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十三階の女(双葉文庫)吉川英梨

 シリーズ第二弾を読んだが、面白かったため、シリーズ最初を読んだ。これも面白い。小説とはいえ、主人公をここまで追い込めるのはすごいなと。向き合うだけで、精神的にも肉体的にも負担が大きいのではと思ってしまう。人を憎み、そして、殺す。ニュースやドラマで悲惨な事件が、日々流れる。耳にすると慣れてしまいがちだが、人の死と向き合うということは、簡単なことではない。家族の病気でさえそうなのだから、人を殺めるとなると、想像できないくらいの心理、身体的な負荷がかかるのであろう。快楽殺人という言葉もあるが、決して、それによって、救われることはなく、ただただ、深い闇に落ちていくだけで、その闇でしか生きられないということなのではないだろうか。小説の世界では、あっさりと人が死ぬことがある。同じ死でも、小説によって、その死に対する感じ方は異なる。それは、殺し方ということではなく、どれだけ、作家が、物語であり、人の死に向き合っているかによるのではと思っている。そういう意味で、このシリーズは、面白くてどんどん読み進むが、めくるスピードは反比例に、気持ちは、ゆっくりと深く沈んでいく。主人公と犯人とのやり取り、普通の生き方には戻れない本能と理性の戦い。単なる警察小説であり、エンターテイメントなのかもしれない。だけど、そこに、自分なりの解釈をしたくなる。そうさせてくれる数少ないシリーズになった。



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