20221013

 雨が降る一日だった。新しい小説を書こうと、資料として手に取った漢a.k.a.GAMIの『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社)がめっぽう面白かった。彼の音楽はリアルタイムでは聴いていなかったものの、ブルーハーブや般若などを聴いていくうちにハマっていった。もともとヒップホップはあのギャングスタの雰囲気がとても苦手だった。Dragon Ashやリップスライムなどのメジャーで活躍するポップなものは好きで聴いていたが、あのいかにもマッチョリズム全開な雰囲気にはどうしても拒否反応があった。どちらかというと、リップはあの雰囲気を和らげるというか、もう少しゆるい感じが好きだった。あれはアンダーグラウンドなもので、スチャダラパーやTOKYO No.1 SOUL SETなど上の世代でもゆるふわな存在はいたのだが、リアルタイムでは渋谷の強面なお兄さんたちのカルチャーが全盛だったこともあって、ヒップホップというと彼らが代表している空気があった。漢ももろにその世代より少し下で、彼の言うストリート・ビジネスで新宿の街をのし上がったラッパーだ。そういう彼の歴史が赤裸々に――それこそ、チョコレートやらブリブリなエピソードを包み隠さず――書き記した『ヒップホップ・ドリーム』は、わたしが雑誌や映画で想像していた東京の街を確かめる、答え合わせをしているような気分で楽しく読めた。漢が徹底して言葉にこだわり、リアルを追求するその姿勢には感銘を受けた。

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