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プロジェクトセカイたのしみ


初音ミクのゲーム『DIVA』シリーズなどで知られるセガと、スマホ音ゲー界の現行王者『ガルパ』(バンドリ)で知られるクラフトエッグが組んでプロデュースする新作スマホ音ゲー『プロジェクトセカイ』、通称プロセカ明日9/30(水)正午にいよいよリリースされます。

本noteはプロセカの紹介記事ではなく、「私はこういうオタクで、プロセカのこういうところに期待しているし、こういうところを心配している」という誰得文章です。
サービスがまだ開始されてない今のうちに色々と書き連ねておくことで、あとから感慨に浸れるという魂胆です。よろしくお願いします。





私はいちおうボカロ好きのはしくれで、3,4年ほど前のいちばんボカロ曲を聞いていた時期には好きなPについての論考もどきみたいな駄文を寄稿して即売会やKindleで売ってもらったりしていました。

また、ボカロシーンからメジャーデビューしてボカロP本人の歌唱に切り替えていく流れに「ポストボカロ」というクソ雑なラベリングをしてボコボコに叩かれ、数日間ガチで体調を崩し寝込んだこともありました。今となってはいい思い出…というか、貴重な経験をさせてもらいました。


しかし現在はTwitterのボカロ用アカウントも消し、ほとんどボカロ音楽シーンにはリスナーとして関わっていません。別にボカロ音楽や界隈を嫌いになったわけではなく、単純に興味の対象がコロコロ変わる性分であるというだけです。今年のボカロは100曲も聞いていないし、お気に入りの曲としてパッと挙げられるのは……ないかも……(ニコ動のマイリスを見返せば10曲くらいはあるはず)

ボカロリスナーにコミットしていた頃は「あまりボカロ曲を聞けていない」ことに対して自己嫌悪感や焦燥感を抱いたりもしていましたが、いまは執着が緩和され、その他の音楽と別け隔てなく気楽に付き合えているんじゃないかと思います。完全にフラットであることは「ボカロ」という言葉を知ってしまった時点で不可能ですが。

そんな遍歴なので、2020年のボカロシーンとか、ニコ動からYoutubeへのシーンの動態だとか、私に語れることは何もありません。

ですが、やはり「ボカロ」という文化にはまだ一定の愛着もとい執着が残っているのも事実です。そんななか、約1年前に「ボカロの新作ソシャゲが出る」という噂を耳にして、それ以来「プロセカ」をひそかに楽しみにしていました。プロジェクト発表会を聞いたときの第一印象は「バンドリの二番煎じ……?」でした。大ヒットしたバンドリのノウハウが、「ボカロ」というきわめて特異な文化と合致するだろうか、という心配もこのとき芽生えました。この心配は今も抱いていますし、サービス終了まで抱き続けるでしょう。それが健全です。

プロジェクト発表会のアーカイブが消えている……


次に私の音ゲー遍歴について。

私は音ゲーに明るくなく(というかゲーム全般に明るくなく)、初めてある程度入れ込んだ音ゲーは「デレステ」でした。(私は3年前にボカロリスナー界隈を去ってから、1年ほどデレマス界隈にいました。ここでも推しカップリングについての2次小説を寄稿し、コミケで売ってもらったりしました)
アイマス界隈の片隅で息をしていた1年の間に「ミリシタ」もリリースされ、こちらもほとほどにプレイしていました。真壁瑞希さんが好きです。デレの元担当アイドルはなんとなく秘密です。

そして、たしかその辺りで「ガルパ」のことも知り、ほどほどにプレイしていました。好きなボカロP、Orangestarさんの『アスノヨゾラ哨戒班』がCV.佐倉綾音さんでカバーされると発表され、盛り上がったのを覚えています。

(……ニコ動にバンドリ公式がうpしてくれたこの"歌ってみた"動画がけっこう好きだったんですが、もしかしてこれも消えた……?たしかに期間限定公開とか書いてあった気がするけど…)


私のガルパへの印象ですが、音ゲーとしてのUIというかプレイ感はデレステやミリシタより好きでした。曲に合わせてスマホをタップしていて単純に楽しい!と思えました。

しかしキャラコンテンツとしては正直、それほど刺さりませんでした。(初期に半年くらいしかプレイしていないドにわかなので、バンドリオタクの皆様におかれましてはどうか叩かないでください)
単に好みの問題でしょうが、どのキャラクターもテンプレの粋を出ないというか、「消費し易い」キャラ付けをされている……と感じてしまいました。いかにもなカップリング・関係性描写もあまり好みではありませんでした。

