2009年のボカロ界隈を振り返る。一般流通したCDを年表にして。
まとめました。御覧ください。
いかがですか。見覚えはありますか。誰のCDかわかりますか。
VOCALOID製品や非ボカロCD、ゲームやBDソフトなども混じってるのですが、参考のため載せました。数えてみると、2009年に販売された一般流通ボカロCDは19枚でしょうか。OSTER projectの『みくのかんづめ』は2008年発売なのですが、私が初めて手に触れたボカロCDという贔屓で載せてます。
年表はGoogleスライドで作っております。ニコニコ大百科のVOCALOID界の出来事の一覧を見ながら、Amazon検索で画像を取得し、ちまちま貼り付けていきました。抜け・漏れがあったらご指摘お願い致します。
眺めてみると、2周年の誕生日である8/31付近でCDの数が爆発的に増加していますね。春頃のsupercellやdorikoなどのビッグネームのCDや初のボカロコンピの反響が良好だったのも追い風になっていそうです。
EXIT TUNESは特に精力的で、コンピCDだけで4枚、他にもデッドボールP、ラマーズP、azuma、164のメジャーデビューにも携わっています。2011年頃のEXIT TUNESはラバストやキーホルダーがランダム封入されていて商魂逞しいなと思ったものですが、この頃はオマケ商法は静かでしたね。
一般的なアルバムCDは3000円くらいの相場ですが、ボカロCDは2000円との低価格で当時学生の私のお財布にも優しかったです。ただ、同日に数枚同時発売されるようになってきて、全て買って聴くのは難しくなってました。いま振り返ってみて「そういえば持ってないCDあるな!」と気づく。
収録曲についてもまとめてみました。Amazonの商品説明に載ってないこともあり、初音ミクwikiを駆使してチマチマやりましたよ。
人気曲はあちらこちらで収録されてますね。コンピ常連は個人CDのお声がかかるといった感じでしょうか。
ミクミク一色なのですが、黒うさPが巡音ルカをfeatしたアルバムを出しています。初音ミクでも『カンタレラ』などヒット曲はあったのですが、面白い試みでしたね。ただ、ボカロ界隈外ではボーカロイド=初音ミクの認知度のため、反響はいまいちだったような記憶がありますが、はてさて。稀代のヒットを飾った『千本桜』が生まれるのはしばらく後ですね。
2009年といえば、ハチやwowakaが頭角を現した年です。登場以降に販売されたコンピに漏れなくきっちり収録されております。一方、ほぼ同時期に才能を見せていたDECO*27の曲をこの年はあまり見かけません。なんだか意外です。 『弱虫モンブラン』以前から異常な投稿スピードで強い曲をあげることで注目されていたんですけどね。
そう、2009年のボカロシーンはボカロックの流行の兆しを見せていました。CDだと流行から少し遅れて(それでも反映されるまで早いのですが)販売されるので、この年表では丁度その過渡期を感じさせてくれます。
2007ー2008年の初音ミクを彩るキャラソン・アニソンの文脈にあるOSTER projet、ラマーズP、azuma、黒うさP。
doriko、ジミーサムP、bakerといった静かなバンドサウンド(音楽ジャンル的表現を知らない)から、supercell、デッドボールPや164の激しめロックサウンドも出始め。
音楽的にコアな方向へ誘うlivetunesやYMOといった感じで大きく分類できるでしょうか。
そういえば 恥ずかしい歌詞三大P という尊称もありました。
ryo:あまりにも(良い意味で)青くさい
OSTER project:あまりにも可愛らしい
デッドボールP:あまりにも性欲ベース
この年代を語る上で面白い切り口と思います。
さて、VOCALOIDを語る上で無視できないのが、ボカロ曲の投稿プラットフォームであったニコニコ動画内での流行です。他にも、日本のメジャー音楽界ではどんな曲が流行っていたかも気になりますよね。
これもまとめてみました。
ムリヤリ詰め込んだので詳細や実情は各自の思うがままに調べてください。
