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不動産投資における信託の役割(その2)

プロ投資家が不動産に投資する場合、現物不動産(土地・建物)を直接保有するのではなく、信託を利用して信託受益権を保有する場合があります。
普通の不動産投資家は「信託」に馴染みがないでしょう。でも、信託は使い方によってメリットがあります。
今回は不動産投資における「信託」の役割について説明しようと思います。

2. 信託と税金


不動産投資において信託を利用するのは税金(不動産流通税)が理由です。
不動産を売却する場合、実際に不動産の現物を譲渡するのが一般的です。不動産を信託している場合、信託受益権を譲渡すれば現物の譲渡と同じ効果が得られます。
図表1で委託者と受益者が一致していました。信託受益権を譲渡すると図表2のように委託者と受益者が異なります。

【図表2:委託者と受益者が異なるケース】

不動産の移転時には不動産流通税(登録免許税、不動産取得税)が発生します。
信託した不動産は所有権の信託に登録免許税(本則は0.4%)が掛かります。しかし、売却しても所有者は信託銀行等のままなので不動産流通税はほぼ掛かりません(登録免許税が1筆1000円のみ)。比較したのが図表3です。

【図表3:不動産流通税の比較】

*軽減税率を加味しない場合として記載。2026年3月31日までの登録免許税は、土地1.5%、所有権の信託(土地)0.3%とされている。

10億円の物件(建物)を現物で取得すると、6千万円の不動産流通税が掛かります(軽減税率を加味しない場合)。信託受益権を取得するとほぼゼロです。

信託されている不動産を取得する際に、わざわざ信託契約を解除して物件を購入する個人・法人がいます。
不動産の現物を所有したい気持ちは分かるのですが、どちらが有利なのかを検討した方が良いと思います。

<その1はこちら>

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なお、不動産信託について詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にして下さい。


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