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腱鞘炎なめんなよ

これはおれの言葉ではない。愛する奥様の言葉。今日は快晴。湿気も少なくてお掃除日和らしく、朝から布団を干すように指示された。おれは最近両手首に違和感があり、普段の生活はまあまあ出来るのだが、特に手のひらに対して横に荷重が掛かると激痛が走る。放っておきたくもないのだが、医者に行ってもどうせ湿布渡されて終わりだろうと思い特に何もしていなかった。多分一ヶ月以上改善していない。布団を持ち上げることは何とか出来るので、そおっと布団を干しながら手首痛の話を奥様にしてみた。返答はこうだった。
「そもそも貴方は在宅とか趣味の音楽?だか何だか知らないけど家でもパソコンに向かってばかりで、同じ体勢で作業してばかり。腱鞘炎はその場所を酷使すると治らないんだから、ちゃんと休ませた方がいい。キーボードや楽器ばかり使ってるからでしょ。自覚が足りない。しばらくやめなさい。腱鞘炎なめんなよ」

でた。この「なめんなよ」口調の時は彼女が本気で注意しようという意思と感情的な憤りが含まれており、きっと愛情も含まれているに違いないのでおれはまず逆らわないようにしている。過去にはこのパターンで「腰痛なめんなよ」「雨なめんなよ」など数々の家訓を残しており、いずれも同時に厳しいペナルティが課されたことも記憶に新しい。今日は家の用事があるため、雲一つない秋晴れの日に一人で留守番することになっている。おれからキーボードを取ったら何が残るのだろう。とぼんやり考えながらスマホをいじっている。