見出し画像

Substackのクリエイターがクリエイターを呼ぶグロースループ

こんにちは、アメリカで統計を勉強しており、パッションエコノミーファンのけんたです。

毎週、海外パッションエコノミー関連レポートをLINEでお届けします。以下から友達追加お願いします。Twitterもやってます
LINE: https://lin.ee/xm1HKAC

-----------------------------------------------------------------------------

Substackは誰でも簡単にサブスク機能付きのニュースレターを始められるサービスです。

サービスを開始した2年前は11,000人だった課金読者の数は、現在約250,000と成長しました。そして、トップ10のライターは合計で年間7百万ドル(7億円超)の利益をあげています。

その成長を支えたのが、Substackの強力なグロースループです。プロダクトのグロースループが最適化されていると、新規のクリエイターがさらにクリエイターを呼び、成長し続けるということが起こります。

noteの深津さんも作者を増やす仕組みとしてのグロースサイクルをnote自身を例として、こちらでわかりやすく図解されています。

いかに、それぞれのステップ間の摩擦を減らすがということがとても大切になります。

画像13

そして、ReforgeのCEOで、元HubSpotのVP of GrowthであったBrian Balfourさんはこのブログで、Substackの主なグロースループについて話しています。Substackはどのようにして次々とクリエイターを獲得しているのでしょうか?

画像4

こちらがSubstackのグロースループです。

このグロースループは製作者のいるどのプラットフォームにも高い確率で当てはまります。

プロダクトによって違ってくるのは、それぞれの項目が達成されるためのHowの部分です。例えば、潜在クリエイターがそのプロダクトについて知る方法などはプロダクトによってかなり変わってくる様に感じます。ここでは、Substackのグロースループの4つのステップに注目します。

①新しいクリエイターがユーザー登録

まず、1番の新規登録ステップ。ここではそのプロダクトについて知った潜在クリエイターにいかにそのプロダクトの魅力が伝わり、簡単に登録してもらえるか、が重要になります。

Substackの場合、個人のライターに刺さる様なバリュー・プロポジションが揃っており、だれでもニュースレターを始めやすくなっています。ブログで触れられている点も含めて、下記4点がSubstackの主要な価値提供のように感じます。

1、クリエイターが直接オーディエンスとの関係を築ける

ニュースレターはアルゴリズムに左右されません。

対照的に、InstagramやYouTubeなどでクリエイターとして必要なのがアルゴリズムの理解となります。それは、InstagramやYouTubeがより拡散するようなコンテンツを作ることができるクリエイターが成長しやすくな流ということを意味します。

しかし、アルゴリズムの仕様が変わるというのはよくあることで、クリエイターが急にフォロワーの人に自分のコンテンツがリーチしにくくなったという話は度々話題になります。

画像5

この点、ニュースレターはそれぞれの読者のメールボックスに届くので、基本的にアルゴリズムに左右されません

また、誰かにメールアドレスを渡すということはフォローよりも重い行為なので、ニュースレターのメールリストはSNSのフォロワーリストよりも価値が高くなります。

2、ニュースレターを始めるのが簡単

自分でニュースレターを始めようとすると書くという行為が目標でも、それまでに越えなければならない壁がたくさんあります。

しかし、Substackではニュースレターを始めるときに気にしなければならないサイト作成、サインアップフォーム、デザインなど全て気にせずに始められます

例えば、Mailchimpなどでもニュースレターを始めることができますが、Substackがサブスク型ニュースレターのみに集中しているのに対し、Mailchimpはマーケティング全般のためのメール配信ツールなのでどうしてもノイズが多くなってしまいます。

ニュースレターやブログサービスは新しいものではありませんが、プロダクトがクリエイターを中心にとても簡単に設計されています

実際に、Substackの場合、私はなにも調べる必要がなく、すぐに最初の記事の作成に取り組むことができました。

画像8

3、デザインがきれい

Substackでは、テーマカラーやアイコンなどは変えられますが、余計なものが機能としてついていません。

画像9

これは、先程の使いやすさにも関わってきますが、技術のみで差をつけることが難しくなってきたなかで、デザインの重要性は増しているように感じます

4、サブスクニュースレターにするのが簡単

そして、収益化を開始するのも簡単になっています。

Balfourさんも低いCAC(Customer Acquisition Cost)や手数料が一律ではなく成果に比例しているということをSubstackのいい点としてあげています。

Low CAC Loop - The model enables the loop above. It reduces friction in converting to a new creator (nothing to pay upfront). But also enables free newsletters which drive the loop even more.

実際に課金ニュースレターにして購読者が出てきてから手数料の10%が発生するので、事前に投資する必要がなく、始めやすい

Aligns w/ Outcome - The best pricing models align as closely as possible with the outcome of the user. This is important for a variety of reasons, one of which they are able to spend more supporting a creator as that creator grows.

そして、結果とSubstackに払う手数料が比例しているので、収入が少なければ手数料も少なくなります。

One thing that Substack probably has to think about is combining this initial success with some additional form of a growth loop that provides defensibility and justifies the 10% as you scale. This typically comes from some type of network effect. To be a platform rather than just a tool, Substack needs to answer the following question: as another new creator joins the Substack, how does it become better for all the other creators as well?

しかし、この10%は収益が多くなればなるほど膨らみ、クリエイター側からするとある時点から得ている価値よりも手数料が高く感じる様になります。

One value prop they could enable is discovery. Creators would then choose Substack not only for the reasons above but also because they also drive more subscribers and revenue than building your own platform. They already do this a little with their leaderboard.