2017年には『バンドリ! ガールズバンドパーティ』というソシャゲがリリースされたのですが、この『ガルパ』における百合がすごい。僕は「ブシロードのくそつよ空母打撃群」と呼んでいます。

こちらのnoteでは、バンドリが「百合コンテンツで世界を獲るつもり」と絶賛されていますが、もはや陳腐化した「巨大不明感情」などのオタクタームを好んで使う百合界隈やハヤカワ百合SF特集にたいしてうっっっすらと感じる忌避感と、私がバンドリにハマれなかったことは同根であるという気がしています。


まぁ私も ✝クソデカ感情✝ に手を染めてしまいましたが……
「出来れば僕を 許さないでほしい」


「私がバンドリのキャラコンテンツにハマれなかった」という話ですが、信頼のおけそうなオタクが「バンドリのシナリオの作り込みは凄い」と呟いているのを多数観測しているので、私が浅瀬で引き返してしまっただけなのかもしれません。アインストールしてもう数年経つので、バンドリに関しても私に何か言う資格はございません。


というわけで、ボカロ好きかつ2次元キャラコンテンツ好きである私は、プロセカを、ボカロコンテンツとしても、2次元キャラコンテンツとしても非常に楽しみにしています。


ちなみに、「Project DIVA」など、初音ミク・ボカロ関係のゲームはこれまでやったことがありません。セガがボカロに対してどういう立ち位置の会社なのかもほとんど知りません。クリプトンやヤマハとよくごっちゃになります。「そんなんでボカロ好きと言えるのか?」と思われるかもしれませんが、私のようなボカロ好きは決して少なくないと思います。

ボカロ好きをものすご〜〜〜く雑に二分すると、マジミラなどの公式ライブに足繁く通ったりキャライラスト創作やコスプレなどを楽しむ「キャラ好き」と、好きなボカロPを追ったりニコ動のぼからんを見たり毎日ニコ動に投稿される全ての曲を聴いたりする曲好き」に分かれると思いますが、私は完全に後者です。

簡単に言えばボカロキャラ好きは「公式」(クリプトンやセガなど)の動向に目を光らせることが多いトップダウン型の関わりなのに対して、ボカロ曲好きはあくまで無数のボカロPやボカロ曲それぞれを愛することに注力するボトムアップ型の楽しみ方をしています。

(もちろんどちらの性質も持つひとがほとんどです。ボカロシーンはこれら2つの勢力が互いに上下から影響を及ぼし合って10年以上続いてきました。)

そして、「プロジェクトセカイ」はセガがプロデュースする、まぎれもなく前者のボカロコンテンツです。それを後者のボカロ好きである私が楽しみに思うというのはやや自己矛盾的ですが、以前のように日々ニコ動へ新曲を漁りにいく情熱が絶えたいまの私にとっては色々と「ちょうどいい」コンテンツというか、ボカロと自分を繋ぎ留める存在であるような気がしています。


先ほど「バンドリのノウハウが「ボカロ」というきわめて特異な文化と合致するか心配」と書きましたが、これはまさにボカロ文化を駆動する両輪、前者と後者の折衝・葛藤から生まれているものです。

私は、ボカロシーンの本質はアマチュア性だと思っています。「自身で歌えない、歌ってくれる人がいない作曲家がボーカリストを手にする」という最小の物語、ボカロPとボーカロイドの一方的な相互依存関係がすべての根本にあり、そこに「視聴者」という最初の他者が加わることで、デブリの海からボカロシーンは発生しました。


さきほどセガやクリプトンを「公式」と言いましたが、ある意味ではボカロシーン・ボカロコンテンツには「公式は存在しない」ともいえ、それが他のオタクコンテンツとは一線を画するところです。それと同時に、ボカロPひとりひとりが、数十万曲あるボカロ曲ひとつひとつが「公式」であるともいえます。マジカルミライのステージで踊る初音ミクも、あなたの家で一度も歌わずに眠っている初音ミクも、米津玄師の自宅のPCの中にいる初音ミクも、プロジェクトセカイの初音ミクもすべて本物です。

いま格好つけて書いたことはすべて、ボカロ好きなら全員が了解しているはずのクリシェであり、それなのに/それゆえに、われわれボカロ好きはプロセカのようなビジネスが絡んだ「公式」案件に遭遇するたびにこのクリシェにぶつかります。(ぶつかりの度合いは人それぞれですが……)

