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可愛いなあ、だからいいなあ

CNNはここのところほぼ24時間、イスラエルを報道している。

ぼくもイスラエル、気になる。「遠い国の出来事」とは思えないんだよね。

ホテルのクラブフロアのテレビ。CNN流しっぱなし。

見てた。

と、背中で画面が遮られた。ホテルマン。

端っこでついさっきまでアメリカ人らしきゲストがノートPCリモートミーティングやってて、終えたのだろう、彼の飲んでいたグラスを片し、持ってきたようだ。

なぜか、テレビモニタの下が、片付けた食器の置き場になってる。
それはいいのだが、後ろにいるゲスト(ぼくたち)が見てるわけで、ぼくたちはずっと片したグラスと一緒にCNNを見なければならない(笑)
Hamas(ハマス)だのGaza(ガザ)だのと飲み残しグラスが混ざる。

仮に、そういうルールだったとしてもですよ、ゲスト環境への目配りができていれば、自分で食器洗い場まで持っていく、ということをやらないのかなあ。やらないのだろうなあ。細かく職務が細分化されているだろうから。
ただ、ホテル料金の高い安いは「ゲスト環境への配慮」で決まる。
ここは高い料金だけど、ゲスト環境への配慮は低い。

「自分がゲストだったら」という発想は、持てないようだ。

それより何より、彼(ホテルマン)の一番残念なところは、姿勢。背中が曲がってること。

ちゃんとしたホテルに一歩入って、気持ちがシャン、とするのは、「タテ」「直線」に出迎えられるからだ。ホテルマンという人たちは、「タテ」でなければならない。この映画を見ても、タテばかりだ。

タテが、ゲスト環境を作る。

安物ホテル、特に名は秘すが、アパなどは、「人によるタテ」をとっくの昔に捨て、代わりに器械置いてる。チェックインからアウトまで、器械で自分でやってくれ。ゲスト環境は器械とお遊び。

話は変わるが、モテのためには、タテを意識するといいよ。

モテ=タテ

と覚えましょう。

「シュッとしてる」というやん。あれって、タテなんだよね。
痩せてる必要なんかなくて、要するに、背筋が伸びているかどうか。

人は、鏡を見る。意識する。でも。他人が見てるのは、後ろだったりする。
独立自営フリーランスになって、一番気を遣っているのが、「後ろ」だ。

後ろ姿。
歩き方。
立ち方。

「佇まい」という言葉があるけど、あれは人の立つ姿勢を指します。立つ姿勢で、人となりが出てしまう。

横浜地下鉄。
会社員上司と部下(共に男性)。

「明日は10時くらいに出なきゃな。2時間ありゃ、着くだろ」

「着くと思います」

「出る前にがんばって地図プリントアウトして・・・」

「プリントアウトですね」

「コンビニでもいいちゃ、いいんだけど」

「朝ごはんですか?」

「バカ、プリントアウトだよ」

「できるんですか?」

「できるんだよ、最近は。それはそうとヤマダ、君がいっしょけんめい作ってくれた栃木の顧客資料だけどさ、ああいうの、ほのかにやらせられないの? 頼めないの?」

「頼めますけど」

「だったらさ、ほのかが忙しそうってんなら別だけど、そうじゃないじゃん。やってもらいなよ。オレだってほんとはさ、自分でデータいじって、生の動き知りたいけど、オマエとか、ほのかにやってもらってっじゃん。あれなんでかというとさ」

「頼めるからですね」

「頼めるから・・・じゃなくてさ、大事なスケジュールあるじゃん。それに使いたいから。でもほのか、あいつ、キツいからな。オレなんか、嫌われてるよ」

「嫌われる勇気、ですね」

「何だオマエ、いいこと言うじゃん。そう、嫌う勇気ね。それがオレにはある。オレ、嫌われてると思う。オマエも嫌われろ」

「はい!」

「ところで話、変わるけどさ。子どもには会えたの?」

「それがですね。弁護士さんが言うには」

「弁護士?」

「はい。ぼくのお父さんの妹のご主人が弁護士やってまして」

「ん? なんだって? お父さんの・・・遠いな」

「いえ、隣の駅に住んでまして。バスだと5つくらいです」

「それで?」

「弁護士さんが言うには、無理やり会いに行くと、相手の心象を悪くするし、ヘタすると、以降、会いに行けなくなるかもしれないと言うんです」

「それまたヘンな話だな。じゃ、なにかい、オマエが奥さん・・・前の奥さんとよく話し合って子どもに会えるようお願いするといいってか」

「そうです」

「それでどうしたの」

「なんか、彼女いわく、子どももぼくに会いたがってるみたいです」

「それはあれだな。子どもをダシにしてるだけだな。だったら奥さん、浮気なんかしなきゃいいのにな」

・・・ここで目的駅に着いてしまったので、その後の話、聞けずでした。「奥さんの浮気」! 聞きたい。もっと聞きたい。

途中まで「そりゃ、君、嫌われてるよ」とかツッコミ入れてたんだけど、「子どもに会えたの」以降、「きかせてちょうだい」モードにスイッチ・オン、ぼくと隣席の妻は耳ダンボでした。「ぼくのお父さんの妹のご主人」→おじさんで済むやろ! とか心でツッコミ入れながら。

地下鉄車内でこんな話を堂々とする背中曲がったサラリーマン二人、人間って、可愛いなあ、だからいいなあ、と思いました。ちゃん、ちゃん。

*プライバシーのため、固有名詞と内容は若干変えてます。

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