計算には検算を

ヤマトホールディングスの子会社が引越代金の過大請求をしていたというニュースが今週ありました。本件、購買部門を長く見つめてきた者としては、身につまされる話でもありました。

世の中には都度見積という取引形態があります。取引を始めるにあたっては料金表(引越であれば荷物の量と移動距離ごとによっていくらになるかを定めた表)を取り決め、実際にいくらの取引になるかは現場で取引対象の数量や内容を決めて金額を決めるというものです。取引するたびに見積書が発行されるのが特徴で、本来であれば見積金額が妥当であるか確認した上で取引成立となります。

引越など物流業務に関しては移動距離は後から確認できるものの、荷物の量や中身に関してはその場でないと分かりません。そのため、見積金額が妥当かどうかは見積作業を行う現場で確認しないと分からないというのが実情です。今回はそれに無理があったことが元凶だと私は考えています。

荷物の量に関し、おなじみ宅配便だとどう確認するでしょうか。荷物をコンビニや宅配事業者の窓口に持ち込むとメジャーで縦・横・奥行き3辺の長さを測り、その合計がいくらになるかを見るのがおなじみの光景です。ヤマト運輸の場合、3辺の長さが60サイズ(60cm以内)、80サイズ(80cm以内)、100サイズ(100cm以内)などと独自基準があり、メジャーで60cm、80cmなど料金の境目のところで色を変え、どの料金を当てはめるか、測定するその場で送り主が検算しやすくなるようにしています。

一方、引越の場合、引越作業を行うより前に現地確認を行います。段ボール何箱分かは見積作業者の想像によるところが多く、妥当かどうかは分かりづらいのが実態です。そこが問題でした。

再発防止策を考えるのであれば、現地確認でいったん見積を提示するものの、実際に引越作業を行う際に、荷物の量がどうだったか、引越依頼者がチェックする表を作らないと不正は防げないでしょう。段ボール何箱分か、布団袋は何袋あったかをトラックに積み込む時、ないし積み込み終わった後に確認する検算の作業になります。

従来はそれが面倒で、引越事業者に対する信用から、検算しなくても問題なかろうと考えられてきた訳ですが、それではいけないということを暗に示しているのだろうと思います。

検算してこそ、計算は正しくなる。それを面倒がると計算が合っていなくても気づかないかもしれない。それを痛感する話だと言えましょう。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33502270X20C18A7CR8000/

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