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北米アニメ研究所5|韓国マンガは全頁フルカラー!? 中国、フランス、韓国。日本と他国のマンガの違い。

本社を香港に構えながら、開発はカナダ、デザインはロンドン等、世界中のネットワークを使ってサービスの展開を行なう企業、KLKTN(コレクション)。そんなKLKTNが発信する本noteは「北米アニメ研究所」と題し、グローバル市場での事業展開の中で築いたネットワークを生かして得た知見をもとに、北米に住むアニメファンの実態に迫るインタビューシリーズを展開します。これまで把握が難しかった海外のアニメファンの実態を、「統計情報」ではなく「エピソード」を交えてお伝えすることで、是非多くの国内のアニメ業界関係者の皆様には、グローバル市場における「日本のアニメ」の新たな価値を掘り起こし、新サービス・プロダクトを検討するきっかけを作っていただければと考えています。

シリーズ5回目を迎えた今回は、マギル大学にあるアニ研(アニメクラブ)McGill Students' Anime Club(MSAC)に所属するメンバーにお話を伺いました。MUは、フランス語圏として知られるカナダのケベック州モントリオールにある国内でも有数の名門校。これまでに12名のノーベル賞受賞者や、142名のローズ奨学金受賞者を輩出しています。

「Maclean's」が発表するカナダ国内ランキングでは16年連続で1位を獲得。そのほかにも、「Times Higher Education」が発表した世界大学ランキング(2024年版)で49位にランクインするなど、常にランキング上位を誇っています。
今回はMSACのメンバーに、マンガ作品と言語の関係性や、日本と海外アニメ作品の違いについて、語っていただきました。(前回の記事はこちら

Basile(バジル)
マギル大学3年生。メカニックエンジニア専攻
好きなアニメ:「ジョジョの奇妙な冒険」「DEVILMAN crybaby」「不滅のあなたへ」

Kevin(ケビン)
マギル大学3年生。コンピューターサイエンス専攻
好きなアニメ:「ノーゲーム・ノーライフ」「ぐらんぶる」「頭文字D」

Pasta(パスタ)
マギル大学4年生。コンピューター工学専攻
好きなアニメ:「メイドインアビス」「サニーボーイ」「少女終末旅行」


Yulan(ユラン)
マギル大学4年生。コンピューターサイエンス/生物学専攻。
好きなアニメ:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「パラダイス・キス」「Mo Dao Zu Shi」

何語で描かれたマンガを買うの?


Yulan:若い頃は、日本語のマンガを結構集めていたよ。でも日本語は読めないし、最近はどうしても読みたいものだけを厳選して、英語版を買ってる。英語版のマンガって1冊12ドルくらいして、結構高いんだよね。
まずオンラインで読んでみて、どうしても欲しかったら特に好きな巻だけを買うって感じかな。

Yulanの本棚には、昔購入した日本語のマンガが大切に保管されている。

モントリオールにはフランス語とのバイリンガルも多いから、書店でもフランス語版マンガの品ぞろえは豊富?


Pasta:今はフランス語版のマンガも結構出版されているし、選択肢は増えてるよね。

Kevin:確かに、英語版とフランス語版と両方で売られていることも多いかな。

Yulan:英語に比べたらそこまでではないけど、売れ筋の作品はひと通りフランス語版も発売されている印象があるな。
でも、書店にもよるよね。例えば大手書店のインディゴ(カナダの人気書店チェーン。インディゴ傘下に入り店名を統一する前はチャプターズとして知られた)は英語を話すお客さんがメイン。フランス語版のマンガを豊富に扱っている書店は市内にもいくつかあるから、欲しい人はそっちに行くかな。フランス人のアニメファン層って、実はすごく大きいのだよね

Basileはフランス出身だけど、フランスでアニメイベントに参加したことはある?

Basile:1回だけあるよ。ほかの国のアニメイベントに行き尽くしてるわけじゃないから比較が難しいけど、盛り上がってた!

Basileのマンガコレクションの中には、フランス語版のものも並ぶ。

日本と他国のアニメとの違いは?

Yulan:まず、声優の演じ方が違うと思う。うまく言葉で説明できないけど、中国のものと比較した場合、表現方法ひとつとっても全然違うから。
あとはストーリーや構成にも違いが現れるよね。日本以外の国の作品では、決め台詞が途中で変わってびっくりするようなこともあったし!日本では文化的に、作中の決め台詞は一度決まったら普通は後から変わったりしないでしょう?制作する国が違うと、こうも違いが出てくるのかって驚くよ。 
Basileは知ってると思うけど「ワクフ: 偉大なる冒険の旅」っていうフランスのアニメ作品があるんだよね。 

Basile:知ってるよ!

