ほどけるひとくち・ショートトーク

男・森崎 女・羽衣子

ナレーション「ひとくち。という言葉から発想される口は、何かサイズ感というより距離感な気がするわけでして、つまり大きく口を開けてケーキをたくさん頬張るとそれは愛の大きさだ。なんて言われる、あれです」
羽衣子「ねえ、」
森崎「ん? 」
羽衣子「ひとくちちょうだいって言わないと気づかない森崎さん」
森崎「ああ、食べたかったのね、ケーキ」
羽衣子「へえ、ケーキ好きなんだあ、俺お酒飲めないけど甘いの大好きでさ、今度ケーキ食べに行かない?って口説いたの君だけど」
森崎「羽衣子が、珍しくケーキ頼まないから、なんかあるのかと思うじゃん、」
羽衣子「ひとくちが食べたかったの」
森崎「ダイエット?」
羽衣子「違う、もーいい」
森崎「ほら、わかったから、あげるから、口開けて、あーん」
羽衣子「こんな大きくくれても食べられないよ! 」
森崎「いーから!ガブっと! 」
羽衣子「君の愛情は、もう少し小さかった気がするな」
森崎「違うよ、羽衣子のひとくちが、気まぐれすぎたんだよ」
羽衣子「……あーーんっ」
森崎「おお!!いい食べっぷりだね…鼻にクリームついてるよ」
羽衣子「…なんか…味とか良くわからないね、こんなにたくさん食べても」
森崎「美味しいって言おうよ、俺らの、ファーストバイトなんだから」
羽衣子「やだ、それ。どっちかっていうと、ファイナルバイトでしょ」
森崎「なんだよそれ…これ美味いじゃん、すごいトロける口で」
羽衣子「今日は、なんか、笑える」
森崎「…けっこうやり直せるんじゃない?」
羽衣子「今日みたいに、ひとくちくらいな感じだから、許せるんだよ」
森崎「なんだよ、ひとくちって」
羽衣子「わかるわけないじゃん。お互いのひとくちがわからなかったから、別れるんだよ」
森崎「…おれは結構楽しかったよ」
羽衣子「そう、私は、もういいかな」
森崎「…俺も、お腹いっぱいだわ」
羽衣子「一人でそれだけ食べればね、さよなら、ナイスファイナルバイト」

ものをつくるのが好きで今はツールが揃っていてなんでも作りやすいから楽な時代だなぁって感謝しておりますジョブス。