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仏壇を壊す

死ぬと人間は墓にはいる。ほぼ例外なく。その後仏壇に祀られる。時折だれかが手を合わせ、掃除をする。

仏壇と墓は人間の最後の終着地点。

だから壊すことを考えて作られていない。なるべく丈夫に、壊れないようにできている。霊を永遠に祀るように。

人間ってのは勝手な生き物で、口では永遠といってもそれを守った試しはごくわずか。廃墟に残された仏壇も、人間の手が無くては永遠とはいかず、朽ちていくばかりだ。

それでも堅牢な造りのこの木の箱は、人間が居なくなった後も永遠を守ろうとしている。

僕はその前に立つ。右手にハンマー。左手に電動ノコギリ。僕は無情にも今からこれを壊す。仏壇を壊したことがある人間は少ないだろう。僕はそれを今から行う。

宗教を全く信じていない僕でも仏壇壊すのはなんだか気がひける。比叡山を焼いた信長のメンタルには恐れ入る。

どんなやつでも人間の死に関わることは避けがちである。しかし、そんな心もハンマーを一振りするだけでどこかへ飛んでいった。

人間ていうのは勝手なものである。
僕の一振りは、祠をただの木材へと変えた。しかし実際変わったのは僕の心だ。

人間が大事にするものは、だいたい主観で決めているようだ。
仏壇は、元々木材であり仏壇でもあった。

つまり捉え方はおのおのの身勝手。

それにしても、自分の身勝手に自分が囚われるなんて人はなんておかしいのだろうね。

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