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おいしいに囲まれて

今、誰かに「今日はどんな1日でしたか?」と聞かれたら
私はきっと「おいしいで溢れた1日でした」と答えるだろう。

今朝、リスちゃんから一緒に美術館へ行かないかというメッセージが届いた。
美術館。ほう、美術館。

絵にはあまり興味がないが、今回は違う。以前から私が気になっていたものだった。

すぐに一緒に行こうという内容の返信をした。朝からテンションはMAXである。普段は面倒で必要なとき以外はしないお化粧も喜んで行う。今日は初めてアイシャドウをちょっとだけキラッとさせてみた。まあメガネをかけちゃうから見えないに等しいんだけども。

🇫🇷🥖🍳🐷🍮🫐🌱

喜びを得るためには先に苦しみを味わわなければいけない。朝9時台に学校へ行き、試験を受けた。結果が『楽しみ』だ。

試験が終わったのはお昼近くだった。美術館も良いが、まずはお腹を満たさなければならない。腹が減っては戦が出来ぬ。美術館へも行けぬ。絵もじっくり楽しめぬ。実際はそこまでお腹が空いていたわけではないけど、それにしてもお腹を満たすことは大切だ。

リスちゃんがとってもいいお店を見つけてくれた。ガレットのお店だ。調べてみるとガレットは”galette”という綴りだった。teをトと読むのだから、おそらくフランス生まれの料理なのだろう。

私:ガレットコンプレ(手前)
リスちゃん:ベーコンときのこのガレット(奥)

角はカリッと、内側はもちっと。目玉焼きとハムってどうしてこんなに相性が良いんだろう。食べながら本編は見たことがないジブリの映画を思い出した。名前は忘れてしまった。

食べていると、だんだん唇の周りがヒリヒリしてくる。リスちゃんが「塩胡椒が効いてるね」と言っていた理由が分かった。

なんてこったパンナコッタ

本日のデザートはパンナコッタだった。なんてこったパンナコッタしか知らなかった私は、そこで初めて『パンナコッタはデザート』を知った。

パンナ・コッタまたはパンナコッタは、イタリア発祥の洋菓子の一種である。イタリア語で「煮詰めたクリーム」という意味である。ゼラチンでとろみをつけ、型に入れて作るつるりとした口当たりの甘いクリームデザートである。クリームはコーヒー、バニラ、または他の調味料で香り付けされていることもある。

Wikipediaより

初めて食べたパンナコッタはプリンみたいで、でもプリンじゃなかった。新種のプリンという感じだった。(結局どっちなんだろう)

それから今日のパンナコッタで、私はミントを克服した。ミントはスースーな歯磨き粉やガムに使われていることが多い。そのため私は『ミント=スースー』というイメージを持っていた。私はスースーが苦手なのだ。

「そもそもミントって食べられるものなの?」と聞いたら、リスちゃんが美味しく食べられる方法を教えてくれた。周りの甘いものと一緒に食べるのだという。

早速やってみた。パンナコッタ、生クリーム、ブルーベリーをちょっとだけ。そこにミントを添えて食べてみる。

するとそのミントの、なんと爽やかなことだろう。スースーは感じなかった。ミントの涼しい香りが口の中にふわあっと広がった。すごい。ミントすごい。甘いだけじゃない、ちょっと大人な味にしてくれる。

大満足でお店を出た。すごい。ミントすごい。(2回目)

🍏🍎🍐🍊🍋🍉🍇🍓🍒🍑🥦🌽🧄🥔🌿🪵🧂🪴🍄🌸🌻🫖☕️🍫🍺🍷🥃📚

さて、お目当ての美術館だ。今回訪れるのは、静岡市美術館で行われている『おいしいボタニカル・アート』だ。

岸辺露伴はルーヴル美術館へ行ったが、私たちは静岡市美術館だ。美術館という点では変わらないので、つまり私たちは岸辺露伴(?)

18~19世紀に世界をリードする大国として発展した英国では、他国との交易や国内での技術革新にともない、世界中の新しい植物が導入、栽培されました。これらの植物は英国の食文化の多様性を大きく広げました。
本展では、20万点を超える世界最大規模のボタニカル・アート(植物画)コレクションで知られる英国キュー王立植物園の協力のもと、18~19世紀に描かれた野菜や果物、ハーブやスパイス、お茶などの植物画をはじめ、食卓を飾るティー・セットや当時のレシピ帖ほか資料類など約200点を紹介し、新たな植物の発見が英国の食文化にもたらした影響と発展の歴史をひも解きます。観察に基づいた精密な描写と美しさが融合する「おいしい」ボタニカル・アートの世界を、英国の食を彩った植物にまつわる物語とともにお楽しみください。

