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aikoのライブに行って「あぁ知ってしまったんだ」と思った話。

aikoのライブに行った。
多分2〜3年ぶりくらい。そしてたぶん今回で、通算2桁に達しただろうか。

生涯忘れたくない経験を味わったので、書き残すことにした。

aikoの音楽との出会い

高校1年の終わりに「二人」という曲を聴いて以来、こんなにハマったアーティストはいないんじゃないかというくらい、狂ったようにハマった

まっすぐで伸びやかな声、繊細な歌詞、エモいコード進行、そして唯一無二のメロディセンス。
全部、全部刺さった。

初めて自分でチケットを取った、LoveLikePop12福島公演。
福島で開催したのはその時が初めてだったらしい。

何かの運命だと思った。
それくらいには好きだった。

浪人生のときも、学生のときも、社会人になってからも、ずっとそう。
何年かに一度の数時間だけれど、たしかにaikoのライブは自分の人生の一部になっていた。

座席の場所を見て、息が止まりそうになる

そして月日は流れ、2024年2月17日。
横浜アリーナに着いて、電子チケットで座席の場所を確認した。

センター席 52列 25番。

「…近くね?…というか実質最前列じゃね?」

少し解説を加えたい。

横浜アリーナのセンター席はつまるところ1階席の結構後ろの方なのだが、その日の会場はステージから65メートルほど花道が垂直に伸びており、自分の席はその花道の真横だった。

引用元:【ライブレポート】aiko、<LLP vol.17.5>横浜アリーナ公演で見せた“一対一”の思い
https://www.barks.jp/news/?id=1000109713

つまり、aikoが歩いてきて花道の先の方まできたとき、そこは最前列となる。

大変なことになった。

それだけはどうにか理解できた。

蘇る、あのときの記憶


ライブが始まるまでは本当に気が気ではなかった。
だがそれ以上に衝撃を受けたのは、開演直後。

流れるイントロとともに鮮明に思い出した。
いや、忘れるわけがない。

1曲目の「飛行機」は、2009年10月12日、自分が初めて行ったライブでも1曲目だったのだ。
(ちなみにこの日付もふと思い出し、「本当にこの日だったかな」と思って調べたら間違いなかった。我ながら恐ろしい。)

https://www.youtube.com/watch?v=L1D16scoJ60


およそ15年ぶりに聴いた「飛行機」。
文脈はやや違うだろうが、「あなたもあたしも少しずつ大人になって」という歌詞に、またもや何かを感じずにはいられなかった。

ライブの曲目が進み、照明や映像技術、生のオケによって増幅されたエンターテイメントの魔力に圧倒されたのも束の間。

その時はやってきた。

吸い込まれそうな瞬間

各時代の曲を次々に歌いつなぐメドレーとともに、aikoがこちらに歩いてくる。


いや、待ってくれ。

頼むから、来ないでほしい。

無理無理無理…。

(もちろん声には出さなかったが、さながらただの限界オタクだった。笑)


そして。







目の前に、たしかに、aikoはいた。






その時間は、一瞬にも永遠にも感じられた。
様々な感情と情報量に、脳がパンクしそうになった。

(『呪術廻戦』に登場する最強の呪術師・五条悟の「無量空処」はきっとこんな感じなのだろう)

そして同時に、知ってしまった。

aikoは想像してたよりもずっと小柄で、自分たちと変わらない普通の人間なんだと感じた。

自分と同じように花道のすぐ横の席にいた観客は、「本物だ〜!!」 「かわいい〜!!」 なんて思ったりするのだろう。

自分の中に湧き上がった思いは、そう言った類のものとは全く違った。

「aiko、長生きしてくれ…」

(これを書いている今でも、なんでそんなことを思ったのか全く見当がつかない。笑)

あなたに出逢う前の何でもなかった 自分に戻れるわけが

aikoの楽曲に「青空」というものがある。

一度の許されない恋の過ち、それにまつわる複雑な心境を歌った、aikoの中でも大人なラブソングだ。

超えてはいけない一線を超えてしまったことを象徴するように、冒頭のフレーズは、その後二度と出てくることはない。

まるでその曲の構成と同じように、この日を境に昔のようなaikoへの向き合い方はできなくなるような気がした。

フィールドが違うだけで、aikoも日々「音楽」という仕事と戦う、一人の大人なのだと思った。

一見、華やかで自由な仕事のようにも思える。
ただ、実際のところ99%以上は、苦難の連続なのだろう。

多様化するエンタメの中で生き残るべく、常に新たな作品を生み出し続けなければならない。

歳を重ねても、声量や声域、表現力を維持しなければならない。

そしてライブ本番に向けて万全のコンディションを作らねばならない。

数々のプレッシャーを乗り越え、そんなことは微塵も感じさせず、笑顔全開でaikoは何度も目の前を駆け抜けていった。

これまで「一人のアーティストへの憧憬」だった思いは、この日から「同じ社会を生きる人生の大先輩への尊敬の念」に変わった。

終演後、しばらく上を見続けることしかできなかった。

横浜アリーナには屋根があり、そもそも時間も夜遅くではあるのだが、ボーッとした目の先には歪んだ青い空が見えたような気がした。


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