見出し画像

『MOTHER2』を完走した。

 先日、switchオンラインの特典付きプランに加入し、MOTHER2を完走した。スマブラのキャラとして登場するネスやリュカに対しての興味自体は十年ほど前からあったのだが……

過去を振り返らない気質の私は、
「MOTHERシリーズのバーチャルコンソール版、やりてーんだけど親にDSへの入金止められたからな~」
とか、
「友達にゲームボーイとカセット借りたけど、画面が小さくて観にくいし、借りたの壊したりしたら怖いんだよな……」
とかなんとか理由をつけ、当シリーズを遊んでこなかったのである。

が、しかし。
2022年5月7日にニコニコ動画にて投稿され、そのインパクトのある内容と歌詞、そして何より、FFXのワッカという絶妙なキャラクターを題材にし、ニコニコ動画というプラットフォームの域を超えてインターネットを熱狂させた音MAD、『おとわっか』。
……の派生作品である『ぷにぷにワッカさん』シリーズの影響を受け、ようやく私はMOTHER2の世界を歩き始めたのである。

 きっかけとなった動画の内容を簡単に説明すると、無印MOTHERのフィールドテーマ曲、『pollyanna』に合わせてワッカが平和な草原を歌い歩くだけの動画だ。
何を言ってるのかわからない?俺もだよ。

 はっきり言って最悪の出会いだ。
真っ当な既プレイ勢から『お前何なんだよ!』と罵られても仕方がない。
だから…ええと…その……オレが悪かった。
申し訳ありませんでした!

……とはいえ、
「遊んでこなかった」といっても、完全に所見だったわけではない。
数年前に借りたゲームボーイ版で3つ目の町までは進めていたので、それまでのストーリーの流れは知っていたことに加え、一時期の私は、
『プレイしたことのないゲームを、さも遊んだかのように振る舞う』
のが趣味だったことがあり、(今現在はそのような愚劣極まる最低な行為はしていない)

「主人公の隣の家には“ポーキー”とかいう汚いノックをするデブがいる」
「ギーグ、トラウマがヤバい」
「“おとのいし“に8つのメロディーを集める旅をする」

というMOTHER2に関する有名な話は、なんとなく知っていた。

だから、
『皆が言うほどに感動もしないし、もう既に拗らせた大人になってしまったこの私が、ファミコン時代の少年少女による冒険物語なんかに感情移入なんてするわけがない』
……と、たかを括っていた。

そんなこと全然なかった。
この展開、シナリオ、予想外なんだが!?いや、おもしれー!!」
「MOTHERのシステム斬新すぎるだろ!!!」
「ここのBGM、“良”いな……」

などと終始感動しながらプレイした。
それはもう即オチ2コマもビックリするぐらいの速さで感動した。

 もし万が一、何かの間違いでこの記事を読み、MOTHER2というゲームに興味を持った方がいる、という想定をしておく。
なぜならその方がモチベーションが上がるから。

なので、
物語に大きく関わるネタバレはしないようにあらすじを話していこう。


【MOTHER2 ギーグの逆襲】とは……

バットと超能力、そして誰にも負けないガッツと勇気を武器に戦う、赤いぼうしの主人公、ネス。
ちょっと危険な超能力とドラッグストアに売っているフライパンで宇宙人を叩きのめすリボンの少女、ポーラ。
持ち前の勤勉さと天才的な頭脳で、敵の能力や弱点を見破ったり、彼にしか扱えないマシンで火力も補助もそつなくこなすサイエンス少年、ジェフ。
ネスより少し年上で、来るべき時に備えて修行を積んだくせに限定された期間にしか登場しない敵からごく低確立でドロップする武器しか装備できないとある国の寡黙なべんぱつ王子、プー。

と、いった生まれも育ちも全く違う四人が運命に導かれ、
悪い大人達を持ち前の超能力で懲らしめたり……は、せずに大人しくワイロを支払って田舎のバンドマン五人衆(たまに六人)を救ったり、変な言語で話す奇妙な一頭身の生き物とコーヒーを飲んでこれまでの旅路を振り返ったり、瞬間移動に失敗してボッ、という音と共に黒焦げになったり。
そんな、少年少女による、奇妙で愉快で、少し切ない旅の物語である。

そんなMOTHER2に登場するキャラクター達は、ウィットに富んだジョークを言ったり言わなかったり、冒険に役立つちょっとメタ的な発言をしたりしなかったり。
みんなみんな、発言の一つどれをとっても、どこか人間臭く。
物語に関わらないような街を歩くだけの名もなきモブキャラ達にも、感情移入ができてしまうのである。

というわけで、
私がMOTHER2の中でもトップクラスに好きなテキストの例を一つだけ挙げよう。

「私、『野菜スープの怪人』の話を……しようと思ったんだけど。
ゲームに関係あると思われると困るんでやめとくわ。
そういう余計なことをあんまり話してると
大事なことを聞かない癖がついちゃうでしょ。
でもね、ほんとにいろんな人とこまめに話をすることが大事よ。
同じ人でも状況によって話す事が変わるんだから。」