静岡市美術館公式サイトより

とのことだ。フルーツに始まり野菜、ハーブ、スパイス、お茶、珈琲、カカオ、お酒、レシピ本など、イギリスをメインとしたの数々の『おいしい』が詰まった展示会だ。

私たちは実にたぷーりたぷりと3時間もの間、説明文を読み、絵を眺め、小声でわちゃわちゃと語り合った。帰宅してこの記事を書いている今、脚(主にふくらはぎ)が痛い。金縛りに遭わないと良いのだけれど。

撮影可能な作品もあった。気に入ったものがいくつかあるので、ここから1つずつ感想と共に載せていこうと思う。

リンゴ「デヴォンシャー・カレンデン」

この絵を描いたウィリアム・フッカーは、英国キュー王立植物園のお抱え画家だったらしい。それ以外はよく覚えていないが、相当優れた画家だったんだなあとは説明文を読みながら思っていた。

リンゴの絵が、壁にずらりと並んでいる。最初は青いのだが、だんだんそれが黄色くなったりなんだったりして、最終的に真っ赤なよく熟れたリンゴになる。その中でも私が1番気に入ったのがこのリンゴだ。

本物のリンゴにはない、絵だからこそ表現できるこのツヤツヤ感。どことなく気品を感じる。形は楕円形(?)で、真ん中辺りに入っているシワのせいか大きめのトマトにも見える。

デヴォンシャー・カレンデン
デヴォンシャー(デヴォン)でかなり広範囲に栽培されていた。果実は、直径 6から9センチメートル程度、縦は横の3分の2ほどで、底は平らである。果皮は日が当たる面は美しい赤で、強い光沢があり、ところどころに緑色の斑点が散らばる。日が当たらない側は緑色である。果肉は白くてわずかに緑色を帯びている。新鮮であればとても美味だが、収穫後数日で風味が損なわれる。7月後半から8月末にかけて、樹上で完熟する。旬であれば最も優れた品種のひとつで、美しい外見と素晴らしい味は料理用ではなくデザート向きとされた。

説明文より

また今回のウィリアム・フッカーの絵は、穴を空けて絵を描くという方法のものが多い。穴の多さによって濃淡を調整することができる。近くでよく見てみると、本当に無数の穴が空いていて驚いた。描き方の名前は忘れてしまった。

モモ「ラ・ノブレス」

桃の絵は3つあったが、真ん中に飾ってあったこの絵が私は気に入った。

私は桃が好きだ。みずみずしい桃が好きだ。この絵は桃の絵みずみずしさをよく描けていると思う。見るからに水分がパンパンで、皮を剥いてそのまま丸かじりしたくなる。

それから、右下に描かれているお花が桜みたいで綺麗だなあと思った。

洋ナシ「サン・ジェルマン」

私はホラー作家の梨さんが好きだ。この絵を見て私は梨さんを思い出した。梨さんの世界は、奇妙なくらいリアルなのだ。

この絵もそうだなと思った。葉や枝は絵だと分かるのに、梨本体だけはやけに本物に近い。他にも「なんだか奇妙なくらいリアルだな」と感じる作品はあったが、これは特にそう感じた。

ブドウ「ブラック・ブリンス」

思わず「豊満だ」と呟いてしまった。通常、ブドウに豊満という言葉は使わないかもしれない。しかしこのぶどうの絵を見てほしい。どう見てもパンパンのパンに身が詰まっている。『たわわ』とも言うだろうが、私はこの場では『豊満』を使いたい。

別の方の作品で、桃とブドウが一緒に描かれている絵があった。桃は禁断の果実、ブドウはキリストのなんちゃら(忘れた)という意味だと説明文には書いてあった。

その絵は小さいながらも立派な額縁に入れられていた。ベタ塗りされているだけだと思ったのだが、角度を変えて下から見てみると、筆の先っぽの跡が残っていた。

人がどのような過程で絵を描いたかは、今の時代、イラストアプリのアーカイブ(?)で見ることができる。でも当時はそんなものはなかったからどのように絵を描いたかは本人しか知らない。

現在の私たちは、その絵を間近で見、味わい、時にはどのような想いでその絵を描いたのかを想像することもある。私は描いた人の気持ちまでは想像できなかったが、今回筆の先っぽの跡を見ることができただけでも良かったと思う。

