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心が温かくなるかもしれない思い出

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心が温かくなるかもしれない思い出を書いてます。
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記事一覧

女子高生店員と私

スーパーにバターを買いに行ったときのお話。 乳製品コーナーに行ってバターを探してみるが、見渡す限りチーズばかり。 チーズの品ぞろえだけは嫌に良くて、バターがない、というのもおかしな話なので一応店員に聞こうと思った。 女子高生と思わしきアルバイトの店員と、店長と思わしきオッサンの店員がいた。 ここで迷いが生じる。確実な回答が得られるオッサンに聞くべきか、可愛い女子高生に聞くべきか。答えは0.2秒で出た。 女子高生だ。 ということで、女子高生に「バターはどこですか?」

オカン、それガガやない。フレディや。

正月休み。オカンとオトンと一緒にコタツでミカンを食べていると、オカンが唐突に言った。「明日、ガガ見に行くねん」 ガガ? なにそれ? と一瞬思ったが、上映中の『アリー スター誕生』のことだ。主演のレディー・ガガのことを言ってるのだろう。 次の日、オカンは友達と一緒にイオンに入っている映画館に出かけていった。 以下、映画館でのオカンの様子を想像で書いてみた。 オカン 「映画館すごい人やな~。さあ並ぼか」 友達  「ガガの映画、なんてタイトルなん?」 オカン 「う~ん。

文字は人を表さない

「文字は人を表す」 とか、言われる。 ホンマかいな。 私は26歳のときに「営業マンになるためのセミナー」みたいなのに通ったことがある。 そこで「履歴書の書き方」をしつこいぐらいに学んだ。 「手書きで書きましょう」 「修正ペンは使ってはいけません」 「証明写真は定規とカッターで綺麗に切りましょう」 「最後の『貴社規定に従います』のあとは『。』はつけてはいけません」 意味があるんだか、ないんだか、ようわからんルールがたくさんあったが、その中でも講師が強調していたことが

サンタさんからのプレゼント

私が8歳、妹が5歳のときの話。 クリスマス前にサンタさんにプレゼントを入れてもらう用の靴下を買いに行った。 私は小さめの靴下。今でも事あるごとに金銭を要求してくる妹はそのときから強欲で、赤ちゃんがひとりスッポリ入るくらいの大きな靴下を買った。 「サンタさん、この大きい靴下に何を入れてくれるんやろな~」妹は目を輝かせながら言った。 私は当時から非常に冷めており、「どうせオカンがプレゼント入れるんやろ。デッカイの入れやなアカンな。カッカッカ」と思うようなイヤなガキだった。

恐怖のお菓子工場

きよさんは工場を見上げながら、つぶやきました。 「ここが今日働く工場かあ……」 日雇い派遣だった当時のきよさんは各職場を転々としていました。その日は、お菓子工場でした。 「さあ、今日も頑張りますか」 きよさんはまだ知らなかったのです。そこは恐怖の工場だということを。 きよさん、あまりの職場環境の悪さに戦慄します。その工場は女性が9割を占めていました。詳しく言うと関西のおばちゃんが9割です。 きよさんはおはぎを作るラインに配置されました。 作業内容は流れてくるおは

乾燥きくらげの伸びしろ、ナメとったらあきまへんで

きくらげ入りの肉ピーマン丼を作ろうと思って、人生で初めてきくらげというヤツを買ってみた。 きくらげ、が何なのか皆目見当つかんのだが、普段から新聞と本を読んでいるだけあって「クラゲの一種ではない」ということだけはわかっている。これが教養ってやつだ。 乾燥しているから、水で戻さないといけない。 袋に入っているのはちょっとだけだ。「なんでえ。こんなちょっとしか入ってないのか」と思い、一袋すべてボールの中の水に放り込んだ。 20分くらい放置しないといけないので、その間に肉とか

うますぎる話には代償がある

中学3年間、マー君という男の子とクラスが一緒だった。 物静かで友達がいないマー君は、当時夜中に放映されていたドラマ『トリック』の話ができる私とは唯一仲がよかった。 マー君は『トリック』の話になると饒舌だ。「橋がなくなったと思ったら、結局違う橋やってんな。あれはすごいトリックやったな~。あっ、そうそう今日の給食カレーやから食べてな」 彼は信じられないことにカレーが嫌いだった。というか、マー君は何の因果を持って生まれてきたのか、”皆が好きであろうもの”がことごとく嫌いだった