最初の町のベーカリーにて佇むおば様からは、このようなセリフを聞くことができるのだが、

もう一度彼女に話しかけると、
「あんたやっぱりもう一回話し掛けてくれたわね。
…と、いうぐあいにこまめに話すことが大事なのよ。」

そして三回目以降は、
そうそう!そんなふうにこまめにね。」

と、いった具合にプレイヤーが彼女に何度も話し掛ける前提でテキストが用意されているのだ。

このテキスト、とにかく美しい。
まず開口一番に『野菜スープの怪人』という目を引く発言を、
『ゲームに関係ない』
というこれまた目を引くメタ的な発言で撤回し、
『話を聞き飛ばす癖は良くない』
と諭してから、
『街の人とはこまめに話をしたがいい』
という結論を出す。

数回ボタンを押せば消えてしまう、あまりにも儚い文字列の中に、
『起・承・転・結』
の形が為されているのである。
あまりにも美しい。芸術作品か?

もう一度聞こうとしても、もう二度は聞けないという点もとても良い。
なぜなら、多少読み飛ばしても、最期の一文さえ覚えていれば、
「次からはちゃんと話を聞こう」と思えるからだ。

考え抜かれて組み立てられた数行の文章により、
「街の人からは重要なヒントがもらえるかもしれないから、よく話を聞いておいた方がいい」

と、義務的に伝えられるよりも、格段に心に響くのである。

『糸井重里』という超偉大なコピーライターだからこそ成せる、
言葉のイリュージョン、というやつかもしれない……。


さてと。
そんな魔法のような印象力を誇るテキストの話はここまでにしよう。

MOTHER2を完走した私には語りたい話題がもう一つある。
それは……

『最悪の隣人』とも称される男、
ポーキーについて。

スマブラXのストーリーモード『亜空の使者』にも
ボスとして登場する金髪の太っちょ、ポーキー。
MOTHERシリーズをプレイしたことは無いけれど、ポーキーは知っている。
という方も多いのではないだろうか?

私も例に漏れず、MOTHER作品を遊ぶよりも先に、
ポーキーの悪名高さと末路を知っていたクチであったため、
ネスの冒険が始まるその瞬間からポーキーの事を敵対視していた。

確かに、作中にてポーキーは、彼の弟を除く家族全員が、
『嫌な隣人家族』として描写されており、旅先で確認できる彼の言動や痕跡から見ても、“とても嫌なヤツ”という認識に間違いは無かったのだが……

MOTHER2の物語を完走した今だからこそ、
私は『ポーキー』という一人の少年に対する認識を、『単なるネスの敵役』とかいう雑な括りで片付けてしまう事に、複雑な感情を抱いてしまうのだ。

確かにコイツは、よりにもよって観光地の看板に、わざわざネスだけに向けた落書きを残すし、砂の町の木陰には汚い痕跡を残していく。
極めつけに、辺境の心優しい部族の一人に向かって、お子様には教えられないくらい高度な暴言を吐き捨てるようなヤツだ。
それにドアをノックする音も汚い。噂には聞いていたが、想像以上に汚い。

……それでも、彼を取り巻く環境を鑑みると、どうしても、ポーキーの事を生まれながらの悪党だとは思えない。
もし、もしかすれば、の話ではあるが、周囲の環境さえ違えば、ネスとポーキーの立場が逆だった可能性だって、充分にあったのだから。

そういう意味も込めて、彼は『最悪の隣人』なのかもしれない……

ネスが行く先々でつまらない悪行を働いているポーキーだが、いいところが何一つ無い……というのは、ネスの視点を通した私たちの主観であって、彼にも何かしら取り柄や得意な分野はあったはず。
だって実際……
というのは、実際に本編をプレイして確認して欲しい。

…………………………。
……………。
……。

う~ん……困った。
MOTHER2の感動した点、良いところについて語ろうにも、重大なネタバレを避けて話をする以上、
これより先に踏み込めなくてもどかしい。
それに、音楽性だとか、飽きないシナリオ展開だとかの話をする前に、ポーキーとネスの関係性に感情移入しすぎてしまう。

と、そうこう言ってるうちに、
私の搾りカスのような語彙力が底をつきそうなので、
感想の方はこの辺りで終わりにしようと思う。

しかし、これだけは忘れないでほしい。
本当に面白いゲームなのだ、MOTHER2というゲームは。
だから君もぜひプレイしてみてくれよ、切実に。
頼むからさあ。


と、いうわけで……


わたしのきじは ここまでのようだな。
マザー2を しゅうかいするさいに、
この けいけんをやくにたてるよ。

わたしが マザー2を 
プレイしたときに
おぼえたおもしろい わざを
さいごにみせるよ。

PK サヨナラ! だ!

また いつか あおう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?