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業種別でとらえる新型コロナウイルス感染症のリスクと各社取組み

こんにちは、決算発表を読むのが好きなしゃちほこです。

各社が公表する決算短信には「次期見通し」「事業等のリスク」という記載があります。今回の決算では、イマ世間をにぎわせている新型コロナウイルスに関する記載が多くみられました。

決算発表はいわば成績発表です。3月決算会社であれば、前年1年間(19/4月~20/3月までの成績を公表なわけです。ただこれと同時に、向こう1年間の成績の見通し・目標を公表している会社が多く、これに関する定性的コメントもつけていることが多いです。これが次期見通しです。
次期見通しはある程度の前提において立てられるわけですが、この世の中には予想できない出来事がたくさんあります。こうした出来事により、この見通しが崩れることも十分にあり得るわけです。従って企業は、今後発生したら業績に影響を与えると考えられるリスクについて、リスク情報として記載しています。

今回はこの記載に関してを、世間的に人気な企業(業種)を厳選したうえで、現時点で決算発表している4社について見ていきました。

対象企業(業種)4社はこうやって厳選しました!

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今回、会社を選ぶにあたって、公平性を担保したうえで、かつ、視聴率の高い企業を選ぶにはどうしたらいいか、悩みました。

結果的に、東洋経済の「大企業オススメランキング」なる記事からまず上位20社を選択したうえで、各業態の最上位の会社を選択する、という方法をとることにしました。

厳選4社(業種)はコレだ!

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最終的に選んだ会社は次の4つです。

❶全日本空輸(空運)
❷JR東日本 (陸運)
❸任天堂  (ゲーム)
❹京セラ  (電子機器)

本当は9業種まで絞りこみまして、これら全部をみれたら、と思いました。
ただ、決算期の違いや現時点(2020年5月10日)で決算発表未了の会社などがあった関係で、4社となった経緯です。

早速各社の状況を見ていきたいと思います。

❶全日本空輸(空運)

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感染症拡大に伴い海外への渡航制限などの通達が政府から出されています。ANAはこのあおりを大きく受け、需要減退のリスクにさらされています。

これに対して、ANAは既に、運行便数の減便をしたり、役員・役職者の報酬減額をしたりコスト削減に取り組んでいるようです。
また、金融機関から1,000億円の借り入れを行ったり、1,500億円のコミットライン契約を新たに締結したりと、資金確保の策も講じているようです。

海外でも一部空運業者の大苦戦が報道されるなど、空運は最も厳しい業界のひとつなのだろうと想像しています。

コミットメントライン契約とは、企業の資金調達手段のひとつです。意識高い系の社会人が「コミットしてる?」とのたまわっているのを聞いたことがあるかもしれませんが、要は「ANAさんには○○億円貸すことをコミット(約束)します」というものです。
ANAとしては万が一お金が必要なときに、すぐに調達できるメリットがあります。金融機関もタダで約束はしません。だいたい約束額に対して〇%の手数料をもらえるような契約になっているはずです。

❷JR東日本(陸運)

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空運同様、こちらも厳しい印象です。
外出自粛要請により鉄道利用者は明らかに減りましたから業績に影響を与えることは想像に難しくありません。その一方で、社会的インフラとして無暗に止めるわけにもいかない。そうなりますと、本数削減のようなはっきりとした形でコスト削減もできない、という状況でしょうか。

JR東日本は、政府・自治体への協力体制について明確に言及していました。
上述した最低限の輸送・サービスの確保のほか、罹患者受入れのためのホテルの提供なども行っているようです。

ここに、常日頃インフラの役目を担っているからこそだからかはわかりませんが、社会的な責任感の高さを感じました。かっこよすぎ。

❸任天堂(ゲーム)

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任天堂は予見されるリスクとして4つの影響を記載していました。
この記載は、とても端的で面白かったので原文をそのまま引用します。

巷では「どうぶつの森」が大流行りしているようです。ご存じのひとも多いかとおもいますが、島の開発をすすめることで、外出自粛のストレスを発散効果も担っているとかいないとか。
そういう意味で、任天堂は時流を逆手にとらえこの波を乗り越えるように思います。…これを意図してやっていたら恐ろしすぎる。(尊敬)

(2)新型コロナウイルス感染症に関するリスク情報
 新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループに影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、記載した事項以外の予見しがたいリスクも存在します。
・部品調達や生産、出荷への影響
 生産や出荷に関しては徐々に回復の傾向がみられるものの、必要な部品の調達に支障をきたす状況がさらに続けば、影響を受ける可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化、深刻化した場合、製品の供給に支障をきたす可能性があります。
・消費行動への影響
 各国で外出規制や小売店の営業停止などの感染拡大防止措置により販売経路が制限されており、影響が長期化する可能性があります。また、物流が停止した場合はEコマース(電子商取引)を通じたハードウェアやパッケージ版ソフトウェアの販売を行うことができなくなります。加えて、安定したネットワークシステムを維持できなくなった場合、ネットワークを通じたサービスの提供が停止する可能性があります。
・研究開発への影響
 新型コロナウイルス感染症による影響が長期化、深刻化した場合、在宅勤務では社内と開発環境が異なることから開発スケジュールへの影響が懸念され、特に海外にある開発子会社や開発関連会社への影響は国内よりもさらに不透明な状況になることが予想されます。それらの結果、当社製品の発売およびサービスの開始が予定どおり行えない可能性があります。また、ソフトメーカー様においても同様であり、当社プラットフォームへのゲームコンテンツの供給が予定どおり行われない可能性があります。
・為替変動による影響
 新型コロナウイルス感染症による影響で各国の情勢が変化した場合、為替変動が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

❹京セラ(電子機器)

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京セラの記載は、リスクはあれど的確に対処します。といった程度。最小限に留められている印象でした。

稲盛和夫大先生の哲学が脈々と受け継がれているからなのか、こうした事態もある意味想定内なのか、こんなことじゃ動じない盤石な体制なのか、そんな風に思わされます。

やることはきっと同じなのでしょう。事業機会の獲得、生産性向上、原価低減に努めます。と淡々と記載されていました。

京セラを電子機器業界全般ととらえるのはミスリードとなりかねませんが、少なくとも京セラには深く根をはった大樹のような印象をうけました。
(あれ、大樹生命…?)

ガンバレニッポン!

新型コロナウイルス感染症は、日本企業に試練を与えているのだなと、改めて感じました。

今回とりあげた企業はどれも大きいところばかりです。そんな大企業がリスクとしてそろって明記しているのですから。

日本中に拡がる中小企業の皆さまはもっと四苦八苦しているに違いない。そう思いました。

きっと、今が踏ん張りどき、がんばりましょう。

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僕にはなんの力もない、すごくもどかしいね。

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