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❝部活の歴史❞をご存じですか?

この投稿は、内田良、加藤一晃、野村駿、太田知彩、上地香杜らが執筆した本「部活動の社会学 学校の文化・教師の働き方」に掲載されている❝部活動の学習指導要領上の位置づけの変化❞についてまとめた記事です。

働き方改革のための予備知識として、非常に有効な情報が掲載されている本でした。

部活の位置づけの変遷

部活動の産声「校友会」

明治期、旧制高等学校や旧制中学校などにおいて、生徒たちがスポーツや文化活動に親しんだ教育課程外の活動があります。それが「校友会」です。
これが現在の部活動のルーツになっています。
なお、戦時体制に入ると、この校友会は生徒の勤労動員を目的とした「学校報国団」と呼ばれる組織に組み込まれますが、終戦後に従来の校友会としての活動が復活していきます。
注目すべきは、この校友会の活動は生徒たちの自主的な活動だったという点です。

「クラブ活動」の誕生

1947年の学習指導要領一般編(試案)における「自由研究」を経て、1951年に誕生したのが、「クラブ活動」です。教師の関与をできるだけ減らし、生徒自身により活動を運営するこれは、特別教育活動の中で行われます。
注目すべき点は、教育課程内での活動、かつ生徒の自主的な活動だった点です。

「必修クラブ」の導入

クラブ活動の位置づけに大きな変化が訪れます。「必修クラブ」の導入です。(中学校1969年改訂、高校1970年改訂)
これにより、全生徒が毎週一単位時間、クラブ活動に参加することになります。
このとき、施設設備の不足や指導者の人数不足という問題が発生します。そのため従来のクラブ活動を全て必修クラブに移行することは現実的ではなかったのです。

そこで、従来のクラブ活動を「部活動」という呼称に変え、教育課程外の活動とする対応が取られるのでした。
注目すべき点は、授業時間内で行う必修クラブと授業時間外に行う部活動の二つが併存する形になったことです。

※実際は必修クラブと部活動を区別せずに同じ活動として行う学校も出てきたようで、「原則として全員参加」の形で部活動を行った学校が中学校で61.9%、高校で32.0%だったとされます。
また、平成元年学習指導要領では、課外の部活動への参加をもって、必修クラブ活動を履修したとみなせる「部活代替措置」が設けられます。

必修クラブの廃止

1999年学習指導要領で必修クラブに関する記述がなくなります。
2000年度以降に必修クラブは廃止となります。
つまり、教育課程外の部活動だけが残されたのです。

必修クラブ廃止の理由には、
「クラブ活動については、それとほぼ同じ特質や意義をもつ教育活動として、放課後等における部活動が従来から広く行われていた。(中略)また一方、地域の青少年団体やスポーツクラブなどに参加し、活動する生徒も増えつつある」という文部省の状況判断があったようです。

これが今日に至る、部活動の歴史です。
改めて、学習指導要領上の位置づけの変遷をご覧ください。


【感想】

教育課程外に位置付けられている部活動がなぜここまで大きな影響と存在感を持ったのか、その経緯がわかりました。
また、「原則、全員加入」という部活動の方針をもつ学校が多い理由の一つに、学習指導要領改定における歴史的な流れを汲んでいることを初めて理解しました。

教職員の勤務時間外にあたる「放課後」や「休日」を主な活動時間とする部活動の存在は、働き方改革を考える上で避けては通れぬ領域です。
私たちは今、部活動のあり方を根本から考えなおす必要があります。

しかし、歴史を振り返ると、これまでも部活動は、社会情勢に応じて形を変えてきたのです。
過去の慣習にとらわれず、大胆な部活改革を進めることは悪いことではないのです。
私は、教職員が自らの意志を持って、勤務時間外の部活指導をするのかしないのかを判断する必要があると考えます。

勇気ある決断には、情報と前提となる知識がなくてはいけません。
今回の投稿が、学校の部活動の在り方を考える一助になれば幸いです。
by kiyomi🍊

今回ご紹介したのは、書籍「部活動の社会学」の一部分です。
詳細を知りたい方は、全編をお読みいただくことをお勧めします。
これまで、研究の対象のなることが少なかった部活動に関して、統計データを基にした分析がなされています。
以下リンクです↓


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