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【ソシガヤ格闘記・第15朝】郵便配達を現代に置き換えたい。(事例調査③)

こんにちは。初めまして。
慶應義塾大学メディアデザイン研究科修士2年、
休学中の吉田凌太(よしだりょうた)です。

移動やケアについて調べていると、やはり移動体験をどのように作っていくかが大切になると改めて感じる。ある種、居場所自体を移動空間に作るのも無理はない話である。

イヤホン型脳波計測器「XHOLOS(エクゾロス)」を開発する株式会社CyberneXがパナソニックのモビリティ照明部門とタッグを組み、光演出が人間の脳に与える影響について実証実験を行なっていた。記事を拝見すると、「航空機を模した環境で被験者にXHOLOSを装着してもらい、複数の照明コンテンツを見ていただくという実証実験。コンテンツ毎にα波とβ波の割合について有意性のある違いが見られ、「光の演出で人の感情に影響を与えられる可能性がある」ということは明らかになったとのこと。

マルチモーダルな情報再現度がより上がっていく2024年。車内空間だけでなく、移動空間も別のコンテクストを持ちうるのは楽しみである。生体データとか医療データとかの紐付けは現段階でどこまでできるのかはわからないが、もしかしたら入ってくるかもしれない。

ついこの間もいすゞが、ティアフォーと業務提携して、自動運転レベル4の実証実験をしてたのを思い出す。すでに自動運転事業を展開するBOLDLYは、茨城県境町や羽田イノベーションシティ、北海道上士幌町、愛知県日進市などで自動運転バスを社会実装し、毎日運行しているから完全に目新しくはない。車内から降りるまでの時間の微妙なずれや、ダッシュで走ってきたお客さんへの配慮をどう組み込むかは見どころである。

祖師谷の話に戻ろう。

祖師谷の街は南北に長く、バスだけでは辿り着けない交通不便地区が存在する。買い物に関しては、自転車で商店街を通り抜けて、駅前のスーパーで購入してかえるといった手間が存在する。その問題を配慮し、まちせんの方では、年一程度でバスを貸し切り、経堂での出張買い物会を開催している。が、当たり前だけど、それじゃ足りない。生活していけない。

循環バスも途中で成城方面(西方向)に流れてしまい、祖師谷地区の最北部は非常にアクセスが悪い。歩行器や車椅子を使用して移動する方にとってはタチが悪い。代替して誰かが買う、配達トラックの余剰スペースに商品を置かせてもらうといった手段もありうる。ただそれも継続して、収益や人的リソース共に持続しないと意味がない。必要と思った時に手に入る、これをどう設計するかが生活のしやすさに直結する。

移動や配達手段を解決することで、色々な可能性を作れるのではないだろうか。教育の時間としても移動時間を活用できる。祖師谷駅から少し北上すると、祖師谷公園も構えている。祖師谷公園では、地域住民による非営利団体ウルトラキッズ応援団さんが毎月1回程度、自然と共に自由に遊ぶ子どもの遊び場を開催している。

それ以外にも祖師谷では、駅から離れたところで面白い活動が多く展開されている。でも、そこにアクセスするまでの距離を感じる。その距離感がぐっと近くなれば、居場所の選択肢は色々広がるかもしれない。一つ大きな解決策となるのかもしれない。

かつて自分もプール教室に通っていた際に、バスで乗せてもらって通ったものである。あの時間は友達と話す時間で、時間がゆっくり流れていて楽しかった。あの豊かさこそ、移動時間の醍醐味である。

話が変わるが、バングラデシュでは、半数以上の子どもたちが幼稚園や保育園を経ず、直接小学校に入学する現状がある。現地NGOのIHF (It’s Humanity Foundation)は、恵まれない子どもたちに初等教育や医療サービスを無償提供し、貧困をなくし、安全な未来を創造することを目標に活動する。地理的・経済的に教育から疎外されがちな子どもたちのために、バスを使った移動式学校を運営することで、幼稚園や学校に通うことのできなかった子どもたちへ教育を届けている。

バスで学校を運営することによるメリットは、アクセスの悪い地域で授業を行うことができる点である。例えば、午前中に1つの地域で授業を行った後、バスで移動し、午後は他の地域で授業をすることができるのです。チャコール校は、先生3名とスタッフ1名で運営され、ダッカ市内の3か所を回って約100名の子どもたちに授業を行っています。残念ながら、現在はコロナ禍のため移動は制限し、1か所のみで午前のクラス、午後のクラスと分けて運営しています。
  同校のさらにユニークな点は、バングラデシュ政府がデジタル教育を推進していることを受け、デジタル教育に力を入れている点です。子どもたちはタブレットやスマートテレビなどの機器を使いながら、オンラインの教材に触れています。IHFへの寄付により学費は無料で、先生たちはボランティアでデジタル教育の訓練を受け、子どもたちに教えている。

記事より引用

移動時間は可能性にあふれている。アクセスできない人、そもそも外に出たくない人、外に出られない人などもたくさんいる。その中でこちら側から機会提供、歩み寄っていくといったアクションも必要である。そのために移動手段は欠かせない気がする。かつてアメリカでの地域社会では、ポストマンが情報と情報、情報と人の結び目を担っていたと描写されることもある。

時代が変わり、その位置を誰がやるのか、もしくは何が彩るのか。
検討の余地がある。

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