日本海⑦
日本海が、世界の海の縮図だということを以前書きました。世界の海が約2000年かけて循環しているのに対して、日本海では、100年から200年単位で循環しているそうです。
この循環があるおかげで底層域まで酸素が届き、多種多様の生き物が育み、豊かな海が形成されています。循環を生み出すのが、シベリア高気圧でした。大きなエネルギーをもったこの高気圧は、同時に冷気も持ち込みます。この冷気で冷やされた海では、水分が冷やされ氷となって、そのまわりに塩分濃度の高い海水が形成されます。密度が高くなった海水は、海底へと沈み込んで行きます。このとき、酸素が同時に運ばれていくのでした。
これと同じ仕組みで世界の海も循環しているので、もし、日本海で異常がみつかれば、それは、いずれ世界の海でも起こりうると予想されます。
そして、日本海では、まさに地球温暖化の影響が世界の海に先駆けて起こっているようです。
底層水中の酸素濃度は、1977年以降減り続け、なんと30年で10%も減少しているそうです。このまま減り続けると300年後にはゼロになってしまう。
おそらく、循環に必要な冷気が足りないのでしょう。この冷気はシベリア高気圧がもたらします。北極圏の温暖化が、日本海にも影響を及ぼしているのでしょう。
地球温暖化が叫び始められたころ、誰ものがそれほど大きな変化が起きるとは思っていなかったと思います。しかし、最近の極端な気候を見る限り、温暖化の影響は深刻なものになりつつあることを認識せざるを得ません。
今後の日本海の動向に注目するのと同時に、私たちに出来ることは何かをもう一度考え直すべきだとあらためて思った次第です。
参考文献 蒲生俊敬著『日本海』(ブルーバックス)
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