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ペーパーファスナー

Googleカレンダーを使い始めたのは2013〜4年、新卒で働き始めた頃だったと思う。もともとガジェットやデジタルデバイスが好きで、かつ失くしものの多い自分にとって、PCでもケータイでも、人んちのPCからだって、ログインしさえすれば同じ予定表を確認し編集できるというのはとても便利だった。メールや雑談をしながら手にしているそのデバイス上ですぐさま予定を確保できるので間違いがない。というか、それ以前は予定をどう管理していたのか、全く思い出せない。手帳は確かに持ってはいたはずだが、それをどう運用していたんだっけ。

周りにGoogleカレンダーを常用する人が増えるにつれ、他人とカレンダーを共有しあって仕事の連携をとるケースも増えてきた。いちいち予定を聞かなくても人の予定を大まかに把握できるのはラクだし、掲示板のような面白さもあって、そのうち手放すことを考えられないくらい仕事と生活に密着したツールになっていた。がっつり使い込んだのは7年間くらいだろう。

2021年に完全に独立して仕事をするようになる。それまで必須だった他者との連携はほとんどなくなり、なんでも自力でやってみようの時期でもあったので、定期的に人と連絡をとりあうこともほぼなくなった。またあらゆる画面を眺めるのも嫌になっていて、デジタルデバイスを置いて出かけることも増えた。あらかじめ地図や連絡先をプリントして持ってスマホなしで遠方のツアーに出てみたりもした。そうして徐々に、Googleカレンダーは出先では使えないのでかえって不便だという状況に変わっていった。

あらためて手帳を探そうと思うも、自分が必要な機能を洗い出してみると、それを完全に満たす商品はなかなか見つからない。なるべく小さくて、予定把握用のマンスリーと進行管理用のウィークリーがどちらもあり、なおかつウィークリーは月曜はじまりが良い。一番大事で難しいのは持ち歩く気になるほど愛着を持てるかどうかで、あれこれ探すうちにこりゃもう自分でつくるしかないなといよいよ腰をあげた。

うちにはハガキサイズの藁半紙が大量にある。だいたい2,000枚以上はあるだろう。フリーペーパーかいほうを以前、レトロ印刷JAMに発注して刷ってもらっていたときに、インキが裏写りしないように合紙として挟まれていたその藁半紙を捨てるのがもったいなくて溜め置いていた。メモ書きに使ったり簡単なノートを作ったりしていたが到底使いきれる量ではない。ほかを考えるまでもなく材料はこれだ。大量使用のチャンス。

製本方法をどうするか。初めて作るもので100%の完成品に到達することはあり得ない。しっかり糊綴じをするよりは、可変的な、仮止め状態の方がいいだろう。いじりたくなったときにやりやすい形…二穴パンチをしてまとめよう。と調べるうちにこのペーパーファスナーにたどり着いた。ライオン事務器のブリキ製ファスナーNo.8T。50本入りで1,035円。

先述のとおり、手帳として必要な機能はすでにハッキリしているのでillustrator上にそれを組んでいく。日付部分はデータで作ると大変なので手書きで記入していく形式にした。あとは必要な分だけプリンターで印字、穴をあけてペーパーファスナーで固定したらすぐ完成した。しばらく持ち歩いてみると、藁半紙だけでは強度が足りなくて心許ないことがわかったので、うちにあったチップボールを使って表紙裏表紙を作った。表紙はカッターでハーフカットをいれて開きやすくした。改良可能な形式にしてやっぱりよかった。

4月ごろから移行して今月ではや半年。自分のために必要な機能のみを持たせ、日頃使っている材料から作っているので、使っていてストレスも異物感もなく、最初からずっと手に馴染んでいる。書き込む文字もいつもの文字なので、まるで自分の部屋のようだ。

ケータイが欲しくて欲しくてしょうがなかった中学生のとき、通信そのものというよりも、それがモバイル=移動式であることに強烈に惹かれていたのではないか。家にあった古いスパイヒーロー漫画に描かれていた、超多機能のスーツケース。通話ができ、武器にもなり、変装マスクのプリンタでもあるという、あの説明書きのページだけが今でも思い出せる。

どのデバイスからでも同じ情報にアクセスできるクラウド型のサービスが増えて、それはかなり便利なので色々使っているが(これを書いているテキストアプリSimplenoteもそう)、各デバイスは窓のような存在になって、スマホにしても道具を持ち歩いているというよりはアクセス権を持ち歩いている状態だ。モバイルな道具を持ちたいという欲求は、こうやってまた別の方法で満たしていく必要があるのかもしれない。

ちなみに、旋律をたくさん考えますようにと期待をこめて、五線の入った旋律メモページもたくさん挟んでおいたが、そっちはまだほとんど使えていない。がんばれ。

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