プロジェクトセカイのような音ゲーでいえば、収録曲の問題があります。もちろん既存曲ではある程度人気のあるものが選ばれるわけですが、これによってボカロシーンのアマチュア性、あるいはアンダーグラウンド性がどうしても損なわれる面があることは否めません。

プロセカでは、ボカロの音楽性をざっくり5つに分類し(バンド、アイドル、ストリート、ミュージカル、アンダーグラウンド)、それぞれに4人の高校生オリキャラで構成されるユニットが充てがわれているわけですが、1年前にプロジェクトセカイが発表されたときに「アンダーグラウンド」については少し議論が紛糾しました。

アングラをレペゼンするユニット「25時、ナイトコードで。」が歌う曲として、ねこぼーろさんの『自傷無色』や、バルーンさんの『シャルル』が確定していますが、正直言ってこれらは全然アングラな曲ではありません。「公式」に起用される人気曲の時点でオーバーグラウンドなので当たり前です。

どうも「プロジェクトセカイ」公式や、リリースを楽しみにしている若いボカロファンはアングラを「病み曲」のことだと思っているようです。ボカロのファン層的に、ヒットする曲の半数は「病み曲」でしょう。人気ボカロ曲の解釈にはとりあえず自殺とか堕胎とかメリバとかいった単語を馬鹿の一つ覚えのように叫んでいればそれっぽくなるという偏見を私は持っています。よくないですね。

ニコ動には「アンダーグラウンドボカロジャパン」なるタグがあり、当然ながら再生数・知名度が低い曲たちが集まっています。「アングラ」と称して全然アングラじゃない「病み曲」を起用するのは、こうした実際のアンダーグラウンドシーンに対して失礼であり、文化の盗用なのではないか、というわけですね。

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ただ、こう書いておいて何ですが、わたしはプロセカで「アングラ」が1つのユニットになっている設定は割と評価しています。

こちらの開発者インタビューはプロセカへの信頼感が高まるめちゃくちゃいい記事なのですが、プロデューサーの近藤氏はこう言っています。

近藤氏:
 ボーカロイドの音楽シーンを考えた時に、絶対に外せないカテゴリーがあるんです。
 ここではそれを「アンダーグラウンド」と名付けていますが、その表現自体が正しいかどうかは、いまだにちょっと迷っているところなんですけど。

この後の回答で、先ほど言ったように「アングラ≒病み曲」と近藤氏が認識していることがわかるのですが、実際にボカロ音楽で病み曲のウェイトが大きいのは事実です。そこを「絶対に外せない」として譲らないのは、音楽文化としてのボカロを、スマホゲームという枠のなかでなんとか表現しようとする信念が伝わってきます。

「アンダーグラウンドボカロジャパン」タグの曲がプロセカに収録されないのはハナから当然のことです。問題は「病み曲」カテゴリに「アングラ」と名付けてしまったことであり、そのラベリングに若干の迷い、葛藤を感じていることは引用部からわかります。プロセカを統括する近藤氏がその葛藤を抱き続けてくれるだけで、私はいちボカロ好きとして満足です。だって、もともとボカロはトップダウンとボトムアップ双方向の力学が分かちがたく結びついて存続している異様な文化なのですから、ボカロを題材にしてトップダウンで人気ソシャゲを作るぞ!と意気込んだ時点で「アングラ」問題のような食い違いは出てきて当然です。

この食い違いは、ある意味でボカロシーンの魅力を象徴していると感じます。この食い違いに葛藤を抱きつつ、「25時、ナイトコードで。」の今後に期待しています。これでプロセカが売れてニーゴ(25時、ナイトコードで。の略称)の人気が出たら、もしかしたら本当にアンダーグラウンドな曲が収録されるかもしれないじゃないですか!




Puhyunecoさんとか……

きえたい きえないで


目赤くなるさんとか……

呼吸の音が言葉と絵になって動物をなでた?


街子さんとか……

1と3だけまうセカイに疲れたみたいだから




ないか・・・


※この3曲はどれも「アンダーグラウンドボカロジャパン」タグがついている曲ではありませんが、ボカロのアングラ感を象徴する楽曲たちではあると思います。




閑話休題。

先ほど、

プロセカでは、ボカロの音楽性をざっくり5つに分類し(バンド、アイドル、ストリート、ミュージカル、アンダーグラウンド)、それぞれに4人の高校生オリキャラで構成されるユニットが充てがわれているわけですが、

とサラッと書きましたが、そもそも音楽性を根拠にしてユニットやオリジナルキャラが創られているという点も、ボカロ音楽シーンへの敬意が感じられてとても信頼できると思います。