ところでリスちゃん、あの作品の名前って覚えてないかな?私あの絵すごく好きになったんだけど…。

サクランボ「エルトン」

写真では少し分かりにくいのだが、宝石のようなツヤツヤ具合だった。最初に見たリンゴとはまた違う、愛らしいツヤツヤだ。

リスちゃんはこの絵を見ながら「つまめそう」と言っていた。うんうん、3Dの映画みたいだよね。

イチゴ「ウィルモッツ・レイト・スカーレット」

かわいい。自分が今まで見たイチゴの中でも1番丸っこくて、ツヤツヤしていて、かわいい苺だ。このイチゴには『苺』がよく似合う。

奥の方に描かれている、まだ完全には塾していない思春期の苺もかわいい。思春期とはいえ白い部分が多いので、まだまだ純粋なところもあるのだろう。

ウィルモッツ・レイト・スカーレット
アイズルワースの市場向け菜園主ジョン・ウィルモットが栽培を始めた品種で、数年のうちに従来のスカーレット・イチゴにかわるイチゴと認められた。花は通常のスカーレット・イチゴよりも大ぶりで、たくさん咲く。最初に熟す果実はやや尖った円錐形で形は不規則だが、その後になる果実は徐々に角がとれて丸みを帯びた円形になる。鮮やかな緋色で美しい果実である。果肉は柔らかくて風味が良く、アイスクリームに合うとされた。

説明文より
庶民のアフタヌーンティーの風景だった気がする
複数人分のディナーの風景だった気がする

こちらは紅茶と珈琲のコーナーだった。どちらも『気がする』のは、本当に覚えていないからだ。

紅茶はまず、上流階級に広まった。当時英国の人々は、東洋の茶というものに興味津々だった。船に乗ってその国まで行ってお茶を買った。そしてそれを高い値段で売るのだ。

やがて紅茶は中流階級、そして庶民にも広まった。アフタヌーンティーもこの頃に生まれた。家に招き入れたお客様をおもてなしするため。労働者の休息として。アフタヌーンティーは人々の生活に欠かせないものとなった。

珈琲に関してはあまり覚えていない。珈琲豆をすり潰す(?)のと、珈琲を飲むのに使用されていたカップは紅茶を飲むのに使用されていたカップより小さいということしか覚えていない。

でかでかフォトスポット

出口にはフォトスポットもあった。遠くから撮影したらいい感じになったので、そのままスマホの壁紙にでもしようと思う。

🦋💖💄🍋🌱💦🌹

クタクタになった脚を休めるために、パルシェ内のタリーズコーヒーへ向かった。エスカレーターを使って5階まで行く。

と、そこには。

ぷいきゅあ!!!(突然の幼児化)

大好きで大好きで、憧れの存在だったプリキュアたちが初代から新入りまで大集合していた。

あ、欲しい。今私、これがすごく欲しい。でも待って。ねえ、ねえ。どうして、どうしてさ。

どうして私の最推しがいないの?

一瞬にして気分はガタ落ちした。ブース内を隅から隅まで探しても、キュアレモネードのグッズはこれしか見当たらなかった。

レモネードは私の初めての推しだ。1度母に「レモネードの髪の毛にして」とお願いしたら、制服モードのうららちゃんの髪型にされて微妙な気持ちになったことがある。

そんな想い出もある、キュアレモネード/春日野うらら。

帰りに大慌てで撮影した

🫖🥛

気を取り直してタリーズコーヒーへ向かう。美術館で紅茶に関する展示品を鑑賞したからであろう。チャイミルクティーが気になったので、それを注文する。リスちゃんは牛乳(らしい)を注文した。

私:チャイミルクティー(左)
親友:牛乳(らしい)(右)

小学生の頃に沢木耕太郎の深夜特急を読んで以来、ずっと飲んでみたかったチャイ。

色々なスパイスの香りがする。調べてみると、チャイにはカルダモン、シナモン、ジンジャー、ナツメグなどが入っているらしい。なるほど、それでか。

脚を休めながらリスちゃんと改めて展示会の感想を語り合い、行ったこともないCの国に密かに想いを馳せた。

本場のチャイはどんな味なのだろうか。今ここで飲んでいるチャイよりも、もっとたくさんのスパイスが入っているのかな。ああ、今ここにシフォンケーキがあったらもっと最高なのに。

🚌💨

家族や学校の団体ではなく、誰かと一緒に美術館へ行くなんて初めてだった。1人じゃたぶん行かなかったと思う。

心ゆくまで絵を眺め、感じ、誰かと語り合う。感じることまでは1人でもできるが、気持ちのシェアは相手がいないとできない。今回、それができたことが私はとても嬉しい。

鑑賞中の私は「(オレンジの絵を見ながら)柿みたい」とか「このお皿って買ったらいくらなんだろ」とか、そんなくだらないことばかり言っていた。小声とはいえ思ったことはあの場で全て発言していたので、さぞ騒がしかったことだと思う。

対してリスちゃんはアンティークや食器に関する知識が豊富で、展示の中にカレーは出てきていないのに「これってカレーを入れるやつ?」と言っていた私にも分かりやすく「これは角砂糖を入れる容器だよ」と解説してくれていた。

謎に2人でシナモンだかローズマリーだかの絵に向かって手を合わせたの、楽しかったね。今度は何に手を合わせようかね。

三日月と星が綺麗な夜だった