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商いには、たましいの灯がある

いま、京都の観光業はバブってる。インバウンドバブル。

定宿が一泊25万というのでビビって、別のホテルを検討した。

一度泊まったTを調べたらそこも25万、隣にくっついてるCは高いとはいえ、まだマシだったので予約した。失敗だった。

フロントは接客を捨ててる。
チェックアウトマシンが大きな顔して居座ってる。
笑顔一つない。
電話出ない。
アメニティはビジネスホテルみたいに、エレベーター前の棚から自分で選んで部屋まで持っていくシステム。

唯一、ぼくの窓口になってくれた若い女性フロントスタッフがマトモだったが、彼女はきっとすぐ辞めるだろう。周囲のプロ意識の無さにがっかりして。

ホテルに限らず。

レストランはどこも満杯で、客を店の前に並ばせるのが当たり前。
笑顔ない。

タクシー、乗車拒否。スーツケース客の立ってる場所(七条バス停)からして行き先はJR京都駅。短い距離、行ってられるか。

そんな中、慰めになったのは、以前からよく行く古い食堂。

お世辞にもきれいとはいえない外観。いやむしろ古すぎて、玄関ドア開けるの、かなり勇気いる。

あんかけうどん 380円
中華そば 550円

どちらも絶品。中華そばはお葱が効いていて、なんとも幸せなおそば体験。

あんかけは何といってもあんのお出汁。うどんはあんとケンカしない柔らかさ。

奥さんと時々交換しながら、完食しました。なんともいえない幸せと満足感。

これで930円。千円いかないのに驚いた。30円と千円札渡したら、100円玉返ってきて、なんだか申し訳ない。

先客が若いわかいカップル。女の子は和装、男の子は真っ黒のマニキュアしてて。食べ終わり、350円ずつ出し合って、店出た。「ごちそうさまでした」ちゃんと言って。

ぼくたちが食べている最中、今度は標準語のカップルが来て、肉カレーうどん大と普通を頼んだ。

店内、古いが、古いのと汚いのとは違う。清潔。
メニューが新しいのは、このご時世、やむを得ず値上げしたからだろう。
値上げして、これ。

商いには、たましいの灯があると思う。

外部環境が強い風となって、灯が消えてしまいそう。

それでも、がんばって、消さないようあれこれ工夫する。

この店は、創業時のたましいの灯は
「美味しいうどん・そばで近所の人を笑顔にする」
なのかもしれない。

材料費やら何やら値上げラッシュ、そして環境はインバウンドバブルだ。

それらの強い風が吹いたとしても、だからこそ

「うちのたましいの灯って何だっけ?」

と自問し、「美味しさと価格を保つ」。

そんな中読んだユング自伝、シンクロニシティ感じた。

ユングが夢を見る。
どこか、見知らぬ場所。
強風にあらがってゆっくりと苦しい前進を続けている。
深い靄(もや)があたり一面。
ユングは手で今にも消えそうな小さな灯を囲んでる。
すべてはこの小さな灯を保てるかどうかにかかっている。
不意に、背後にとてつもなく大きな黒い人影が襲ってきた。
こわいが、でも、どんな危険を冒してでもこの灯だけは消してはならない。守らねばならない。風の中で。

これはまさに食堂で感じた「商いのたましいの灯」だ。

勉強になります。

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