず知的な雰囲気の女性を撮影できたことに満足し、もう帰ってもいいな、と思った。とか何とか言って、35度の猛暑の中3時間も撮影してしまったが。

OLYMPUS OM-1 ZUIKO90mmF2 MACRO


最後の晩餐


 駅の立ち食いそばが好きだ。できれば雪のちらつくホームで発車ベルの音を聞きながら食べたい。まぁ今はそんなホームにある蕎麦屋なんてものは絶滅危惧種であるが、高岡駅には辛うじてその名残である蕎麦屋が駅ビルの中にある。腹いっぱい食べたい気分でもないし、名物料理を食べるほど遠くへ来たわけでもないというこの状況にふさわしい。注文したのはちゃんぽん。長崎のアレではない。高岡にはうどんとそばのちゃんぽんがあるのだ。どうしても食べたくなるというような組み合わせではないと思うが、このような曖昧な気分の時にはいいかもしれない。

 出来上がりを待つ間、ひまつぶしにスマートフォンのニュースを見てみる。タイムリーなことに駅そば閉店のニュースが上がっている。大正4年創業の老舗が明日閉店だそうな。この店の事だった。別れを惜しむ客が列を作ることもなく、サラリーマンや家族連れが、いつものようにそばを食べている。普段と全く変わらないような平常運転の様子に、メニューを眺めながらついつい「ニシンそばとかあるのかぁ。次来た時はこれにしてみるかな。」とか考えてしまったりする。

OLYMPUS OM-1 ZUIKO55mmF1.2

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