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サバイバル弁当争奪戦

かくかくしかじか有って、今週は上層部会議に出ております。
去年の今頃は鬼ヶ島で、現場の土埃に咽びながら汗をかいていたのが懐かしい。

新社屋の高層階にある、部屋をぶち抜いただだっ広い会議室は照明を落としてプロジェクターに折れ線グラフを延々と表示しながら、ああでもないこうでもないと解析しては、ボスの顔色を伺い、そこでボスが一言二言のたまうお言葉に対して満場一致で「御意!」と唱えるのが慣わしなのだ。

人数の倍くらい用意してある懐石弁当は、全部機械が作ったんじゃないかと言わんばかりの画一感があったが、現場の弁当とは違って高級だった。牛肉とか入ってた。
40分の昼休みのうちにそれをガツガツ喰って、缶コーヒー買ってタバコを吹かして、ロビー活動して戻ってこなければならない。

とにかく、この数日は重要な決定事項が目白押しなので油断出来ない。

だが、えらい退屈だ。

このカイシャも人数が増えたものだ。
おれと似たように、各部門からのし上がった奴らが一同に会していた。
みんな、どうしてここに呼ばれたかを語りたがる奴らばかり。
議論は脱線しまくりながら数日間続いた。
例えば、現場から上がってきた情報を管理職が丹念に端末に落としたら巨大なデータベースが出来たのだが、巨大過ぎてうまく扱えない。欲しい情報を探すのにまた別なスキルが要求される。だから人を雇おうか?いやいやそろそろAIに任せたらどうか?
みたいなやつだ。
そんなメルヘンな雰囲気になったところで、ボスが言った。
「巷でハラスメントという言葉がよく聞かれるようになったが、ストレスの無い社会など存在しない。だから俺は認めないね。新しい事を始めるにはパワーが必要だし、俺はお前たちに頑張れと言うしかない。無理するなとは言うが、勝ちに行くには無理も必要かもしれない。ビジネスは勝ってこそ。2番じゃダメなんだ。わかるか。だから頑張れ。タマ取ってこい!」
「御意!」

会議は終わった。次の会議のためのテーマが決まった。
管理職とは部下を管理するだけじゃなくて、自分もサイボーグのように監視下に置かれてしまうことが分かった。
まずはこの新しい環境に慣れながら、来るべき嵐に備えた方がいい。
糞が糞たる所以まで周知しなくてもよろしい。おれたちが分かっていれば良いことなのだ。
あとはどう生き残るかだけだ。