一つ、Substackがプラットフォームとしての価値を高めるためにできるかもしれないことがディスカバリーの提供です。

現在、それぞれのニュースレターはSubstack上でリンクされているわけではありません。なので、読者はSubstack上である記事を読んでいるときに別のニュースレターを見つけるということはおこりません。

しかし、Substackがマーケットプレイスの様になり、Substackにいるというだけで読者が流入する様であればSubstackのプラットフォームとしての価値が高まります

最近、Substackのトップページでもカテゴリーや課金が必要かなどの項目で人気のニュースレターがみられるようになりました。

画像11

Substackのマーケットプレイス化の最初の一歩かもしれません。

このトップページは読者が新たなニュースレターを見つけやすくするだけでなく新規のライターが自分のお手本となる様なニュースレターを見つけやすくなるということにも繋がります。イメージがつきやすくなるとWrote on Substackのボタンを押してクリエイターになる人が増えやすくなります。

A different way to enable this would be through enabling features like bundling. If I'm on Substack, I can easily bundle my newsletter with other Substack creators to drive more subscribers and revenue for all of us.

他のプラットフォームとしての価値をあげる方法としてバンドル機能が触れられています。

これはすでにEverythingというニュースレターが行っていることで、Everythingというニュースレターのもとにビジネス関連のニュースレターがバンドル(束ねられている)されています。

画像12

トピックが似ているので、ひとつのニュースレターの読者は他のニュースレターの読者になりやすく、統合することで総合の購読者数が増えやすくなります。

また、総合のコンテンツの量が増えるので、読者もEverythingに購読すればたくさんのコンテンツを楽しむことができます。

②クリエイターがコンテンツを作る

こちらはグロースループの第2ステップの、クリエイターがコンテンツを製作する段階です。

Substackでは、シンプルで使いやすいエディターでコンテンツ製作のみに集中できるようにデザインされています。

画像14

編集や購読ボタンの設置など、記事のスタイリングが簡単にできるようになっています。

とてもシンプルなものになっており、複雑な部分がないので、それがすぐに書き始めてもらうことにつながっています。

同時に、このコンテンツ製作の部分はこれからもシンプルさと便利さのバランスを取りながら改善されていく部分のように感じます。

③クリエイターがコンテンツを拡散する

次はグロースループの第3ステップのコンテンツが拡散される段階です。

画像15

この点は、上記の記事シェア画面でもわかるようにTwitterなどでシェアされることが前提のようになっています。

Hacker NewsなどもSubstackの読者に多いテック、ビシネス業界という特性と一致しており、2クリックでシェアできる様になっています。

主なシェアの起こり方として、クリエイターが自身のフォロワーにシェアするか、いい記事を書いたクリエイターの読者が、その記事をSNSでシェアするというパターンが王道のように感じます。

④潜在クリエイターがサービスについて知る

この最後のステップでのHowはとてもSubstackのターゲットユーザーの特性とマッチしています。

Good creators consume other good creators
いいクリエイターは他のいいクリエイターのコンテンツを消費する

Substackのクリエイターは同時にユーザーである可能性が高いということですね。

いいコンテンツがSubstack上で生まれればそれがSNSなどで拡散され、自動で他のライターの目に留まります。

実際に、去年から今年にかけて「これいい記事だな」と思ったときのSubstack率がとても高くなった気がします。体感、いい記事の1/3 - 1/4は気づけばSubstack。

そのようないい記事を書く業界トップのライターが全てSubstack上で書いていると当然ツールも良くみえてきます。

自分のお気に入りのライターみんなが使っているといいツールに見えてくるので、プロダクトに対する信頼の築き方としてとても強力です。

Substack's Presence Is Just Enough
Substackの存在感がちょうどいい

それぞれの個性が色やアイコンで表現されつつもUIのフォーマットが一緒なのでSubstackのデザインだとすぐにわかるということがあります。

画像16

画像17

画像18

メールの下部にもひっそりブランディングがされておりSubstackのニュースレターだということが密かにわかります。

以上が、クリエイターがクリエイターを呼ぶSubstackのグロースループとなります。

Substackの課題

この強力なグロースループを軸にクリエイター数を伸ばしてきたSubstackですが、そのクリエイターのリテンションはやはりまだ改善できる部分があるようです。

Jakob Greenfeldさんは非公式でSubstackの20,000以上のニュースレターを集めたデータベースを作りました。そして、そのときの気づきをデータとしてツイートしています。

- 約4割のニュースレターが過去90日一切投稿していないということ。この数は、今年作られたニュースレターを除くと6割近くがアクティブでないということになります。

- そして、全体の65%のニュースレターは10投稿以下しかしていないということです。

やはり、新規クリエイターが流入してた後、コンテンツを作り続けてもらうということは別の課題の様です。

Substackもライターのための初のオンラインカンファレンス、Substack On!を開催したり、新鋭のライターがすでに人気のライターからメンタリングを受けられるブリッジプログラムなどを通して、既存のライターとコミュニケーションを図ろうとしています。

画像12

さらに将来的には法的サポート、健康保険、編集者の提供、デザインのサポート、コーワキングスペースなどのサポートも提供予定のようです。

こうした取り組みにより、よりコンテンツ製作に集中できる環境を整えることで、よりSubstackでコンテンツ製作をする価値をあげようとしています。

このように、Substackはとてもクリエイターを中心にプロダクトエコーシステムが設計されています。これからも、日々クリエイターがニュースレターを通して収入源を得られるようなプラットフォームになっていくでしょう。

-----------------------------------------------------------------------------

もしこちらの記事を楽しんでいただけたら、スキやシェアなどしていただけるとありがたいです。

毎週、海外パッションエコノミー関連レポートをLINEでお届けします。以下から友達追加お願いします。Twitterもやってます
LINE: https://lin.ee/xm1HKAC


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?