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「三月の5日間」沖縄オリジナルクリエイションという演劇に関わったこと

どうもKiyotoです。最近の沖縄は、お昼は初夏のように結構暑くなりますが、夜は思った以上に冷え込むような季節になっております。
今回は、僕が初めて演劇に関わったことについて書きます。

演劇に関わるキッカケをくれた人

ある日、大学生になって長い付き合いになる友達の卯月(うづき)に会いました。とはいってもここ数年は直接会ってなくて、SNSで何となくやっていることを見るくらいの関係でした。彼は最近、大学で学んでいることに加えて、演劇や映像などの活動を行なっているそうで、正直これまでのイメージとは全く違う人になっていました。
そんな彼から、「今度オレが企画してる演劇の空間デザインをしてみない?」と言われたのです。
「演劇で空間デザイン?僕は何をすれば良いの?」
最初僕が思った正直な気持ちです。そこで、今回やるという演劇の戯曲を見せてもらいました。
タイトルは「三月の5日間」。タイトルだけでは全く内容は分かりません。簡単に説明すると、舞台は2003年3月の渋谷。ちょうどその頃イラクでは、アメリカ軍が空爆を開始しイラク戦争が始まっていた。そんな中で、渋谷にいた数人の若者の間に同時多発的に起こる出来事を見ていくという内容。これ以上内容について触れているととーっても長くなるので、今回は割愛させていただきます。代わりに、今回の演劇の特設ページのリンクを貼っておくので、もし内容が気になる方はこちらをどうぞ。
ちなみに、このページは彼のホームページでもあるので是非。

彼からの具体的な依頼は、「舞台全体のデザイン、大道具や小道具、客席まで幅広く提案してほしい」というものでした。僕としてはその時何か新しいことをやりたいと思っていたので、ちょうど良いタイミングでした。そして僕は彼からのオファーを引き受けて、演劇に関わることになるのでした。

演劇を通して、何ができるか?

僕が演劇と聞いて一番に思い出すのは、劇団四季で見た「ライオンキング」です。理由としては、本格的な演劇を見たのが初めてだったのもありますが、それともう1つ印象的なことがあったからです。
それは、演劇の途中で役者さんがお客さんと同じ通路を使ってステージに向かっていくというシーンでの出来事です。役者さんが通路を通ったその時、通路側に座っていた僕に役者さんの衣装の一部(おそらく羽?)が当たったのです。その劇場は正面にステージがあって、それに向かって客席があるというスタイルでした。演劇は、そのステージの上だけで行われて、それをお客さんが見るというものだと思っていたのですが、その演出によって僕はその物語の中にいるような感覚になって、ぐっと演技に惹きつけられたのです。そして、それまでよりも演劇との距離が近くなったのを感じることができました。この感覚はとても不思議で、今でもしっかりと覚えています。

そこで僕は、役者さんとお客さんの関係、ステージと客席の境界を操作することで、双方の距離感(ここでは心理面・物理面の両方)を意図的に変えることができ、演劇を通して新しい体験を生み出すことができるのではないかと考えました。
そんな時に、演出の方から「ステージを真ん中にしないか?」と提案を受けました。それを聞いた時、真ん中のステージは僕がやりたいことができる形式なのではないかと思い、ステージを真ん中、その周辺に客席という形を軸にしてデザインしていくことが決まりました。
もうすでに会場は決まっていたので、早速見に行ったのですが、ここがまたすごい空間でした。元々は建築事務所だった?ような平面図への書き込みがありますが、現在は主にライブハウスとして使われているそうです。そして、後から付け足されたであろうステージが、空間に入って正面ではなくちょっと左にズレた場所にあります。そして、壁には数多くの絵画が飾ってあったり、何種類ものイスがあったり、曲線が特徴的な机や棚があったり。。そこは秩序を全く感じないというか、もう言いようのない気持ち悪さを感じる空間でした。

最初に入った時はこんな感じでした。
そこで一体何ができるのだろうか。演出の方などとやり取りを重ね試行錯誤を続けながら、何とか演劇ができる形式を成立させて、本番を迎えることができました。

「空間デザイン」として形にできたもの

本番の様子がこちらです。

見て分かるように、ステージが真ん中でその周辺にお客さんが座る形です。
ステージに敷かれたブルーシートは、演劇の内容から、遺体置き場・内戦・災害などをイメージさせるものとして使用しました。

成果としては、
▷役者さんとお客さんの距離感を近づけることができた
▷今までにない体験ができる空間を作ることができた
この2つが挙げられます。

1つ目は、ステージと客席の関係から言えます。
まず、ステージを真ん中にした上で、客席をギリギリまでステージに近づけました。その中には、椅子座に加えて床座(床に座布団を置いたスタイルの席)を設けました。そして、どの席からも役者さんと目を合わせられるくらいの距離にしました。この演劇はお客さんに語りかけることが多いのですが、この形式によって、お客さんを演劇から置いてけぼりにしない、しっかり内容を届けられる距離を確保することができたと言えます。

もう1つはお客さんが実際に行う体験から言えます。
一般的にお客さんは、ステージに上がったり入ったりすることはありません。しかしこの形式ではそれができるようになっています。また、演劇の情報を載せているサイトへと繋がるQRコードをステージの真ん中に置くことで、半強制的にお客さんはステージを通ってから客席に向かうことになります。演劇中は、ステージの役者さんを見ると同時に、向かい側に座っているお客さんのリアクションを間接的に見ることができます。また、歩き回る役者さんを様々な角度から見ることもできます。そして演劇が終わったら、ステージを通って帰るという形式です。
よって、役者さんから見える景色をお客さんも体験することが可能になったことに加えて、あまりない演劇の見方や動線を体験することができるようになります。

結果として、ステージが真ん中にある形式を成立させることに加えて、新しい体験をお客さんに提供できたのではないかと思います。

デザインをやっていく上での必須事項

ただ反省することはたくさんあります。
まず、デザインについて。
正直なところ、今回のデザインは全く満足できるものではありませんでした。もっとできたのでは?と思っています。理由としては、様々なコミュニケーションが足りていなかったことに気が付いたからです。
特に気になった演出と空間デザインの関係はもっと議論するべきだったと思います。僕の演劇の知識が足りていなかったのもありますが、実際にどのような考えで演出を決めているのか、役者さんの動きを決めているのかもっと把握するべきでした。これは、演劇としての完成度に関わる重要な部分だったと言えるからです。

また、報酬についてしっかり話ができていなかったこと。
これは、今回の件で一番の反省点です。デザインをやっていく中で、お金の話は切っても切り離せません。経験があるない関係なく、この話自体をできていなかったのは良くない事でした。もうそろそろ実務のことも考えながら色々やらないといけないと実感しました。

最後に

長くなってしまいましたが、そろそろ終えたいと思います。
今回は初めてのことがとても多い、貴重な経験をさせてもらいました。
その中で様々な方との交流があました。
演劇自体をどういうものにしていくか指導する「演出」の方、当日実際に演技をする「役者」の皆さん、役者の皆さんが着る衣装を作る「衣装」の方、演劇の広報やチケット管理、その他数多くの業務をこなす「プロデューサー」の方など。
皆さん本当にそれぞれのプロフェッショナルで、学ぶことが多くありました。

この経験を、しっかり次に繋げていけるようにします。
ありがとうございました。

コメント、意見などお待ちしております。
ではでは。

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