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愚弄張りますか?

人間関係というのは所詮、偶然が引き起こした確率的な組み合わせであって、必然とか運命とかいうのは後付けで念押しをするためのパワーワードのようなものだと思っている。

日本において海外と関わる事は一大事。海を渡らなきゃいけないし、言葉も全然違う。その上で成果を出すというのは、余程の戦略があって知識も語学力も人間力も満ち溢れた人間でなくてはならないはずだろう。そう思っていたのだが、何かの偶然で色々足りないおれは巻き込まれてしまった。

アゲイン、サラリーマンとはロールプレイング。生まれた時からサラリーマンになると決めていた人はそう居ないだろう。スタート時には一応キャラを選んで始めるのだが、途中で違う職種に興味が湧く場合もある。上手く転職できたなら、一刻も早くその肩書きに合う振る舞いをすべきなのだ。

一旦グローバル事業に巻き込まれてしまうと組織内では「そっち側の奴」と認定されるらしく、隠れキリシタンのような目で見られたりする。
「お前はいいよな、ちょっと社長に気に入られて英語喋るからって会社の金で飛行機乗って、美味いもん食って、テキトーに仕事して、遊んで帰って来るんだろ?いいよなあ」
こういう問いには丁寧にこう答える事にしている。

「そうですよー。おれが仕事する訳ないじゃないですかー。酒もうまいしオンナも綺麗だしめっちゃ楽しいですよー。今度一緒に行きましょうよーww」
向こうはどうせ嫌味を言いたいだけなのでどうせ会話にならない。どう答えても状況は変わらないので、なるべくその場が面白くなるように嘘八百に演出している。
感情は全く入れず、中身では全く別のことを考えている。エネルギーが勿体無いからだ。この経験はきっと無駄にはならない。

国内に居て要職に就き、なんの思い入れも無い書類に毎日ハンコを押して偉そうな口を聞いている方がどれだけ楽だろうか。そう思う事もよくある。

結局「英語が出来る」に求められる事は実はとても大きい。海外の同僚、クライアント、要人と話すにはそれなりの礼儀と知識が伴われなければならないので英語だけ出来るあほは要らない。電話会議、海外出張、そして専門知識やコスト意識、更に炎上案件であればその火消し、社内営業、早朝ロビー活動、喫煙所での情報交換、接待、二軒目、もしくはアジトに戻って頑張り屋さんの部下との深夜サービス残業…。英語案件というだけで、通常はチームでやるような仕事が全部回ってくる。だって私英語分かんないからヨロシクと。英語が出来るをみんな何だと思っているのか。神か何かですか。睡眠も許さないとばかりな。どんだけ想像力に乏しいお花畑なガラパコスなのか。昔から何も変わっていないのは上層部が同じ言い訳をして逃げてきたから。歴史は続く。これまでもそうだったのだが改めてゾッとする。

読者各位におかれても、グローバルに働く事をもし夢見るのであれば、組織選びは慎重に。本当の意味でグローバルなのは外資系か、既に海外展開を済ませている日本の屈指の規模の企業くらいだろう。おれのようにハズレを引くと唯一の存在にはなれるけどしぬよマジで。

今回の案件は前回の鬼ヶ島の数倍の規模。ビジネス的にはかなり美味しいのだが、問題だらけでガッツリ炎上してから丸投げされたのでいきなり集中砲火を浴びる事になってしまった。一応想定内ではあったがなかなかキツかった。出来ないなら受けなきゃ良かったのに。

喫煙所でキュウリを食べながら次の作戦を考えているのだが、せっかく来たので違う視点からのアイデアをぶつけている。みんな保守的すぎ。不味くて食えない料理が並んだちゃぶ台を処理出来ない。醤油をかければ食えるんじゃね?とか言ってる。何ならおれはお偉いさんや関係者全員の前でちゃぶ台返しをやってみたい。何がダメ、あいつが悪い、というホワイジャパニーズビーポーな雰囲気になっているのを、これなら出来る、こんなのどうかな、に変えていく。長期的な成功のために目の前の短期的なスケジュールを一旦全部踏み倒す。一回作り直そうよ全部。そのために呼んだんでしょおれを。たぶん、ちゃぶ台返しは歓迎される。次のちゃぶ台が出来上がるまで、ホワイジャパニーズパーピーの好奇の目の中、おれはにこやかに責任を負わされるのだろう。それで関係が壊れるならいっそ無理だし、そのせいでおれがクビになっても仕事なんて探せば他に幾らでもあるのだ。
そしてもっときゅうりををおれに。