ガルパのようなオリジナルキャラ・ユニット制を採用したことについて、近藤氏は先ほどの開発者インタビューでこう答えています。

ボーカロイドの音楽が今はもう無数にあって、単純なジャンルでは語り尽くせないので、ある程度デフォルメしてカテゴライズすることで「どこから手をつけていいのか分からない」という人にも入口として分かりやすくしよう、とか。そういう考え方からいろいろなことが決まっていった経緯があります。

プロセカの理念のひとつに、今の若い人たちがボカロを知るきっかけ・入り口として機能することを目指す、というものがあるようです。大言壮語だったり建前だったりするかもしれませんが、しかしこの理念のためにボカロ音楽ジャンルを「ある程度デフォルメしてカテゴライズすること」は理に適っていると思います。

──実際のゲームの上では、5つのカテゴライズとオリジナルの各キャラクターが、すごく結びついているように見えるのですが。でも順番としてはあくまでカテゴライズが先で、キャラクターやストーリーが後だったのですか?

近藤氏:
 そういうことです。やっぱり音楽コンテンツなので、音楽から先に決めていますね。

プロセカを「音楽コンテンツ」と言い切ってくれるの、信頼しかない……。

オリキャラばかりが前面に出て、ボカロキャラが冷遇されないか心配する向きもあるようですが、リリース後の扱いの差は置いておいて(プロセカが成功するにはオリキャラの人気をまず確立する必要があるので、オリキャラを優遇するのは当然のことだと思います)、そもそもキャラクターが創られた経緯を見てみれば、このように明らかに「ボカロ」がまず先にあって、それをソシャゲに上手く落とし込む手段として二次的に20名のオリキャラが創られたことは明らかです。だからこそ、ボカロ好きの端くれとしても、素直に彼女らオリキャラを好きになろう、応援しようと思えるわけです。
(これは私がボカロ"曲"好きだからであって、ボカロキャラ好きのなかの、更にラディカルな「ボカロ以外のキャラがボカロキャラと仲良くふるまうなんて許せない!」的な原理主義者は当然プロセカを地雷と認識するでしょう。これはもうオタクとしての宗教・矜持の違いですから仕方がありません。しかし、そのような原理主義者は切り捨ててもコンテンツに影響が出ないくらい少ない、と判断したからこそ、プロセカは今の体制でやっていくと決めたのでしょうし、それで正しいと思います。原理主義者は間違っている!という話ではなく、棲み分けは大事だということです。)


また、プロセカの「ユニットごとに"セカイ"がある」という設定も、インタビューを読めばボカロ音楽シーンと本気で向き合おうと努力した結果の産物であることがわかります。

あとはミクさんだけでなく、それぞれの楽曲ごとにも、いろんな世界がありますよね。それをやっぱり表現していかないといけない。
 そういうことを考えた時に生まれたのが、「セカイ」というアイデアなんです。いろんな「セカイ」に楽曲ごとの世界が形成されていて、そこにはその楽曲の世界に合わせたいろんなミクさんたちがいるという形にすることで、初音ミクの多様性も表現できるんじゃないか。そういった流れですね。
それだけに途中で出た案としては、カテゴリーじゃなくて楽曲ごとにセカイがある、というものまであったんです。

──なるほど。それはそれで納得できますね。

近藤氏:
 ボカロの歴史としては、それ自体はすごく正しいことなんですけど、そこまでやってしまうと今度は逆に分かりにくくなるというか、多すぎてユーザーも理解できないだろうなと。
 あとは正直、それを現実的にやれるのか、みたいな話があって。それで今の形に落ち着きました。

「それぞれの楽曲ごとに世界があることを表現していかなきゃいけない」という言葉にスタンディングオベーションを贈りたいです。これは他のどの音楽シーンにも増して、ボカロ音楽シーンの特徴であると思います。なぜなら、ボカロはニコニコ動画という動画サイトで育ってきたのですから。ボカロ曲は単なる「曲」ではありません。そこにはMVという「動画」があり、そして視聴者の「コメント」があります。曲-動画-コメント という三位一体の構図をひっくるめて「ボカロ曲」と言っていいと思います。(もちろんアルバム描き下ろし曲やSoundCloud限定の曲など、例外もあります。)

例えば「メルト」という曲は、ひとつの曲であると同時に、あの、ひとつのURLに紐付けられたあの動画ページ、あの""場所""という意味合いが強いのではないでしょうか。(もっと言えば、歌ってみた等の膨大な派生動画も含めたネットワーク、コミュニティとしての「メルト」という側面も大きいでしょう)