当時のリアル中高生だった時の私の記憶を元に記述させてもらうと、この時期のニコニコはまだアングラで、アニメMADやコミック的な歌ってみたなどが人気を博してましたね。2ch(今の5ch)御用達の動画サイトといった立ち位置は保っていたと思います。まだ互いに喧嘩しあってはいなかった。ゲーム実況やアイドル的な歌ってみたの大流行でオタクの中で陰と陽を分けたのはまだ先。
「涼宮ハルヒの憂鬱」で爆発したアニメ人気はネット民のメインストリームであり、特にハルヒ・らきすた・ひぐらしの勢いはグンを抜いてました。これらを知らずんばオタクにあらず。ネットに人権あらず。とはいえアニメMADは著作権的にはかなぁりグレーなんですよね。
そういった背景もあるのか、東方・アイマス・ボカロがニコニコの御三家と呼ばれていました。二次創作が盛んな分野です。アイマスもグレーだと思うんですが、まァそれは置いといて。この御三家の人気は、公式で2009年10月29日に「アイマス・東方・ボカロ」という名称のカテゴリグループが作られるほどでした。(現在はそれぞれバラバラになっています。)
先の年表に入れなかったのですが、2009/5/20にリリースされた『EXIT TUNES PRESENTS STARDOM 』が当時のニコニコの香りを感じさせてくれます。
1. 巫女みこナース・愛のテーマ / Chu☆
2. エアーマンが倒せない / Team.ねこかん[猫]
3. みwなwぎwっwてwきwたwww(篠笛禁断症状L5) / しましまP
4. 白の季節 / ゆうゆ
5. クリアまでは眠らない! / Team.ねこかん[猫]
6. トエト / トラボルタ
7. ぎりぎり☆ばれんたいん / ビートまりお(COOL&CREATE
8. Soar / minato(流星P)
9. ストロベリーラブジェネレイター(livetune Remix)/ アルバトロシクス(from イオシス)
10. trick and treat / OSTER project
11. Playback, Feedback / ジミーサムP
12. 閃光 / ヒゲドライバー
13. うさみみショートケーキ / 2-dimension feat.たまタン(C.V.斎藤桃子)
14. Ride on sky / KURIKINTON FOX
15. 積乱雲 / TakeponG feat. Φ串Φ
16. ようせい / チーターガールP(KTG)
17. 無修正ディナァショー(Endless Midnight Remix) / Dear Chocolat(from イオシス)
18. ウッーウッーウマウマ(゜∀゜) (Speedycake Remix) / キャラメル
「歌ってみた」も「ボカロ」もごちゃごちゃ。面白さが正義。楽しさ優先。でも本気を出すとメジャーシーンにも負けない良い曲を生み出せるんだぜ、的な。
というわけで、この頃のボカロはニコニコの数多ある動画のなかの1ジャンルという立ち位置でした。よって、この頃のボカロ曲にはネット文脈・アニメ文脈が色濃く反映されています。
日本のメジャー音楽界の上位ランキングと比較してみると、文脈の違いをより実感できます。ちっとも親和性がないのです。メジャー界、ほぼ嵐。翌年からは嵐とAKBで埋め尽くされます。サブスクなど概念すらなかった時代ですが、すでにCDは売れなくなってきたと憂いられていました。音楽の人気を売上枚数で測るオリコンヒットチャートは崩壊寸前でした。
世の流行は華々しいアイドルソング。俺たちオタクはそんな大衆に流されず「本質」を聴くんだお。そういった思いがありました。いや、本当かわからないけれど、私はそう思っていました。
当時の日本音楽界を相手にすると、アニソンもロックもカウンターな音楽といえるでしょう。オタク特有の反骨精神・逆貼り意識が当時のボカロ曲のヒットを象徴していた、と私は捉えています。どうでしょう。
これは是非ボカロのヒット曲を年表にして検証してみたくなりますね。
・・・誰かお願いします。
ここで参考記事を紹介。
2013年にまとめられた2009年ボカロヒット曲集。この編者の方は現在ボカロリスナー引退していそうですね。。
現在進行系のボカロ振り返りnote記事。期待です。
私の歴史認識は間違ってないんだなと確信させてくれる濃密な記事。そうそう、そうだったんよなぁ!
