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鮨屋デビューのススメ

鮨バブル

鮨屋の価格上昇が止まらない

一昔前は超のつく最高級店であってもひとり2.5万円程度だったが、名店すきやばし次郎の映画「二郎は鮨の夢を見る」が世界、特にアジア圏でヒットしたあたりから徐々にインバウンド需要も増え、いまや”そこそこのお店”でも2万円、3万円は当たり前

銀座や麻布にある超高級店と言われるお店であればひとり5万円は覚悟しなくてはならない

鮨屋のビジネスモデルというのはレストラン業界でも異質である

わずか10席ほどのカウンターに対して、握り手は1名、多くても2名

裏方には握り以外のおつまみ仕上げたり、炊きたてのシャリをタイミングよく準備したり、まきエビをタイミングよく茹で上げたりと握り以外の仕事をする人が4.5名

10名のお客さんに対して6.7名の従業員が料理の提供と給仕にあたる

例えばお酒を飲んでひとり客単価が2万円だとしたらどうだろう

売上は20万円
1回転しかしなかったとしたら、毎晩満席でも月商はわずか500万円である

飲食店における食材原価率は25%から30%、人件費も同程度に収めるというのが勝ち続けるための定石である

人気店は早い時間と遅い時間に綺麗に2回転させるので50万円からの売上を立てるが、それでもこの鮨屋の経営が家賃の高い都心部においていかに難しいかお分かりいただけると思う

そんな中、需要ばかりが増していく
海外から
特にアジア圏から富裕層が競うように鮨屋のカウンター席を狙い、鮨を食べるために東京観光のスケジュールを合わせる、そんな状況である

当然、客単価はどんどん上がっていく

10年働いても握らせてもらえない

という話を未だによく聞くのだが、それでも彼らが厳しい修行に耐えるのは技術を盗むということ以外にのれんを分けてもらう、という理由と、仕入れ先をつないでもらう

という理由がある

熟成ネタで日本一とまで言われたご存知、すし匠の大将中澤さんはハワイへと活躍の場を移しワイキキのリッツ・カールトンでカウンターに立つ

のれんを受けた者たちはそれぞれ「匠」の名前を冠した店を出店して親方が作った信頼のおけるルートから質の良いネタを仕入れる事を許されている

この人間関係の数珠つなぎこそが、伝統のなせる技なのかもしれない

話を元に戻す

今回はその鮨屋の利用の仕方をぼくなりに解説したいと思う

もちろん
レストランをどのように利用しようとそれはお客さんであるあなたの自由である

ただ、ぼくはこのように利用する
その方がいいんじゃないの?

という偏見的なとても基本的な助言である

まず鮨屋にメニューはない

これは今も昔も変わらない
昔ながらの庶民派鮨屋であっても
どれほどの高級店であっても
メニューはないのだ

だから支払う金額は最後のお会計の瞬間までわからない

お店のウェブサイトやグルメサイトに金額が書いてあるじゃないか

と思う方も多いと思うが表記はこんな

おまかせ 握り 15000円〜
おまかせ 20000円〜

といった具合である
「おまかせ」
というのはいわゆるコースといった感じのものでおつまみと握りが順番に、もしくはお店によっては交互に提供される

おつまみといっても(季節によるが)
代表的なのは鮑の酒蒸しだったり、のどぐろの炙りだったりと高級食材が多く

その分価格は、単なる握りと比べてかなり高額になる

握りのみで15000円の店ならば25000円程度であると思う

そして驚くべきことにほとんどの鮨屋が飲み物のメニューも置いていない

口頭でのオーダーのみである

「乾杯はいかがいたしますか?」
「ビール」で
といった感じである

日本酒を飲みたいといえば大将が料理に合わせて順番に合わせて出してくれたりもするし、乾杯にシャンパンを選ぶなら(最近はシャンパンや白ワインの品揃えが良い鮨屋も多い)自動的にハーフボトルを空けられてしまうこともある

これがブラックボックスなのだ

お酒好きな人と行くと、
会計は1.5倍下手したら2倍に膨れ上がる


 ただ裏を返せばよい日本酒を少しずつ味わいの解説とともにいただけるのだから、日本酒を覚えるにはもってこいなのが鮨屋でもある

さて、食事も終盤

どの店に行っても
殆んどのお店がお味噌汁や卵焼きで〆る


中には
「お好み」といって
本日いただいた中で気に入ったネタをアンコール
または、おまかせにて提供されなかったネタをお勧めしてくれて握ってもらうというビッグイベントが終盤に訪れる

こうなると
もう会計はいくらになるのか皆目見当がつかない

先日友人と伺った
こちらは一見だったのだが
ぼくはあまりお酒をたくさんいただく方ではないので
ビールと日本酒を少しだけいただいたのだが
やはり2人で会計は10万円程となった

某ウェブサイトには客単価2.5万円となっている

つまり
初心者にとっては懐を気にするタイミングで
または
ご馳走しなくてはいけない相手との会食で余裕がないのであれば
鮨屋を会食場所に選んではいけないのである

あまりにも危険すぎる

その危険な理由はまだ他にもある

それは、会話

である
通常レストランというのは食を通したコミュニケーションの場でもあるから楽しく会話するのがふつう

しかし、鮨屋での会話は困難を極める

隣には知らないカップル
お金持ちそうな老夫婦

カウンターで横並びになるタイプの飲食店は他にも天ぷらや焼き鳥、バーなどたくさんあるが

鮨屋の場合は海千山千のお客たち
曲者ぞろいである

そして
なによりも大将と対峙して
真剣勝負をおこなうかのごとく
水を打ったように静まり返っている

気さくな大将

などという表現をする人もいるが
彼らはプロ中のプロであるから
相手を見てタイミングを見て
上手に踊ってくれているだけである

真夏の旬ではない鮪を食べて

「今までたべたなかで一番美味しいですねー」

なんて言おう者ならありがとうございすと感謝されながらも、心の中で

「こりゃ、何もわかってない客だな」
と嘲笑されてしまう

もちろん
並んでいる他の客たちにも、だ

日本には四季があり
世界からゲストか集まる理由は
職人の腕だけ、ならず

秋から冬にかけての国産鮪
夏の江戸前アナゴや北海道の雲丹
この国でしか手に入らない
また一流店にしか卸されない
季節に応じた旬のネタがあり
その日の気温や固体によって塩や昆布締めの時間をコントロールする腕利きの職人たちがしのぎを削る、旨い鮨においては世界最高峰のメジャーリーグなのである

そう考えると
若くして鮨屋に行き
良いタイミングで適切な会話をする
上手な大人の振る舞いをする

というのは飲食店利用者の最高レベルである

懐を気にしない
空気を読んで会話をする

そこに回りのゲストを冗談で笑わせたり
うんうんと唸らせるような発言をする

そこまでできて初めて
自然体で鮨屋を楽しむことができる

と言える

うーん、、鮨屋デビューに向けた指南書を書こうと思ったのだが、これは鮨屋に行きたい人を減らしてしまっているのかもしれない

この他にも沢山の流儀、粋な楽しみ方がある
気になる方はぜひ
アソビカタSalonに入って鮨会に参加してほしい 笑


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