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【GWの読書にいかがですか?】初心に返るときに読む小説:『トップ・レフト』

「へー、こんな本があるんだ」の第2回です。



今回紹介するのは『トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て』です。

2005年発売、古い小説です。約20年前ですね。

読んだことある人も多いでしょうから、知っている人は読み飛ばして下さい。

特に、金融関係者はこの本を一度は読んだことがあるのではないでしょうか。それくらい、金融業界では有名な小説だと思います。
ちなみに、私は元銀行員です。

著者の黒木亮さんは、早稲田大学時代にマラソンの瀬古さんと一緒に駅伝を走っていたそうです。

金融小説というと『オレたちバブル入行組(半沢直樹)』をイメージするかもしれません。
ただ、銀行員からすると「まぁ、そうだけどさ……」と読んでいて感じるでしょう。

例えば、半沢直樹はドラマとしてはいいと思います。
ただ、銀行を舞台にしているけれど、年功序列の日本企業の派閥争いがメインです。
ジャンルがヒューマンドラマであって、金融の話ではないんです。

ドラマ化された同じ作者の『花咲舞が黙ってない』はテラー出身の内部監査室の話です。こちらは、オジサン銀行員には共感ができる部分がほとんどありません。

念のために言っておくと、決して、『オレたちバブル入行組(半沢直樹)』が悪いと言いたい訳ではありません。
何が言いたいかというと、金融小説としては内容が浅くて、スケールが小さいのです。

この点、『トップ・レフト』は違います。
20~30年前の銀行の話ですから、FAXが出てきたりしてちょっと古いです。
若い人が読めば違和感のある記載もあるかもしれません。
でも、銀行員からすれば「あー、そうそう」みたいな共感できる部分が多いです。

少し補足すると『トップ・レフト』はシンジケートローン(協調融資、シローン)の話です。

タイトルのトップ・レフト(Top left)とは案件実行時に作成するツームストーン(Tombstone、墓石)の左上に表示される金融機関のことです。
つまり、シローンにおける主幹事の金融機関、マンデーテッド・リード・アレンジャー(MLA)を意味します。

銀行員といってもいろんな職種があります。
支店勤務の個人営業・法人営業の担当者、そしてこの本に登場するようなシンジケートローンの担当者などです。

投資銀行業務の担当者はトップ・レフト(MLA)を獲得するために頑張っています。

「銀行員は何しているか分からない」という人もいると思います。

この本を読めば銀行員が何をしているかイメージできると思います。

銀行には一日中、電話とメールのやり取りしている人がフロアにゴロゴロいます。
遊んでいるわけではなく、その人たちはリアルで一度も会ったことない人とやり取りしています。

この本を読めば同僚、上司や部下、競合の金融機関がどういう人たちなのかが分かります。クソみたいな奴もいます。

銀行員は「硬い」「細かい」「面倒くさい」と思われているでしょう。
性悪説で物事を考えるからです。
この本を読めば、なぜそういう思考回路になるのかが分かると思います。

私は仕事が嫌になった時にこの本を読むようにしています。
初心に返ることができて、「まあ、もう一回やってみるかー!」という気分になります。

GWの読書にいかがですか?
物語としても面白いですから、ご興味ある人はぜひ読んで下さい。


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