おむすび大将と未来の総理

昨日図書館へ行きました。そこで素敵な出会いを二度も体験したので、紹介します。 おむすび大将12月も半ば、皆さんいかがお過ごし……とか言うとる場合か。寒い! 寒い。寒すぎる。 でも、どうしても本を返しに図書館へ行かないといけない。 ヒートテックを着て、パッチを履いて、分厚い靴下を履き、ふわふわのパーカーを着て、手袋を装着。 モッコモコだ。腹が出ていることもあって、完全に『ミシュランマン』と瓜二つだが、まあいい。 よっしゃ、じゃあ行くか。 勢いよく玄関を出たそのとき

ブチ切れるオッサンと若者

毎週のように会社で出たゴミを焼却所(市営)に持っていくと、いつもはやさしいオッサンが烈火のごとくブチ切れていた。 「なにしとんねんお前! ボケ! コラ!」 街全体に響くのではないか、くらいの大声だ。怒っている相手は後輩であろう20代くらいの若い男。 「頭おかしいんかお前! ボケ! コラ!」 おいおい。そんな怒り方ってないやろ……今だったらパワハラで訴えられてもおかしくない。 オッサンよ。いくら先輩だからってそんな言い方はないぞ。若い男も頑張ってるんやから。知らんけど

ユミさん(仮名)へ

ユミさん。お久しぶりです。 私のこと、覚えていますか? 五年前、プリザーブドフラワーを箱に詰めていく日雇い派遣で4日間、一緒に働いたきよさんです。 そうです。休憩時間に『アンパンマングミ』をむさぼり食っていた男です。 早いものであれから五年も経ちました。ユミさんと過ごした4日間は昨日のことのようにステキな思い出として残っています。 あなたの綺麗な髪、やたらと狭い肩幅、時折見せてくれる笑顔、今でも忘れることができません。たまに夢に見ます。あなたは夢の中では常に他の男とい

素晴らしき犠牲の精神

観葉植物をかれこれ2年ほど、育てている。 そんな中、水をやるのを忘れていたことが何度かあった。 当然、枯れる。ごめんよ。 しかし、その枯れ方になんか感動した。 一つの枝だけ枯れていて、全体的には元気なのだ。 その枯れた枝だけ落ちてしまえば、まったく元気な観葉植物に戻る。 全体が枯れてしまうのではなく、ひとつの枝だけ犠牲になり(養分も分け与えているのかも)、全体として命を長らえるのだ。素晴らしい犠牲の精神である。枯れた枝には気の毒だが、拍手を送りたい。 観葉植物の

史上最悪のパーティ

ひとり暮らしを始めて一か月くらい経ったある日のこと。 ブラック仏壇屋に朝から晩までコキ使われ、ヘトヘトで帰宅すると、どうも部屋が騒がしいことに気がついた。誰かいるぞ。 玄関に入ると案の定、オカンが出てきた。「おかえり~」 …………いつ合鍵を作ったのかわからんが、オカンだからまあよい。ただ、中にも誰かいそうだ。妹か? オトンか? おそるおそるリビングに入ってみると、そこには身内はおろか、まったく知らんオバハンが三人、地べたでフライドチキンをむさぼり食っていた。 「あら

ぼくのおばあちゃん

私のおばあちゃんはパワフルババアだった。 太っており、身体がまん丸。「可愛い」と評判のおばあちゃんだったが、大阪の八尾出身で河内弁バリバリ、めちゃくちゃ口が悪い。 そんなおばあちゃんをいくつかのエピソードを交え、紹介。 垂れた乳で汗を拭くおばあちゃんは巨乳で昔はよくモテたらしいが、案の定、垂れた。 「胸が痛い」 と言うから、母がおばあちゃんの胸を見たら垂れた乳がズボンに挟まっていた、という件(くだり)がお決まりだった。 おばあちゃんは汗っかき。常にタオルを持ってい

ビーダマンの改造と筋トレはほどほどに

『爆走兄弟レッツ&ゴー』世代、いわゆる『第二次ミニ四駆世代』には遊ぶおもちゃに事欠くことはなかった。 ミニ四駆ほどではないが、人気のあったおもちゃのひとつに『ビーダマン』がある。 穴が空いている後頭部からビー玉を入れ、お腹から発射するフィギュアだ。 このおもちゃの最大の特徴は何と言っても「遊び方がさっぱりわからない」こと。 お腹からビー玉を発射できたからといって、一体なんだと言うのだろう? 的当てくらいしか思いつかないが、そんなの面白くもなんともない。 漫画ではサバ