kngmts

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/doujin/detail/blur-matsuo/

書評:『しずけさ』町屋良平(文學界5月号掲載作品)

僕には鬱病になった親戚がいる。朝から晩までテレビの前で横になり、テレビを観ているのか観ていないのかも分からないほどに何の反応もない。もともと無口な人ではあったが、輪をかけて口を利かなくなり、動かないが食べはするのでぶくぶくと太り、ガタイの良かった身体と端正な顔立ちは見る影を潜めた。原因ははっきりとしていた。自営業を営む親戚の実家の経営が傾き、実家を継ぐためにその手伝いをしていた親戚の人生の展望が失

もっとみる

ハリーとゆみ

「こんにちは~」
 「コンニチハ ハジメマシテ ワタシハ ハリー トイイマス」
 「初めましてじゃないよ。昨日も会ったよ」
 「オッシャッテイル イミガ ワカリマセン モウイチド オッシャッテ クダサイ」
ゆみ! 帰るよ。また、こんなポンコツと遊んでるのか。つまらないだろう?
 「ポンコツじゃないよ。ハリーだよ!」
はいはい。いいから。お母さんが晩ごはん作って待ってるから、早く帰らないと。
 「ワ

もっとみる

Autocracy Idea



 人は死ぬと何処へ向かうのか? 解けることのない永遠の謎です。そんなこと死んでみないことには分かりっこないのだから。でも、果たして本当に? もし死んでも蘇ることが出来るとしたら? いや、永遠に死ぬことが無くなったとしたら。“死”という概念自体が無くなってしまったら、この問いは意味を持たない。そもそも誰もそんなことを考えないでしょう。しかし、今度は生きるということと、ただ存在するということの相

もっとみる

強制収容所で精神科医が見つめた人間の強さと脆さ~被害者意識に潜む罠~

僕はエセ科学満載のがん治療やら、2000年代に流行ったLOHASの様なライフスタイルは大嫌いなのだが、スピリチュアルなことは結構信じるし、わりかし運命論者めいたところがある。時々、同じタイミングで別々の知り合いから同じキーワードが飛び出すと「これは神の啓示か?」と大袈裟に捉えることが振り返ってみると……ままある。

 今回、そんな僕に“運命の出会い”として訪れたのが、ヴィクトール・E・フランクルの

もっとみる

『オスの三毛猫』

あなたがわからなくなったわ

と君が言った

わからないって何を?

と僕が返す

すべて

そう寂しそうに返した

君の横顔が僕が最後に見た景色

君が去ってから

僕の眺める景色から色彩が消えた

海辺を歩くあの猫は三毛だろうか

立派なものをぶら下げてはいるが

遠くに見えるあの灯台に

大漁旗を掲げた海の男たちを照らす

煌々とした光は灯っているのか

僕が向かうカンバスの上

描き続けた

もっとみる

キズナアイ問題から考える先人の言葉と物語

10月16日は英国を代表する文人、オスカー・ワイルドの生誕日です。彼は『サロメ』など数多くの作品を残していますが、それ以上にその生き様や名言が後世に与えた影響は大きいでしょう。彼の言葉に以下の様なものがあります。

 善人はこの世で多くの害をなす。

 彼らがなす最大の害は、

 人びとを善人と悪人に分けてしまうことだ。

彼の死から100年以上が経っていますが、この言葉は現在でも私たちの社会の核

もっとみる