そうした「場」をプロセカ風に言い換えたのが「セカイ」なのだと、このインタビューを読んで腑に落ちました。「カテゴリーじゃなくて楽曲ごとにセカイがある」案まで出ていた、という発言がそれを裏付けます。それがいちばんボカロ文化を正確に表しているとは思いますが、流石にそれでは「プロセカ」をひとつのコンテンツとして成り立たせることがキツい。世界観が崩壊してしまいます。だから、妥協して、ボカロ音楽を5つのカテゴリーに分けて、カテゴリーごとに「セカイ」がある、という設定にしたんですね。

これはたしかに「妥協」かもしれません。しかし、私はこの妥協を、この上なく尊い、賛辞されるべき妥協だと思います。ボカロというボトムアップの側面が強い文化に本気で向き合って、トップダウンでひとつのコンテンツを立ち上げようとする挑戦と努力の結晶が、この妥協には表れているからです。近藤さん、妥協してくれてありがとうございます。ボカロ文化に本気で向き合ってくれて本当にありがとうございます。プロセカを遊べることを楽しみにしています。


なんだか"締めっぽい"文章になってしまいましたが、まだまだダラダラとこのnoteは続きます。(さすがに長くね?……知るか!こちとら自分のために書いとるんじゃい!)


オリジナルキャラ・ユニットについて、ボカロ好きとしてではなく、2次元キャラコンテンツ好きとしても色々と思うところはあります。

そもそも、2次元キャラコンテンツのソシャゲにおいて「ユニット」制が最適解になったのはいつ頃のことなのでしょうか。デレマスやミリマス(もっと言えば本家765)はどれもデフォルトユニット制ではありません。アイマスで言えば「Side M」や今をときめく「シャニマス」といった比較的最近新しいコンテンツはどれもユニット制です。ラブライブは詳しくありませんが、1期や2期のなかで更にユニットに分かれている感じでは多分ないと思います。あんスタのような女性向けコンテンツはもっと分かりません。

しかし、なんと言ってもユニット制コンテンツで大ヒットしたのはバンドリでしょう。ユニット内でのカップリング描写や、いい感じにエモいストーリーの文脈バフでオタクに「尊い……」と言わせる作戦が大いに功を奏したということでしょう。先ほどのハヤカワ百合noteも間違ったことは言っていません。(ただ私が気に入らないだけ)

最近だとヒプノシスマイクもユニット制ですね。もうすぐリリースされる電音部はヒプマイリスペクトを隠そうともしません。

このnoteでキャラコンテンツにおけるユニット制の歴史や利点について論じるつもりはありませんが、プロセカがこうした流れのなかでユニット制をとったというのもまた間違っていないと思います。「ボカロ文化をうまく表現するためのユニット制」と「こうしたほうが最近のオタクには受けが良いから」は両立します。

個人的には、プロセカがこうした流れの単なる一つではなく、ユニット制を代表し、先頭に立ってオタクシーンを引っ張っていくような巨大なコンテンツに成長することを願ってやみません。


ユニット制以外にも、プロセカにはバンドリ・ガルパから引き継いだと思われるキャラコンテンツ要素がたくさんあります。例えば「ユニットを越えた血縁関係」がある点。ガルパでは氷川姉妹や宇田川姉妹のことですね。

血縁関係(姉妹関係)というのは、オタクにとっては「幼馴染」と並ぶ王道のカップリング属性です。ガルパの特徴は、こうした姉妹キャラを同じバンドではなく別々のバンドに所属させた、という点です。同じユニットということなら、Side Mの双子兄弟ユニット「W」など、前例は枚挙にいとまがないでしょう。

なぜガルパは姉妹を別々のバンドに配したのか?について詳しく論じる気はありませんが、「ユニット内での関係性」と「ユニットを越境した関係性」をあえて別々にすることで、関係性の総数を増やそうとしたのではないか、という説はすぐに思いつきます。つまり、兄弟・姉妹キャラを同じユニットにしてしまうと、せっかく2つも生まれる余地のある関係が1つに重なってしまって勿体ない!ということです。(当然、2つが重なったら重なったで、1つの"濃い"関係性ができるという利点もありますが。)とりあえずキャラを線で結んで関係性を作っておけばちょろいオタク共は喜んで食いつく、というわけですね。

ガルパの関係性をまとめてくれているブログ記事がありました。

こうしたガルパのノウハウを引き継いで、プロセカにも血縁関係が幾つかあります。ただ、プロセカがガルパと決定的に違うのは、男女混合であるということです。20人のオリキャラのうち、女子が15人、男子が4人、性別"?"が1人という構成になっています。

