ボツ企画シリーズ③78億7500万人の生贄

ボツになった企画書シリーズ。ボツになったけど、わりと頑張ったので誰かにみせたくて投稿します。

OKになる場合でも書き方自体はこんな感じなので、
企画書ってこんな感じなのかー、と思う人の参考になれば幸いです。

新作企画書
制作 喜友名トト
タイトル案
:78億7500万人の生贄

ジャンル・類似作品
:胸糞悪い系サスペンス・デスノートやデビルマンなど

キャッチコピー
あなたは、正しい人間でいられますか?
 
あらすじ
 舞台は架空の新型感染症が全世界に蔓延している近未来。
 ある日、各国のメディアやインターネットが乗っ取られるようにして、Xと名乗る謎の人物が姿を現し、次のようなメッセージを発した。
「アメリカ合衆国カリフォルニア在住のマイケル・ラナガンという人物が死ねば、アメリカ合衆国から新型感染症は消えます」
 Xのメッセージにはマイケル・ラナガンの顔写真も表示されており、マイケルが実在の人物であることは明らかだった。

 人々はXからのメッセージに様々な反応を見せるが、本気で信じている者は誰もいない。だが、全世界のメディアを一斉にジャックするという行為が通常不可能であることは疑いようがなかった。

 数日が過ぎ、事故か殺人かは未明なもののマイケル・ラナガンの死亡が報道され、同時に、アメリカの感染者は全員が全快し、ウイルスも消えたことが確認される。

 この超常的な結果をうけ、陰謀論が語られたり、Xを神としたあらたな宗教が生まれるなど世界中に混乱が起きる。

 一方、アメリカは医療崩壊や経済危機を脱するが、すぐに外国からの感染者の流入によって元の状態へと逆戻りをしてしまう。

 場面変わって日本。父・鈴木翔太、母・美香、二歳の娘・日葵の三人家族がテレビを観ていたところ、画面がジャックされ、再びXによるメッセージが送信された。

 X曰く。「日本に住む鈴木日葵が死ねば、全世界から新型感染症は消えます」

 鈴木家はその日から、世界中の注目の的となってしまう。

 巻き起こる様々な論争。
 Xの言葉は信頼できるのか? Xの正体はなにか? 世界中の多くの人命や経済が日々損なわれていることを考えれば、日葵が死ぬべき。 人権がある以上、日葵を殺してしまえと言うのはおかしい。 正直に言うと死んでほしい。 子どもの命を犠牲にして本当に幸福になれるのか。 命を犠牲にすることなくワクチンや政治による対応で感染症に勝つべきだ。 そんなことをしている間にたくさんの人が死ぬ。 日葵を殺したヤツは世界の英雄になれる。

 SNSやメディアを通して多くのスタンスが語られ、表向きには語らなくても内心では誰もが様々なことを思う中、鈴木家には実害も出始める。

 翔太の職場での孤立や、美香のママ友内でのイジメから始まり、住居への嫌がらせや無言電話、『早く死ね』「娘可愛さに感染症を拡大させる人類の敵」と言うものさえ現れる。

 翔太が過去に起こした些細な過ちや、妻のSNSでのわずかに反社会的なツイートが大袈裟に取りたてられて炎上し、鈴木家に対する人格攻撃も行われる。

 さらに国家による日葵への『保護』の打診や、ヤクザなどの非合法組織による一家への攻撃も始まってしまう。

 そんな中、当初は混乱していた翔太は娘を守る決意を固め、信頼できる親戚や友人の助けをかりて潜伏生活を始める

 しかし、そうこうしている間にも、新型感染症はさらに拡大し猛威を振るい、何千万という死者を出し、経済をボロボロに壊し、貧困の拡大や自殺者の増加へも繋がっていく。

 そうした感染症の負の影響は、鈴木家をかくまう親族知人にも及び始め、破産や感染症の後遺症で苦しむものが現れていく。

 その罪悪感と、日に日に変わっていく『信頼していた人たち』の態度に翔太が追い詰められていく中、Xがあらたなメッセージを発した。

「鈴木日葵の死亡による新型感染症根絶タイムリミットはあと12日です」

 一行に終息の気配がみえない感染症と、突如言い渡されたタイムリミットに世界中が騒然となり、鈴木家にたいして多額の金を払うから娘を引き渡してほしい、という者さえも現れ始める。