つい最近投稿されたばかりのファミ通の振り返り特集。荒削りな内容ながら、ミクさんが歌って踊るのを眺めながら音ゲーができるのは垂涎ものでした。無印のDIVAではハルヒ・らきすたで知られる神前暁×畑亜貴コンビに新曲を書き下ろしてもらっているのが印象的です。・・・「素人の音楽」だけでは不安があったんですかね。蓋を開けてみると、書き下ろし曲はどれもぶっちゃけ期待したほどでh…
ともあれ、当時のボカロ人気曲はすでに色々な方が振り返って紹介して考察してくださっているので、私はニコニコ動画の文脈でボカロ曲をいくつかピックアップしてみます。
戦犯ラマーズP。2008年末から2009年、ずっと流行っていました。
新しいVOCALOIDが出ると、ミクのネギ、リンレンのロードローラー(なぜ?)のように、持ち物戦争が起きるのが恒例でした。巡音ルカの場合も桜餅、アポロチョコ、マグロなど色々加熱していたのですが、流行曲とあいまってこんなクリーチャーが生まれてしまいましたね…。好き。
これも実はラマーズPの犯行。元動画は2012年に削除されたようです。
こいつ何でも流行らせるな。2009/02/19投稿された…なにこれ?
ラマーズPはボカロPとMAD製作者の架け橋みたいな存在でしたね。
今でもVOICEROIDが出るたびに曲?を流行らせるGYARIことココアシガレットPは当時から活躍してました。「ひぐらしのなく頃に」の名曲「YOU」のセッション動画。アニメの文脈です。
ネット文脈。人が歌うとアレなものもボカロだと許せる空気があります。
上記曲のPV動画。基本的にボカロPなる人種は人脈に乏しいので、ボカロ曲はまず一枚絵を借りて投稿し、別の誰かがPVを作る文化でした。
ぽっぴっぽーもPVアニメ化。今見ても個人の出せるクオリティかなと思う。
現在65万再生。ニコニコ御三家であるVOCALOID内での人気のバロメーターとなる「ボカラン」が注目されるようになっていたと解釈できるでしょうか。本当にボカラン一位とったのには笑いを禁じえない。
ボカランといえば、たびたび総集編があるので捗ります。
2009/09/30投稿 全5部構成。1位の楽曲は…もちろんわかりますよね?
ボカロ曲が多種多様なニコニコユーザーに広まる象徴的な動画。最後まで見て、感動するから。
これなんで流行ったんだ。鼻そうめんPの本職を活かしたリミックス(?)
鼻そうめんPは2008年からボカロ曲を投稿してるんですが、
プロイラストレーターとしては「かんざきひろ」、プロアニメーターとしては「織田広之」、プロミュージシャンとしては「Hiroyuki ODA」、ニコニコ動画では「鼻そうめんP(HSP)」の4つの名義を使い分けて活動している非常に多才なアーティストである。
ということで、なんかよくわかんないすごい人です。
2008年にラノベ発刊、2010年にアニメ化されたこの作品のイラストを担っています。アニメはOP/をkzが手掛けており、EDはニコニコで公募したためボカロP率が高く、俺妹はボカロ文脈の作品ですね(断言)
2009年のアニメを語る上で、化物語EDの「君の知らない物語」を知らない人はいないと思いますが、このsupercellを皮切りに、ボカロ界隈からアニメ業界に進んだ人が多くいます。これによって、ボカロ曲とアニソンの境界線はますますファジーになっていくんですが、、、いつか別の機会に語りたいですね。とはいえ勉強不足。○○年アニソンランキンみたいな資料がほしい。
無限に語りたくなってしまいますが、一介の老兵ボカロオタクの思い出話はここまでにしておきます。ボカロを語る上で、ボカロ以外の流行もおさえていないと触れられない切り口があるってことで。
今はボカロ文脈の音楽が当たり前のように音楽界のメインストリームを牽引している時代になってます。ボカロが普通に音楽の選択肢の一つとなっている。喜ばしいことですが、逆に独立しちゃったなといった感じもあります。他との関わりがない。良い意味でオモチャにされることがほとんどない。ナユタン星人の数曲がMADとして使われてるくらいではないでしょうか。そもそものニコニコ動画が時代の流れでパワーを落としているのもあるのですが。いやそれは時代について行けなくなった私の思い込みか。
ともあれ。次は2010年をまとめるべく、iPodを掘り返しているところです。またの機会に。
びすとりあすて
約4800字。執筆時間:5時間くらい。
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