性別"?"の暁山瑞希さん

プロセカには3つの血縁関係があります。

姉妹
 日野森雫(モモジャン)- 日野森志歩(レオニ)

兄妹
 天馬司(ワンダショ)- 天馬咲希(レオニ)

姉弟
 東雲絵名(ニーゴ)- 東雲彰人(ビビバス)

どれもユニットを越境しており、5ユニット全てに血縁関係のあるキャラが所属していることになります。また、血縁関係も「姉妹」「兄妹」「姉弟」と、「兄弟」を除く全ての男女の組み合わせが網羅されているのもポイントです。このあたりは、ガルパの「とにかく関係性の数・種類を増やす」という方針をさらにアップデートさせたような趣を感じます。女子しかいないガルパでは姉妹関係しか成立させられなかったのですから。


ガルパには血縁関係以外にも関係性が用意されています。それは「通う学校の種類」です。これも地味に革新的な設定のような気がします。普通は「みんな同じ学校に通っている」設定にしちゃいそうなところを、あえて別々の学校に通わせます。しかも、ロゼリアやパスパレはユニット内でも学校を越境しています。

「通う学校が複数ある」という設定から、かえって「同じ学校に通っている」ことの特別感が増し、そこで関係性が作られる……という逆転の発想はなかなか凄いと思います。しかも、同じ学校のなかでも「クラス分け」という更にミクロなカテゴリーがあり、関係性オタクは妄想し放題です。そりゃあ売れるわガルパ。
(というか、進級してたんですね……サザエさん時空じゃなかったのか……。リリース時に高3がいない点はプロセカも同じなので、プロセカも進級イベントを見据えていることは間違いないでしょう)

こうしたガルパの「学校・クラス」設定もまた、プロセカに引き継がれています。

主人公ユニット「Leo/need」は、"幼馴染バンドユニット"というキャッチコピーが示すとおりガルパのAfterglowに対応するので、4人全員が同じ高校です。ちなみにレオニもアフグロも「アスノヨゾラ哨戒班」を歌っています。この曲はOrangestar氏が留学する際に日本の学校の友達との再会を願って作った曲なので、この文脈からも両ユニットのカバーはとても美しいと思います。(まぁ本家は打ち込み音源なので、バンドがカバーするとキミノヨゾラ哨戒班になってしまうという微笑ましい食い違いがいっつも生じますが……)

Rockwellさん(「ヒバナ」や「乙女解剖」、「セカイ」の編曲者)が携わっているのがとても楽しみです。いつかIAさんの原曲も収録されてほしいですが……


閑話休題。学校まわりの設定でガルパと大きく違うのは、やはりプロセカには男子キャラがいることから、神山高校という共学の高校が存在する点。ガルパではどれも女子校だったと思います。

また、東雲絵名さんが神山高校の夜間定時制に、宵崎奏さんが通信制高校に通っているという設定もガルパとの大きな違いでしょう。どちらもニーゴのキャラなので、ユニットストーリーが楽しみですね……。



さて、ここまでなんだかんだでプロセカのユニットやキャラを紹介してきましたが、リリース前の現時点で私が気になっているユニット・キャラについて語らせてください。いいよ。ありがとう。

ユニット単位でもっとも気になるのはビビバスこと「Vivid BAD SQUAD」です。

「『伝説』を超えるために集った、実力派ストリートユニット」というキャッチコピーの通り、ストリート感あふれるファッションで治安悪めな曲を歌います。

私がビビバスに惹かれた最大の原因はこちら。

野郎2人のダンス格好良……!!!冬弥のステップすき……。ボーカルも格好良…………!!!!低音のハモリすき……と、初見で衝撃を受けてから何度も見返しています。

「フラジール」は4年前の投稿日から聞いていますが、ここだけの話、ぬゆりさんの曲が刺さったことはありませんでした。オケは格好いいんだけど、GUMIさんの小さめで素朴な感じの調声がどうもピンとこなくて……

ということで、彼らのカバーで初めて「フラジールめっちゃいい曲やん!」と気付かされてしまいました。ボカロ好きは歌ってみた等のカバーに拒否感を覚えるひとも多く、私もわりとそっちのタイプですが、落ちるときには落ちるもんです。

そして、カバーであっても一度好きになってしまえば原曲の良さにも気付いてしまうのがボカロ好きの性です。今では「このGUMIさんの無機質な声が良いんだよなぁ……ボーカルが勿体ないなんて言う奴は何も分かってねえ」といけしゃあしゃあつぶやいています。

「フラジール」はビビバスの男子2人とレンくんによるカバー・MVでしたが、ユニット4人全員によるMVももちろんあります。

は〜〜Gigaさん最高か〜〜〜〜?????

