夢は最後に獣の匂い


夢を見た。
今年最後の夢になるだろう。
そして、今年1番幸せな夢にも。



助手席に乗り込むと、ハンドルを握った君が笑顔だ。
嬉しい。
まずそれだけで。

私は君に顔を近づけ、何か呟く。
内容は覚えていない。
しかし重要なのはそこではない。
君に顔を近づけたとき、君からひどく動物的な匂いがしたのだ。

匂いのする夢は初めてだ。おそらく。

私はその匂いが好きだと思った。

君は私の言葉を聞いて喜ぶ。


永遠の旅に出よう。
そんなことを口走る君。 

嫌な予感がする。
永遠、という言葉を聞くと、夢が終わる。


ほら、今にも君の笑顔は歪んで。
獣の匂いが車内に充満する。


頼むから
私を、離さないで。



夢から覚めたとき涙が出ているのはいつものことだ。

だから何事もなかったように拭き取る。
なるべく瞼が腫れないように、そっと優しく拭き取るのだ。


獣の匂いは依然として私の鼻をついていた。

やはり私は、その匂いが好きだと思った。
そう思えたことに安心する。

キスがしたい。
再び布団をかぶると淡い白。


もう夢は見ないだろう。

そう。
えいえん、に。



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