兵器を国産しても景気はよくならない。日中防衛費比率の盲点


ツイッター上である漫画家さんが主張しておりましたが、外国から兵器を買っても、防衛費の乗数効果が上がらないが、国産兵器を買えば乗数効果があがる、つまりその分だけ景気の刺激になるという主張をされていました。

これは完全に間違いです。
確かに国内で生産すればそれに関わる企業の従業員の仕事は増えて、会社の利益にはなります。ですが、その原資は国費税金です。最近は国債でこれを賄えというこえもありますが、それでもいずれは償還しないといけない。

それは世帯が一緒の家族内で賭けマージャンやるようなものです。

定数効果というのは税金を例えば100投入して、それが呼び水になって130とか150になって経済が活性化して税収も増えていく、ということです。

例えば空港を作って、それを利用して物流が活発化したり、輸出が増えるというようなことです。あるいは花火大会で10億円使っても、見物客が押し寄せて公共交通機関が儲かったり飲食店が儲かるようなことです。
防衛装備ではそのようなことがありません。単に予算を使えば、それが何か経済効果を生むことがありません。

むしろC-2のような他国の何倍も単価も維持費も高い装備を買うくらいならば、輸入品の方が国家予算に有利です。差額の予算を別な経済刺激策に使うことも可能です。しかもコマツの装甲車や住友重機の機銃にしても他国の何倍も高く、しかも性能や品質は低かったわけで、それを税金で買っても乗数効果はでないばかりか、自衛隊が弱体化します。

違うのは輸出です。輸出であれば国の税金で買うわけでなく、外国からお金と利益がやってくるわけです。税金を使わずに利益が得られます。
例えばBAEシステムズは日本製鋼所の砲身に興味を持っていたといいます。同社の砲身加工技術は大変精度が高い。こういうものが輸出されれば国家として利益にもなるでしょう。ただ言っておくとだから日本製鋼所のつくる戦車砲や榴弾砲が優れているかというと別な話です。砲のシステムをつくることは別な話です。
我が国では要素技術がすごいからシステムもすごい、みたいな幼稚な技術がはびこっています。IHIのタービンブレードがすごいから戦闘機のエンジンなんぞ簡単につくれるとかその好例です。本当に優れたメーカーであればRRやGEなどに伍して世界のエンジン市場でシェアを取っているはずですが、その事実はありません。

日本の場合、防衛輸出に関して言えば、素材やコンポーネントで勝負すべきです。あとは国際共同開発です。
対して中国はどうでしょうか。前世紀まで中国の輸出兵器といえば小火器やソ連の模倣戦車などというイメージでした。ところが世界の武器市場にアクセスして、開放政策もあって、輸出を伸ばしてきました。今では防空システムや、大規模な指揮通信システム、艦艇、無人機、有人機、各種装甲車両から無いものないほどの製品やサービスを提供しており輸出額は大きく増えています。


>2009~19年に中国がアジア太平洋の国では武器輸出の首位に立ち、売上高が180億ドル近くに達したことが国際情報会社IHSマークイット・ジェーンズのまとめで分かりました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20191113-00150712

2兆円ほどになります。つまり中国は武器輸出で大きく稼いでおります。そしてそれらの多くは国営企業で作られています。2兆円分を中国が税金で購入するわけではなく、他国が買ってくれるわけですから、国の費用負担はありません(販促費や賄賂はつかっているでしょうが)。それは中国の国家財政に余裕を与えることになります。

対して我が国は、輸出はありません。この差は大変大きな意味を持っていますが、それを理解している政治家、メディア、いわゆる識者は殆どおりません。

しかも今後円安が続き、経常収支赤字が常態化して、また国債の評価が下がれば外貨の手当が余計に高コストなって、それが防衛費を圧迫するでしょう。しかしご案内のように国内兵器は高コスト、低品質、低性能です。大変剣呑な常態になっていくことが予想されます。

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