そもそもGiga曲は「劣等上等」をすでにビビバスにカバーされているんですよね。同じ作曲者の既存曲と描き下ろし曲を両方味わえるなんて実に贅沢ですが、同時に「劣等上等」との差別化もしなければいけないハードルが生じます。

そこで、ノリノリな「劣等上等」とは対比させる形で、この「Ready Steady」は少しチルい雰囲気の曲になっています。杏→こはね→ミクの3連女性ボーカルのくだりは特に最高です。他の2次元キャラコンテンツでもそうですが、私は曲がきっかけでキャラに落ちることが多いので、歌唱力の高いビビバスが気になるのもやむなしといったところでしょう。(あと、ビビバスのミクさんのデザインがいちばん好きです。かっこかわいい)


これまでソシャゲでは女子キャラオンリーのものしかほとんど触ってこなかったので、男女混合ユニットはどうしても気になります。百合も好きですが、岡田麿里のオタクとしては男女関係も好きなので、ビビバスの男女4人の関係性がどう描かれるのか非常に楽しみです。


プロセカのもうひとつの男女混合ユニットが、ワンダショこと「ワンダーランズ×ショウタイム」です。

先ほど「レオニはガルパでいったらアフグロ」と書きましたが、どう考えても「ワンダショはガルパでいったらハロハピ」でしょう。きぐるみキャラ(寧々ロボ・ミッシェル)といい、自己陶酔系紫髪長身キャラ(類・薫)といい、IQが消失した掛け声(「わんだほーい!」・「ハッピー・ラッキー・スマイル・イェーイ!」)といい、ハロハピっぽさが半端ありません。

ただし、類似点が多ければ多いほど、相違点に注目する価値が生まれます。やはり最大の違いは男女混合であること(あと5人じゃなくて4人であること)。

ハロハピは弦巻こころというぶっ飛んだキャラクターが先頭に立って進むユニットであるのに対し、ワンダショの中心人物は司とえむのどちらなのか、現段階ではよくわかりません。(いちおうリーダーは司のようですが)
むしろ、ワンマンチームというよりは、司とえむという元気キャラ2人の掛け合いによって進んでいくユニットである気がしていて楽しみです。

てか「セカはじ」いい曲すぎない?!?!?

サビのコーラスずるいでしょ・・・ピノキオピー渾身の泣きメロに泣く


あと、私は「対比」のオタクなので、ガルパとプロセカの対比だけでなく、プロセカの2つの男女混合ユニット、ビビバスとワンダショの対比にも注目しています。

プロセカは各ユニット4人ですが、そのなかでもなんとなく2人ずつで「ペア」が形作られています。2020年はカップリングでのキャラ消費の全盛期ですからね。
(1ユニット4人にしたのも、ガルパの5人だとペアでひとり余ってしまう反省を踏まえてのことなのかな……とか邪推してしまいます)

ビビバス内のペア構成は、男子同士・女子同士でわかれています。
彰人-冬弥ペアと、杏-こはねペアです。これは、そもそもVivid BAD SQUADというユニットが、もともとあった男子2人の「BAD DOGS」と女子2人の「Vivids」という2ユニットの合併で結成された経緯に強く表れています。
(ストリート育ちの杏が物静かなこはねをストリートへ導くという構図は、女子校生ラップ漫画『Change!』を想起します。ビビバスのオタクは必読です)

いっぽうワンダショは「男女」ペアが2組となっているようです。
先ほど述べたように、司-えむのペアが元気にワンダショを引っ張りつつ、類-寧々というペアには「幼馴染」という鉄板属性が付いています。


こうしたビビバスとワンダショのユニット内の関係性の違いも、「いろいろな関係性を用意する」というガルパ譲りの方針の進化形という気がします。そして、もちろん今述べたペア以外の関係性にも注目したいです。

ビビバスの物静かペアいいよね……ほほえましい……


ビビバスとワンダショに言及しましたが、ストーリーがいちばん気になるのはやっぱりニーゴ(25時、ナイトコードで。)です。

近藤氏:
 現存する全年齢向けキャラクターコンテンツの中では、ギリギリのところまで踏み込めたかなという気はしますね。対象年齢を引き上げてしまえば、いくらでもいけるとは思うんですけど。
 ただ、これが受け入れてもらえるかどうかは、実際に出してみて、ユーザーさんに読んでもらうしかないという感じなので。

「全年齢向けのギリギリ」のストーリー、楽しみです……!!!