 ついに鈴木家をかくまっていた人々のなかにも感染症による死者や経済的困窮のため首を吊るものが現れ、鈴木は彼らに売られるようにして人々の前に引きずり出されてしまう。

 功利主義的な観点から日葵は死ぬべきだと叫ぶ人々は、翔太の目には狂った暴徒にしか見えなかった。「村のために不確かな生贄を出すなんて、未熟な古代人と同じだ」翔太はそう吠え、家族とともになんとか逃げ延びる。

 ようやく潜伏先を見つけた鈴木家。そこで妻の妊娠と感染が発覚。念願だった第二子の息子の誕生を前に、翔太は絶望に襲われる。

 隠れているため医療を受けることも出来ない妻は日に日に衰弱していき、このままでは死ぬ。胎児である息子も同様だ。そして、Xが告げた「日葵の死による救済」のタイムリミットが迫っている。

 無邪気に笑う日葵に、翔太はチラリと思う。「今、日葵を引き渡せば、妻は感染症から回復し、息子も無事生まれてくる。それも大金を得られて」

 己の心に生じた醜さと迷い。翔太は悩みの末、自分なりの答えを出す。
 しかし、同時に潜伏先は通報によって割れてしまい、翔太と日葵は暴徒に囲まれてしまう。

 あと一歩で日葵の体に刃物が刺さる、という段階でXの明示した「日葵の死によるタイムリミット」が訪れ、同時に新たなメッセージが伝えられる。

「鈴木日葵さんは死ななかったので、次はオーストラリア在住のペニー・ホロウィッツが死ねば、新型感染症は地球から消えます」

 翔太は日葵を守り切り、生贄のターゲットは、次へと移ったのだった。

 場面切り替わり、その時点での世界情勢と何人かの人物による独白が入る。最後に出てくるのは再び翔太。

 感染症に苦しむ妻を支える負担と経済的困窮の中で日葵を育てる翔太。世界中を敵に回しても、生贄を求める非人道的な考えに立ち向かい娘を守った翔太はふと、思ってしまう。

「ペニー・ホロウィッツって女、死なないかな」
 もちろん、翔太自身が日葵を襲った暴徒たちのようになることはない。ただ、そう思っただけだ。きっと、日葵のときにたくさんの人が、そう思ったように。

登場人物
主人公:鈴木翔太
:32才。職業はイタリアンレストランのコック。誠実で優しい人柄で、コックとしての腕もあるので周囲からは慕われている。家庭においても育児に積極的な頼れる父親。日葵のことを溺愛しているが、彼女が生まれる前は、男の子が欲しいと思っていた。
 
 
娘:鈴木日葵
:二歳児。年相応に未熟でヤンチャ。若干言葉の覚えが悪い。寝つきがよく、育てやすい子と言われており、翔太にもよくなついている。
 
作品の狙いと売り
:新型コロナが蔓延する世情を反映させ、人々の心情を抉り出すようなストーリーラインとすることで、共感性・没頭感・話題性を強める。『衝撃の問題作。貴方なら、どうしますか?』『人間の闇を見る覚悟はありますか?』といった煽情的かつダークな作品としてのバズりを狙う。
 
:読後感が悪い「暗黒女子」のようなイヤミス的要素と、超自然の存在が現実にあったらどうなるか?というデスノート的思考実験の要素を含む。
 
:家族愛を裏のテーマとして、泣ける描写も随所に挟む。

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