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ご注意!相続放棄できなくなるかも

父が借家で事故死しました。相続人は私一人です。父には借金がある一方、ガラクタしか持っていないことは分かっているため、相続放棄をしたいと思っています。大家さんからは、家具の撤去と部屋の明け渡しを求められているのですが、それに応じても、相続放棄をするにあたって問題は生じないでしょうか?
【相続対策虎の巻】2021/10/20を修正

A.問題が生じる可能性がある
本来ならば、相続した借主たる地位で賃貸借契約を合意解除して部屋を明け渡すところですが、相続放棄をすると借主たる地位を相続することもないので、それはできなくなります。
一方で、単純承認とみなされる処分行為は、売却といった法律行為だけではなく、相続財産を損壊、廃棄するといった事実行為も含まれます。相続放棄前に家具の撤去を行ってしまうと単純承認とみなされ、相続放棄できなくなってしまう可能性があります。
そこで現実的な解決方法としては、家財道具については撤去したのではなく一時的な移動や保管であって、最終的な撤去は相続放棄後に行うというようなことが考えられます。

★世戸弁護士のコメントです。
民法には,以下のような条文があります。
(法定単純承認)
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
そして,921条1号の「処分したとき」に当たらない場合として,「相続人が一旦有効に限定承認又は放棄をした後に相続財産を処分した場合(大判昭5・4・26民集9・427)」があります。


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