ニーゴといえば、つい数日前に「命に嫌われている。」のミク×奏カバーがオリジナル2DMVで公開されました。

「命に嫌われている。」名曲〜〜〜〜〜!

知ってたけど。

元MVをリスペクトした形でのカバー、すでにMAXだったプロセカへの信頼が天井を突き抜けてとどまるところを知らない。贅沢な「VOCALOIDと歌ってみた」じゃん…!

ニコ動にある「VOCALOIDと歌ってみた」はボカロと人間のデュエットです。(有名どころはみきとP×リンちゃんの「ロキ」とか)

しかし、このミク×奏のデュエットはそれともまた微妙に違うんですよね。奏は人間の声を持っていますが、ミクさんと同じ2次元のキャラクターです。キャラクターとしてはミクも奏も同じ存在。ボーカリストとしてはミクは機械音声で奏は生声で異なる存在。

「命のある人間の奏と、命のないボカロのミクが『命に嫌われている。』をデュエットするのエモい……!」という見方も当然ありますが、奏だって2次元キャラクターという面では「命がない」とも言えます。人間、ボカロ、2次元キャラ……これらの関係性についての研究も、プロセカを通して盛んになるといいですね。
(これってVtuberを2次元キャラと実在の人間の狭間に置く議論と近いものがあるかも)


あと、こないだのリリース直前生放送で公開された新情報として、クリプトン以外のボカロによる原曲も収録されることがあると分かり、優勝しました。

このリストには入っていませんが、IAさんがOKだとわかったのでいつかアスノヨゾラの原曲を……お願いします……!!!



残りのユニットはレオニ(Leo/need)とモモジャン(MORE MORE JUMP!)ですね。いつの間に全ユニット言及する流れに……
ガルパで言えばそれぞれアフグロ、パスパレに対応するのでしょう。

レオニで注目しているのはバンド演奏形式による3DMVです。

テオ、名曲でしかねえ……

(それはそう)


ネルドラPのMMD PVで育ったオタクなので、3Dキャラが楽器を演奏しているリアリティに弱いんですよね・・・・・・

あにまさ式は原点にして頂点


高校生の繊細なすれ違いを描いたというレオニのシナリオも密かに気になっています。傍からみたらしょーもないことでウジウジ悩んでいる人間が好きなので。


最後にモモジャンですが、今のところ個人的な注目度で言ったらいちばん低いユニットであるのは事実です。ただ、キャラクターでは桃井愛莉さんが気になっています。

オタクこういうキャラ好きでしょ好きだよ

いちばん注目度が低いということは、これからいちばん跳ねる可能性もあるということなので、シナリオに期待しています。「最初っからモモジャン推しとけば良かったァーーー!」って俺たちに思わせてくれ……ぎゃふんと……



というか、全ユニット、全キャラクターのシナリオに注目しています。

正直言って、今のところプロセカへの懸念材料・不安要素はシナリオだけとさえ言えます。散々書いてきたようにボカロ文化へのリスペクトを反映した様々な機能・企画には文句のつけようがないし、3DMVの出来も素晴らしいし、声優さんもみんな歌が上手そうだし……(音ゲー要素については下手なのでもともとたいして関心がありません)

これでシナリオがいまいちだったらとても悲しいので、どうか……どうか……!
プロセカのシナリオを担当する桝井愛さんについては情報がほとんどないので、よくも悪くも未知数です。

何回も引用させてもらっている、シナリオライター桝井さんとプロデューサー近藤さんのインタビュー記事を再掲しておきます。必読。



他にもオリキャラによるソロ歌唱ver.が実装されたり、目玉機能のひとつ「バーチャルライブ」だったり、プロセカについて語りたいことはたくさんありますが、全部を語り終わる前にリリースが始まってしまうのでここらへんで切り上げます。

これだけ多方面に充実した内容でコケたらコケたで面白いし(笑い事ではない)、そうはならないとは信じているので。

とにかく、プロセカ楽しみ!!!明日からみんなで遊ぼう!!!!!ってことで。

それでは。








私のボカロリスナーとしての"名刺"です。


これまで書いてきたボカロ関係のnoteです。




【リリース後追記】
プロセカとっても楽しんでます。各ユニットのストーリーについて、読んだものから感想を書いているのでもしよければお読みください。


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