Yulan:あれも、フランスの文化が色濃く出てると思う。マンガで読んでも、すぐに日本のものではないって分かるくらいにね。登場人物同士のかかわり方とか、ストーリー展開とか、いろんなところで日本作品との違いが見て取れる。
どちらが良い悪いということはないんだけど、国の違いによって発生する特徴は確実にあると思うな。そして、良い作品っていうのは、いろんな国にあるとも思う!

Basile:それは僕も同感!フランス革命前夜を舞台にした日本のマンガで「第3のギデオン」っていうのがあるんだけどさ。フランスで1970〜80年代にかけて放映されていた子供向けテレビアニメの「ギデオン」に比べると、ジョークひとつとっても表現の仕方が全然違うんだ。Yulanの言う通りで、どちらが優れてるわけでも劣っているわけでもないんだけど、ただただその違いに面白みを感じる。

Kevin:僕も、中国のアニメを見て同じようなことを思ったな。中国にはかなり長い歴史があるからね。日本の「ドラゴンボール」の原作となったのもすごく古い作品だし、そこからいくつものバージョンが生み出されてきた。
主に中国アニメには2つのスタイルがあると思うんだよね。
ひとつめは、戦闘シーンに重きを置いたもの。ストーリーとしては王道をいくようなベーシックなものが多いけど、中には何の筋書きもなくってただ戦っているだけっていう変わり種もある。僕も好きなんだけど、「雾山五行 Fog Hill of Five Elements」とかね。例えるなら、「NARUTO-ナルト-」の戦闘シーンだけを切り取ってくっつけたみたいな感じ。そういうのが好きなファンもいるんだよ。
もうひとつの流派は、日本のアニメスタイルに感化されたもの。「愛神巧克力進行時(愛神チョコレーティング)」っていうのがあるんだけど、これは「日本のラブコメの中国語版なのかな?」っていう印象さえ受けた。
僕の場合はスタイルで選ぶというよりは、中国アニメが好きな友達に勧められたものを見ることが多いかな。「Mo Dao Zu Shi (魔道祖師)」は特に良かった。中でも最初のシーズンが好きなんだけど、ストーリーと戦闘シーンとの両面から中国文化の良さが引き出されていてすごく面白かったよ!

Pasta:韓国のマンガを少し読んだことがあるけど、全体的に韓国マンガの方が真面目。日本アニメみたいにジョークを飛ばすようなふざけたシーンもあまり出てこないし、ひとつひとつの物事をいちいち深刻に受け止めるんだなって感じたよ。

Yulan:私もBLものの韓国マンガは好きで、結構読んだよ。日本のBLとは一味違うんだけど、ジェンダーに対する考えの違いから表現方法や型が全然変わってくるんだなって分かるし、内容も盛りだくさんで面白いんだよね。「日本のマンガより韓国マンガの方が好き」っていうファンもまわりには多い。
あと、韓国マンガはフルカラーなのも嬉しいな。作品中の可愛い洋服や装飾もよく見えて気分が上がるし、購入する時のポイントになる。
日本のものが悪いって言っているわけではないんだ。繰り返しになるけど違いを語っているだけで、どちらが良い悪いということでもないの。

Kevin:今気が付いたけど、韓国の作品のウェブフォーマットは、携帯電話仕様で縦型にスクロールダウンしていくものが多いね。バスなどの公共交通機関でウェブトゥーン(韓国発のデジタルマンガ)を読む時は、この仕様の方が断然読みやすいんだ。詳細を見るのにいちいちズームしなくて済むし。ウェブトゥーンではない従来のオンラインマンガを読む時って、わざわざ携帯を横向きにするんだけど、それでも絵が小さくて見づらいんだよね。だからウェブトゥーン以外のマンガを読むなら紙媒体の方がストレスフリーだなって思う。
ちなみにオンラインでマンガを読む時に使うプラットフォームは特に決まっていなくて、読みたい作品を検索して出てきたものを利用するよ!
 


次回は、新作情報の入手法や、試写会で上映する作品の選び方、MSACのメンバーのリアルなアニメ視聴法に迫ります。12月後半に公開予定です。こちらもどうぞ、お楽しみに!

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